編集長コラム

細川 忠宏

ふたりで「決断」するということ

2017年01月01日

新しい年がはじまりました。

昨年は、卵子の凍結保存や着床前スクリーニングが話題になったり、ips細胞を使ってマウスの卵子をつくることに成功したというニュースもありました。

いずれも、凍結技術や染色体や遺伝子の解析技術、再生医療の進歩によって可能になったもので、あらためて、色々なことが実現していく世の中に生きているのだなと思います。

ただし、生殖に関連する技術の進歩を実感させられる一方で、不妊治療の治療成績がよくなっているのかと言えば、残念ながらそんなことはありません。

日本では、年々、体外受精の治療周期数が増えていて、世界で最も体外受精が行なわれているのですが、肝心の治療成績は世界で最低レベルにあるのが現実です。

ここでは、その理由はおいておくとして、とにかく、報われない治療が数多く行なわれているというわけです。

つまり、安易に治療のレールに乗っかっているだけでは、後々、後悔することになってしまうことになりかねないと。

だからこそ、これからは、ますます、主体性が大切になってくるように思います。

そこで、私たちからの提案です。

それは、あらゆる場面で、「ふたりで決断する」ということを、まずは、儀式的にでも行ってみるということです。

不妊治療は選択の連続です。

もちろん、その時々で自分たちで選択されているとは思います。

そのことを承知のうえでの提案、です。

これから、なにかを決める時には、いったん、選択肢を外に出して、自分たちの前に並べてみて、そして、主体的、かつ、積極的に選ぶのです。

たとえば、先生から勧められて受けること決めた治療法でも、「先生が勧めてくれたから」ではなく、「自分たちがそうすることがよい」あるいは、「そうしたい」からという態度で選び直すのです。

あるいは、そうするしかなかった方法でも、「仕方なく」ではなく、「自分たちがそうすることがよい」、あるいは、「そうしたい」からという態度で選び直すのです。

単なる儀式のように思われるかもしれません。

ただし、もしも、その結果、同じ選択をすることになったとしても、今一度、自分ごととして捉え直すことに、大きな意味があると思うのです。

そうすることで、それぞれの選択肢の内容についての理解が不十分であったり、他の選択肢を見過ごしていたことに気づいたりするかもしれません。

そして、その結果、選択への納得感がきっと高まるようになるはずです。

2017年もよい年にしましょう!