編集長コラム

細川 忠宏

朝食、大豆、魚が食生活の質を決める

2016年10月03日

私たちは、今年の5月に名古屋と東京で開催された、妊娠を希望するカップルを対象としたイベントにて、食習慣や睡眠習慣、体格についてのアンケート調査を実施しました。

具体的な質問項目は、「1日3食食べる」、「朝・昼・夕食にたんぱく質源のおかず(肉、魚、卵、大豆製品)を食べる」、「朝・昼・夕食に野菜類を食べる」、「朝・昼・夕食に主食を食べる」、「牛乳またはヨーグルト、果物、甘味飲料や菓子類」を食べる週の頻度、また、「夜12時までに就寝する」週の頻度、そして、体格は体格指数(BMI)です。

イベントではアンケート回答後は、個別に、それぞれの妊娠を目指すのにふさわしいと考えられるライフスタイルの「理想と現実のギャップ」を明らかにし、管理栄養士からワンポイントアドバイスを提供させていただきました。

ここでは、284名のアンケート結果からわかったことをお伝えしたいと思います。◎印はクロス集計結果です。

尚、回答者の性別は女性182名、男性78名、未回答28名、年代は20代が46名(16.2%)、30代が183名(64.4%)、40代が48名(16.9%)、未回答が7名(2.5%)でした。

■体格について:
・70%は適正体格(BMI:18.5-25)でも、男性は肥満傾向、女性はやせ傾向。
体格については7割の方が適正とされる範囲内でした。ただし、男性の2割はBMIが25以上の肥満、女性の5割はBMI が20未満のやせ傾向でした。

■1日3食食べる頻度について:
・80%は1日に3食食べている。
1日に3食食べているかという質問に対しては男性では68%、女性では82%、全体で80%が3食食べていると回答しています。

■たんぱく源のおかずを食べる頻度について:
・70%は朝食にたんぱく質源のおかずを食べていない。
男女とも7割が朝食にたんぱく質源のおかずを食べていないと答えています。また、女性の35%は昼食でも食べていないと答えています。

◎朝食にたんぱく質源のおかずを食べていない人の特徴:
・朝食にたんぱく質源のおかずを食べていない人は全体の食生活の質が低い。
朝食にたんぱく質源のおかずを食べていない人は1日3食食べない、野菜を食べない、大豆製品を食べない、緑黄色野菜を食べない、そして、甘味飲料や菓子類を食べる頻度が高いと答えています。

■野菜類(野菜・海藻・きのこ・こんにゃく等)のおかずを食べる頻度について:
・70%は朝食に野菜類を食べていない。
男性で75%、女性で68%、全体で7割は朝食に野菜類を食べないと答えています。また、男性で50%、女性で47%はお昼にも野菜類を食べていないと答えています。

■ごはんやパン、麺類を食べる頻度について
・朝食で7割、昼食や夕食では9割が、ごはんやパン、麺類を食べている。
たんぱく質源のおかずや野菜類と違って、ごはんやパン、麺類の炭水化物系は朝、昼、夕食でほとんどの人が食べていると回答しています。

■大豆製品を食べる頻度について:
・大豆食品を食べる習慣があるのは男性で4割、女性で6割。
主な植物性たんぱく質源の大豆食品を、ほぼ毎日、週に4、5日食べると答えたのは、男性で42.3%、女性で61.5%でした。

◎大豆製品を食べることが習慣化していない人の特徴:
・大豆食品を食べることが習慣化していない人は男女とも食事全体が著しく偏っている。
大豆製品を食べる頻度が週3日以下の人は全体に3食ともたんぱく質源のおかず、野菜類を食べる頻度が低く、緑黄色野菜や魚類、乳製品、果物類を食べることが習慣化していない人が多かった。

■魚類を食べる頻度について:
・魚類を食べる習慣があるのは男女とも2割。
魚類(魚の切り身だけでなく、刺身、ツナ缶、かまぼこ、貝類を含めて)を、ほぼ毎日、週に4、5日食べると答えたには、男性で18%、女性で19.7%と、全体で2割に満たない割合でした。

◎魚類を食べることが習慣化していない人の特徴:
・魚類を食べることが習慣化していない人は食事全体がやや偏っている。
魚類を食べる頻度が週3日以下の人は、男女とも3食とも野菜類を食べる頻度が低く、大豆製品や緑黄色野菜、乳製品、果物類を食べることが習慣化していない人が多かった。

■緑黄色野菜、乳製品を食べる頻度について:
・緑黄色野菜、乳製品ともに全体の半数が習慣的に食べている。

■果物類を食べる頻度について:
・果物類を習慣的に食べているのは全体で3割程度。

■甘味飲料や菓子類を食べる頻度について:
・女性では6割、男性で5割が週4日以上甘味飲料や菓子類を食べている。

■夜12時までに就寝する頻度について:
夜12時までに就寝するのが習慣化しているのは女性で5割、男性で3割。

◎まとめとして

・1食ずつの食事バランスが偏っていることで妊娠する力の低下を招いている可能性

妊娠を望むカップルは1日のエネルギー摂取量は概ね適正で、1日3食食べているけれども、1食ずつの食事バランスが偏っています。その結果、糖質過多の反面、たんぱく質や微量栄養素が不足している可能性があります。また、朝食にたんぱく質源のおかずや野菜を食べない食習慣はインスリン抵抗性を招き、体格(BMI)が適正でも、それによって妊娠する力が低下している可能性があります。

・朝食の内容が食生活全体に影響を及ぼしている

朝食にたんぱく質源のおかずを食べているかどうか、大豆製品や魚類を食べる習慣があるかどうかが、他の食事バランスと密接に関連していました。そのため、食生活の改善のポイントは朝食をバランスよく食べることと大豆製品や魚類を食べることを習慣化することにありそうです。

・バランスよく食べることが具体的に理解され、実行されていない

アンケートは、不妊治療や妊娠のためのライフスタイルについての講演会に参加した、食やライフスタイルについての情報に対する意識が高いと思われるカップルを対象に実施しましたが、本当に大切な情報は得ていないという感想を、私たちはもちました。

◎最後に 

妊活食材や細かい栄養素についての知識よりも、バランスよく食べるということは具体的にどういうことなのか、そして、そのためにはどうすればいいのかについて考えることが大切なのだと痛感しました。

・バランスよく食べるとは?
バランスよく食べるとは、朝、昼、夕食ともに、ごはんやパン、麺類だけでなく、たんぱく質源のおかずと野菜類を食べること、そして、1日に1回は大豆食品や魚類、乳製品、緑黄色野菜、果物を食べるということです。

・7割実行すればOK
もう一つ大切なことは、このことを毎日、毎食、守らなければならないという厳格なものでは、決して、ありません。目安は7割、たとえば、週に4日以上の実行を目指すことです。このことは生活習慣病の予防や重症化予防のためのライフスタイル改善の有効性についての研究で検証されています。

・正解は自分たちの生活の中にしかない
食生活ことをはじめとするライフスタイルは生活に密着しています。そのため、なにをどうするかは万人に共通の正解はありません。それぞれのカップルが、自分たちにとっての最適解をみつけることが大切ではないでしょうか。