編集長コラム

細川 忠宏

自分の中にあるパラダイムをシフトする

2014年07月15日

不妊治療の悩みについてのいろいろな調査をみてみると、治療そのものの悩み以外では、たいてい、「治療と仕事の両立」がベスト3以内にランクされているようです。そもそも、治療の内容やそのスケジュールにしろ、クリニックの診療体制にしろ、はたまた、仕事の内容や職場環境にしろ、それぞれに異なるわけで、通り一遍の解決方法など存在しないでしょう。

現実的には、それぞれの状況で、それぞれの解決方法を考えたり、工夫したりして、なんとか頑張っていらっしゃるのだろうと思います。

その「治療と仕事の両立」ついて、ちょうど数日前に出産の報告に来てくれたYさんと話している時にもこの話題になりました。

Yさんの不妊治療期間は5年、その間、何回か休憩をはさんでいますが、私からすれば相当なハードワークと治療を両立されていたように思います。そのYさんも、やっぱり、治療と仕事の両立はとても苦労したとのこと。ところが、その苦労というのは、具体的には、職場の理解を得ることやスケジュール調整というよりも、どちらかと言えば、自分の中の「迷惑をかけている感」だったというのです。

さらに、今だから言えるのかもしれないけれどもとして、それは、割と「取り越し苦労」だったのかもしれない、なんていうか、もう少し、「割り切り感」があれば、もっと気持ち的に楽だったかもしれないと。

私にとっては予期せぬ展開でしたが、すぐに連想したのは、東京慈恵会医科大学産婦人科の杉本先生の研究チームの調査結果の一つでした。それは、不妊治療と仕事の両立の悩みを抱える方の中には「職場の理解が得られている」方が少なくなかったというものです。

Yさんのような女性は他にもたくさんいらっしゃって、治療と仕事との両立の苦労は、時間的、物理的な問題もさることながら「当事者の常識」からくることもあると言えるわけです。

要するに、正規のルールに則って手続きを経て休んでいるので問題ないじゃないかと思える人もいれば、たとえ、きちんとした手続きを踏んでいても職場に迷惑をかけるのは申し訳ないと感じてしまう人もいるということでしょう。

「常識」なんて、人、それぞれであり、時と場合、場所によっても変化するものです。

もしかしたら、「結婚したら子どもがいて(できて)当たり前」とか、「子どものいる家庭がスタンダード」とか、もっと言えば、「子どもができないのは女性としての価値が低い」とか、「子どもがいる生活が幸せ」なんていう、たたけば、すぐに壊れてしまうような「常識」のようなものからくる苦労や辛さもあるのかもしれません。

自分の中の「常識」を徹底的に疑って、見直してみるということを定期的にやってみるべきなのかもしれません。