編集長コラム

細川 忠宏

二人で力をあわせるために

2008年03月09日

不妊治療に通院する期間が長くなってくるほど、"じゃあ、家でご主人とよく相談してきて下さいね"、そう先生や看護師の方から言われることが多くなってきて、その度に、憂鬱になってしまうと、先日、Мさんから打ち明けられました。

Мさんのご主人は、いつも、最後には"やりたいようにやればいい"となってしまって、どうにも埋められない"温度差"を感じてしまう、そして、最近は、なかなか授からないことに悩んでいるのか、ご主人との関係に悩んでいるのか、よく分からなくなってきたというのです。

子づくりとは、まさに、協同作業であり、不妊の問題とは、すなわち、二人の問題なのですが、だからこそ、問題を解決し、克服する際のペースや考え方にずれがあると、そのこと自体が、新たな負担になってしまいかねません。

そんなパートナーとのギャップについての最新の研究報告が、ヨーロッパ生殖医学会誌で発表されています。

アメリカとデンマークの研究チームは、体外受精を受ける直前の2250名の男女を対象にアンケートを実施、問題に対処する考え方や行動スタイルが、パートナーにどのように影響を及ぼすのかを調査しています。
http://humrep.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/den067v1

それによりますと、問題から逃避しようとするのは、お互いの社会的な苦痛を大きくし、また、女性が積極的に行動するのは、男性の苦痛を大きくする、そして、問題を理屈だけで解決しようとすると、男性は納得できても、女性の苦痛を増大することになる、そんな傾向があると報告しています。

問題を先送りしたり、女性が先走ってしまうこと、理屈だけで解決しようとするのは辛いものがあるということ、すなわち"家でよく相談"するだけでは、問題の解決にならないこともあるということでしょうか。

ここは、少し、観点を変えてみる必要がありそうです。

毎週土曜日に開催している「ファーティリティレッスン」では、
http://www.akanbou.com/fertilelesson/top.html
二人で、気功やストレッチ、マッサージに、取り組んでもらう機会があります。

二人で、息を合わせて、同じことをすることは、実際の日常では、なかなか、ないことかもしれません。

ここに、参加された二組のカップルの感想をご紹介します。

> 私もお互いの気を感じられて、とてもよかったです。
> 土曜日はずいぶんと二人の会話も弾みました。

> 夫婦で取り組んだ気功では、手と手が近づいた時に、
> お互いの気を感じることができたのには驚きです。
> 気功って不思議ですね。
> なかなか夫婦で一緒にやるという趣味がないので、
> 今回、共に参加して、とてもいい経験となりました。

お互いに"同じペース"で、"同じこと"に取り組むことで、もしかしたら、言葉では、繋がらなかった回路に、スイッチが入るのかもしれません。

もしも、お互いの考え方や温度差、ペースにギャップを感じてしまったら、もちろん、とことん話しあうことが基本だとは思いますが、二人で、同じペースで、同じことをやってみてはいかがでしょうか?

とても単純なことではあります、また、バカバカしいと思われるかもしれませんが、きっと、何かのきっかけになると、私たちは、確信しています。

そして、不妊の問題とは、ある意味で、二人の"幸福な人生"を実現し、その状態を維持していくために、ファミリーをどのように形成し、運営していくのかという問題ですから、もしも、問題を克服するために、二人が力をあわせることが出来ているのであれば、その時点で、ほとんどの問題は解決していると言っても、決して、過言ではないはずです。