編集長コラム

細川 忠宏

「バランス」ということについて考える

2015年06月08日

とにかく、「バランス」が大事であると言われます。

たとえば、食事や栄養しかり、ホルモンしかり、自律神経しかり、免疫しかり、です。

世間でも、こころとからだのバランスとか、最近は、ワークライフバランスなんてことが盛んに言われています。

妊娠しやすいカラダづくりを意識し、妊娠や出産にふさわしいカラダを目指し、さまざまなテーマについて考えれば考えるほど、教えを乞えば乞うほど、「バランス」が大事という結論に行き当たると言っても過言ではありません。

ただ、「バランスが大事ですよ」と言われても、目新しさがないからか、あたりまえすぎるからか、ついつい、聞き流してしまうきらいがあります。

そこで、原点に立ち返るという気持ちを込めて、改めて「バランスが大事」ということについて考えてみました。

バランスがなにより大事ということは、すべての栄養素やホルモン、神経、その他、私たちが生きていくうえで必要なものや身体を構成するすべてのものは、それだけで働いているわけではなく、ほかのものと協力しながら働いているということに他なりません。

つまり、それぞれが、なにかとつながっていて、お互いに影響しあっている、言いかえると、すべてのものは、それだけで存在しているわけではなく、他のものに依存している、すべてのものは、あなた次第であり、すべてのものはわたし次第でもある、そういう状態だと。

全身にあらゆるネットワークがはりめぐらされているというイメージでしょうか。

そういう観点に立つと、それぞれはフラットであり、それぞれに「優劣」はない!という事実に気付かされます。

もしも、その中で、なにかが突出して増えたり、突出して頑張ったりしたらどうでしょうか?

バランスが揺らいでしまい、場合によっては崩れてしまい、本来、身体に備わったさまざまな働きが低下してしまうことになりかねません。

私たちは、つい、身体によいものだから、妊娠によいものだからと、たくさん摂ったり、妊娠力を高める「なにか」を探し、摂ったりします。また、健康のために、妊娠のために、過剰に「頑張ろう」とします。

ところが、なにか、目新しいもの、また、植物性エストロゲンにようによさげなものを摂取したり、妊活と称して、なにかに突出して頑張ることは、ある意味、余計なことになってしまいかねないのですね。

あれこれ考え、悩み、心配する「頭」が「身体や心」のネットワークのバランスを乱してしまうと言えるのかもしれません。

「頭」の暴走には気をつけろ!ですね。

それでは、「バランスをとる」にはどうすればいいのでしょうか?

バランスのよい食事をするために、綿密にカロリーや栄養素の摂取量を計算して献立を考えるのは、どう考えても現実的ではありませんし、そもそも、味気なく、非人間的です。

ホルモンなんて、自分の考えや意思で、増やしやり、減らしたりできるものではありません。

もちろん、ホルモン療法で増やすことは可能ですが、継続するとさまざまなデメリットが伴うことはよく知られています。

要するに、頭で考え、バランスをとろうとしても、とれるものではありません。

かえって、余計なこと、邪魔になってしまいかねないのは前述の通りです。

それより、「気持ちいい生活を味わい、楽しむ」という意識を高め、「気持ちいいかどうか」を目安にすればどうでしょうか。

朝、気持ちよく目覚め、身体が軽く感じられ、体調がよく、食材の美味しさを味わえ、ストンと気持ちよく排便でき、気持ちよく運動でき、頭スッキリ仕事に取り組め、気持ちよく仲良くし、そして、気持ちよく過ごせているか、楽しめているかどうか、です。

ここは嘘がつけません。

運動不足だけど、食生活だけは完璧している、睡眠は十分にとれないけれども、運動だけは続けているという、罪滅ぼし的な取り組みは頭は妥協してくれても、身体の反応はそれなりです。

また、そもそも、バランスのとれ方には、遺伝的な体質が異なるため個人差が大きいものです。

ですから、他人はどうであれ、「自分が気持ちよく生活できている」かどうか、ここに徹底的にこだわるのが最も確実なはずです。

気持ちのよい生活。

これは、単に、休めばいいというわけではありませんし、単に、楽しく、快適に過ごせばいいとか、なにかを揃えればいいというわけでもありません。

また、お金さえかければ実現できるかと言えばそうでもなさそうです。

自分たちのココロやカラダの状態に意識を高め、ある程度、試行錯誤しながら、積み重ねていくというイメージでしょうか。

そのこと、その働きかけが、バランスを整え、バランス復元力を高め、そのことが生活の気持ちよさを高めるという循環をつくるのだと思います。

「気持ちのよい生活」とは、運よく向こうからやってきたり、誰かに与えられるたりするものではなく、日々、あたりまえに、バランスよく食べ、適度に運動し、質の高い睡眠、そして、適切なリラクゼーション法を通して、少しずつ、手に入るようになるものではないでしょうか。

カラダには、そもそも、バランスをとろうとする働きが備わっています。

その働きを、信じ、レスペクトし、感謝し、大切にしたいと思います。