編集長コラム

細川 忠宏

「ふたりで取り組むこと」の大切さ

2019年12月10日

体外受精や顕微授精を受けているカップルにとって、女性の年齢に関係なく、男性の年齢が40歳以降、年齢が高くなるほど治療成績が低下するという研究報告がオーストラリアのモナシュ大学からなされています。

大学病院で実施された体外受精や顕微授精24,411周期から、男性パートナーの精液検査結果が正常で、女性パートナーが子宮内膜症や卵管閉塞、PCOS、採卵数が3個未満や15個以上、さらには、凍結卵子、凍結精子を使った治療を除いた原因不明不妊症カップルの2,425周期を対象に治療成績への男性や女性の年齢の影響を調べた結果です。

女性の年齢が高くなるほど治療成績が低くなることはよく知られていますが、それとは関係なく、また、女性ほどの影響ではありませんが、男性も40歳以降、年齢が高くなるほど治療成績は低くなり、男性の年齢が1歳高くなるごとに出産に至る確率は4.1%低くなるとのことです。

実際、これまでも男性の年齢の影響についてはいくつもの研究報告がなされています。

たとえば、2,112名の女性を対象に男性パートナーの年齢と子づくりを始めてから妊娠に至るまでの期間の関係を調べたイギリスの研究があります。

それによると、男性が20代では約6か月なのが、30代から40代前半になると約10ヶ月に、40代後半になると約1年半、そして、50歳以上になると2年半以上かかるようになり、男性の年齢が高くなるほどパートナーの女性が妊娠するまでに長くかかることがわかります。

さらに、男性の年齢はパートナーの流産率も上昇させることが知られています。5,121名の女性を対象に男性パートナーと流産率の関係を調べたアメリカの研究があります。

それによると、年齢が20歳の男性のパートナーの、女性の流産率を1とした場合、35歳で1.43、40歳になると1.58、45歳で1.74、そして、50歳では1.90倍と、男性の年齢が高くなるほど女性パートナーは流産しやすくなると報告しています。

このように、女性だけでなく、父親になる男性の年齢も、また、妊娠率や出産率、流産率にマイナスの影響を及ぼすのです。

一方、当の男性はと言えば、少々、年をとっても、精液検査で問題がなければ大丈夫とされているように思えます。

ところが、精液検査の結果にかかわらず、男性の年齢が高くなればなるほど、精子のDNAの損傷率が高くなることがわかっています。

つまり、男性も40歳を超えると、精液検査の結果に関係なく、精子の質が低下し、パートナーは妊娠しづらくなるのです。

そのため、年齢が高いカップルでは、卵子の質だけでなく、精子の質にも目を向けるべきなのです。

そして、卵子に比べて、質の改善のために出来ることがいくつかあることも知っておくべきことです。

たとえば、禁欲期間。頻繁に射精していれば、精液中に新鮮な(質の高い)精子の割合が増えるからです。最低でも数日に1回、出来れば隔日か、毎日が理想です。

また、座りっぱなしを避けること。長時間のデスクワークは精液検査結果は悪くしませんが、精子DNA断片化率を高く(悪く)するという研究報告がなされてます。

そして、食事やサプリメントで十分なビタミンやミネラルを摂取すること。栄養素の摂取量が多い男性と少ない男性の精子DNAの損傷率を比べたところ、44歳未満の男性では差は見られなかったのに、44歳以上の男性では、それらの栄養素の摂取量が少ない男性のほうが多い男性に比べて精子DNA損傷率が高かったとアメリカから報告されています。

つまり、年齢が高くなっても新鮮な野菜や果物、サプリメント等で抗酸化物質をしっかりと摂取していると、精子DNA損傷率の上昇は避けられるということです。

高齢カップルでは「ふたりで取り組むこと」がより重要なのです。