編集長コラム

細川 忠宏

カラダの発する声に耳をかたむけたい

2012年02月19日

私たちは、なかなか授からないことに悩むカップルにとって、不妊の原因を治療するだけでなく、妊娠しやすいカラダになることも、とても大切なことだと考え、さまざまな情報を発信するようになりました。

それで、そもそも、妊娠しやすいカラダという言葉の意味というか、表現は分かりやすいのですが、それでは、それって、どんなカラダなのかというと、実はとってもあいまいなところがあります。

そもそも、残念ながらというか、悲しいことにというか、これとこれをやれば確実に妊娠できるという「正解」がないのですね。

それだけ、複雑というか、個人差が大きいわけです。

だからと言って、"個人の体験談や成功事例"ではなく、"医学的なデータ"をベースにはしていますが、それは「正解」ではなく、「全体の傾向」を教えてくれるだけです。

たとえば、タバコを吸う女性は妊娠しにくくなるというのは、全体傾向としてはその通りですが、タバコを吸う女性でも妊娠、出産している事実があるわけです。

タバコを吸うか、吸わないかだけで、妊娠が決まるわけではありませんからね。

それまでの喫煙期間や本数も関係しているでしょうし、タバコを吸っているけれども、それ以外は完璧に健康な生活を実践している女性と、タバコは吸わないけれども、不規則で、乱れた生活の女性では、どちらが妊娠しやすいのかなんて聞かれてもよくわかりません。

どんな条件をどこまで揃えればいいのかもわかりません。

まさに、誰にでもあてはまる「正解」なんてないんですね。

医学的に正しいとされている、妊娠率の高いことを、頑張って実践してみたら、かえって、妊娠から遠ざかってしまったなんてこともよくお聞きします。

たとえばセックスのこと。

セックスの回数は多ければ多いほど妊娠率が高くなる、男性の禁欲期間は短ければ短いほど新鮮な精子の割合が多くなり妊娠率が高くなる、排卵の2日前のセックスが最も妊娠率が高い、男女とも興奮や快感が高いほど妊娠しやすい、これって、レベルの高い低いはありますが、すべて医学的には正解とされています。

で、これを真面目に頑張れば、悲しい状況に陥ってしまうということがありますね。

そりゃ、そうでしょう!と笑われるかもしれませんが、これと似た状況は決して珍しいことではないと思います。

「正解」があると信じて、そして、それを真面目に実践する、これって、見方を変えれば、カラダに対して、妊娠しなさい!という命令しているみたいなもののように思えてなりません。

私たちが考える、妊娠しやすいカラダづくりは、決して、コントロールではないと思っています。

そうではなくて、カラダのもっている妊娠しようとするチカラが引き出されるように、カラダに備わっている妊娠しようとする働きが高まるように、応援することだと思うのです。

そうです、「命令」ではなく「応援」、「コントロール」ではなく「バックアップ」です。

そして、なにをすべきかについて、最後まで正解を外に求め続けるのではなく、全体傾向を参考にしながら、同時に自分たちのカラダが発する声に耳を傾けることが大切なように思います。

この違いはとてつもなく大きいものです。

命令はこちらの考えを押し付けることですが、応援は相手を考えや希望を尊重することです。

コントロールはこちらを優先することで、バックアップは相手ありきです。

さらに、コントロールは、既に決まった答えがあり、それを実践することで妊娠をつかみとろうとするような世界観が透けてみえます。

それに対して、バックアップは、そのときのために準備は怠らないけれども、超越したもの(自然)にまかせて、待とうとするかのようです。

そもそも、妊娠しさえすればそれでよいわけではありませんし、産みさえすればそれでよいわけでもありません。

そう思うと、自分のカラダ、すなわち、未だ見ぬ我が子をレスペクトして、そして、信じて、応援し、バックアップしたいものです。そんな皆さんを、私たちは応援させてもらいたい、そんな気持ちです。