編集長コラム

細川 忠宏

妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法

2013年12月02日

この度、「妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法」という本を翻訳出版しました。

原書は「ファティリティダイエット(The Fertility Diet)」というタイトルで、アメリカのハーバード大学の教授グループによって、食生活や生活習慣と妊娠する力との関係について書かれています。

女性の健康に関する疫学調査では世界最大規模で、最も信頼性が高いとされているハーバード大学による「看護師健康調査」で得られたデータをもとに、どんなものを、どのように食べると、妊娠しやすくなったり、妊娠しにくくなったりするのかについて、一般の読者を対象にわかりやすくまとめられています。

この調査の不妊症領域のリーダーで、食生活や生活習慣と生殖機能の関連についての第一人者であるハーバード大学準教授のジョージ・チャヴァロ先生を中心に、ハーバード大学教授で栄養学の世界的権威である、ウォルター・ウィレット先生らによって書かれた本です。

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誤解を恐れずに言えば、世間で流れている妊娠しやすいカラダをつくる方法、すなわち、「不妊治療以外に自分たちでできること」についての情報は、"そのままでは"、あまり意味がないと、私は思っています。

なぜなら、たいていは、個人の体験をベースにしたものであったり、自明のことであったりするからです。

不妊の原因も、生活環境も、体質も、カップルによって異なるので、あるカップルの成功例が他のカップルにもあてはまるとは限りません。かえってマイナスになってしまうことさえあります。

また、健康が大切だ、食が大切だ、ストレスは大敵だ、冷えはもっと悪い、と言っても、それって、誰でも思っている自明のことなので、「確かに」で終わってしまいます。

大切なことは、それぞれのカップルにふさわしい「妊娠しやすいカラダをつくる」具体的な方法を、それぞれのカップルがみつけることだと、私は思っています。

そのためには、食べ物や栄養素、そして、生活習慣が生殖機能にどのように影響するのかについて、正しい情報を得て、自分たちの知識にすることが必要です。

ところが、この分野の研究はそれほど多くはありません。

そんな中で、ハーバードメディカルスクールやハーバード公衆衛生大学院の研究チームによって、この「看護師健康調査」をはじめとする疫学調査や関連病院で不妊治療を受けている患者を対象にした臨床試験で、多くの研究報告がなされています。

彼らがこの分野のリーダー的な存在です。

そのため、「妊娠しやすいカラダづくり」というサイトやメルマガを運営して、かれこれ、10年以上になりますが、数年前からチャバロ先生らの研究発表や情報発信を追いかけてきました。

そして、先生の研究報告をもとにした「ファティリティレッスン」というクラスの開催に引き続き、今回の翻訳出版に至ったというわけです。

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「これさえ食べれば妊娠できるという"奇跡の食べ物"も、これを食べれば妊娠できないという"悪魔の食べ物"もありません。いろいろな種類の食べ物をバランスよく、健康的に食べることです。」

これが、両先生から妊娠を望むカップルへのメッセージです。

大切なことは、"なにを"食べるかではなく、"どのように"食べるかであるというわけで、本の中では妊娠や出産にふさわしい食生活の「原則」を具体的に示してくれています。

そして、妊娠、出産に際して不可欠で重要な役割を担う栄養素は、5大栄養素とよばれている、糖質、タンパク質、脂質、そして、ビタミンやミネラルであるというのです。

なかなか思うように授からない期間や不妊治療期間が長くなってくると、なにか特別なものを探し求めてしまいがちです。

ところが、それはお金と労力の無駄になってしまう可能性が高いというわけです。

ベーシックなところ、すなわち、"根っこ"にこそ目を向けるべきで、根っこが強くなるのも、脆くなるのも、5大栄養素の摂り方次第なのです。

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このメルマガをご覧になっている読者の皆さんもご承知の通り、これをやれば妊娠できるという確実な方法はありません。

そういう意味では、自分たちにふさわしい方法で、妊娠しやすいカラダをつくっても、最高の生殖医療を受けても、赤ちゃんがやってくるかもしれませんし、やってこないかもしれません。

だからどうでもよいのでしょうか?

私たちは、だからこそ赤ちゃん待ち期間をどう過ごすのか、カップルにとってとても大切なことだと思っています。

どうなるかがわからない中で、自分たちはどのように赤ちゃんを待ちたいのか、そして、それをどのようにやっていくのかを、ふたりで話し合い、選択し、実行することが大切なのだと思うのです。

赤ちゃんを待つということは、赤ちゃんを少しでもいい環境で育てるための準備をすることでもあります。

環境とは、まずは、母親になる女性や父親になる男性の体内環境で、そして、家庭内環境です。

そういう意味では、受精、着床、妊娠、出産、育児というのは、連続した一連のものです。

まずは、ふたりの快適な生活ありき、なわけです。

そして、どんなものを、どのように食べるのかは、カップルの体内環境や家庭内環境に大きな影響を及ぼします。

どんなものを、どのように食べるのかについて、どうでしょうか、なにか大きな病気でもしない限り、それほど意識することはないでしょう。

ですから、この機会に、食べるということ、生活するということについての本質的なことを考えていただければと思います。

そのために「妊娠しやすい食生活」に書かれている内容を活用いただければ、これほど嬉しいことはありません。