編集長コラム

細川 忠宏

一日単位ではなく、一週間単位で

2017年12月06日

この季節になると、サイト内の「お酒と治療成績の関係」に関するページへのアクセスが多くなります。

お酒はやめるべきか、どれくらいまでだったらよいのか等、そもそも、普段からお酒を飲まない人、飲めない人にとっては全く関係ありませんが、お酒を飲む人、好きな人にとっては気になることでしょう。

今年、2006年1月から2010年9月に、デンマークで実施された12,981組のカップルの体外受精や顕微授精の29,834周期を対象に、アルコール摂取量と出産率との関係を調べた研究結果が発表されました。

まずは、治療開始前に飲酒量を調査し、以下の4つグループにわけました。

1)お酒を飲まない
2)少量飲む:週に1-2単位
3)中程度飲む:週に3-7単位(女性)、3-14単位(男性)
4)ヘビードリンカー:週に7単位以上(女性)、14単位以上(男性)

そして、6,697人が出産にいたったのですが、お酒を飲まない女性の出産率は22.4%、週に7単位以上のお酒を飲む女性では20.4%、男性パートナーがお酒を飲まない女性の出産率は22.6%、男性パートナーが週に14単位以上のお酒を飲むヘビードリンカーの女性では20.2%でした。

要するにお酒を飲む量と治療成績は関連しなかったというのです。

大前提として、デンマーク人を対象にした研究なので、日本人にも同じことが言えるとは限りませんし、お酒の影響については個人差が大きいので、お酒に弱い人と強い人をわけてみると関連が出てくるのかもしれません。

そのため一概には言えませんが、少なくとも妊娠の可能性がある時期になると禁酒すべきですが、それまではそれほど神経質になる必要はないようです。

今回、注目したいのは、「お酒の治療成績への影響」についてもさることながら、「飲酒量の調査方法」です。

飲酒量は、一日の量ではなく、一週間の量を調べているということです。

そのことは、お酒だけに限らないようで、その他の生活習慣や食生活要因と治療成績の関連を調べている研究をみても、たいていは、一日ではなく、一週間、場合によっては一ヶ月単位です。

このことは、生活習慣や食生活の影響は、一日単位ではなく、一週間単位で考えればいいというか、考えるべきであるということを教えてくれています。

つまり、飲み過ぎや食べ過ぎは一週間で帳尻を合わせればよく、その日、一日で飲み過ぎたとか、食べ過ぎたとか、一喜一憂するのはナンセンスなわけです。

ある程度の適当さというか、ざっくりでよいのですね。

人間のカラダはそのようにできているようです。

生活習慣や食生活を見直し、改善する場合に大切なことは計画を立てることではなく、実行し、継続することですが、一番難しいのは「継続」ではないでしょうか。

継続が難しいことの原因のひとつに「完璧主義」が邪魔をしていることがあるのかもしれません。
計画はあくまでも目安であり、大切なことは「結果」を出すことです。

10割でも、7割でも、得られる効果にはそれほどの違いがないことが科学的に検証されているということを知っておいていただきたいと思います。