編集長コラム

細川 忠宏

何のための不妊治療なのかを考えさせられたこと

2007年12月02日

自分たちの妊娠の可能性を複数の視点から推測することは、さまざまな選択や判断の際の大切な目安になりますが、現実の生活では、いろいろな事情や都合、そして、思いや希望があって、遅くとも来年中には・・・、 なんてことを考えてしまいがちですね。

ただ、授からない期間が長くなってくるに従って、その時がいつなのかは、ちょっと、横に置いといて、自分たちは、本当に授かることが出来るのか、もしくは、このまま、一生、授かることが出来ないのか、ふと、そんな思いが頭をよぎることでしょう。

そんな、一生、授かることが出来ない、いわゆる、生涯不妊(嫌な言葉ですね、ごめんなさい)というのは、どれくらいの割合なのかを調査した研究報告が、イギリスの大学の研究者らのチームによって発表されました

それによりますと、生涯不妊の割合は2.4%だったとのこと。たった、2.4%なんですね。
客観的にみれば、ほとんどの夫婦は、遅かれ、早かれ、授かるということです。

この生涯不妊の割合について、過去にも報告があるのかどうかを調べてみたところ、全く別の方法で調べた研究報告がありました。

それは、カナダに宗教上の理由で避妊や中絶をしない人々が、コロニーを築いて生活しているところがあって、そこでの女性の一生の妊娠や出産の状況についての調査報告でした。

完璧に、自然な状態、要するに、なすがままなわけですから、人間に備わった、純粋な生殖活動を知ることが出来るわけです。

そこでの生涯不妊は、なんと、全く同じ、2.4%でした。

さらに、興味深いことに、そのように全く避妊や中絶をしなければ、一生のうちで産む子どもの数は平均11人だというのです。

まだあります。

最後に妊娠した年齢が40歳という女性は33%、45歳という女性は13%なのだそうです。

驚き、かつ、興奮しました!

皆さん、何歳くらいで結婚しているのかは分かりませんが、人間というのは、そうそう、妊娠しないものだということ、そして、ほとんどの夫婦は、いつかは、授かるものなのだということ、さらに、年齢的には、40歳以上になっても、ごくごく、普通に、授かるんだということなのですね。

なんか、不妊という概念が揺らいできませんか?

不妊って、とっても少なくて、ほとんどは、未妊なのですよ!!

ということは、少なくとも、30代半ばくらいまでは、明々白々な絶対不妊原因がないのであれば、もっと、もっと、もっと、長い目でみてもいいのかもしれません。

そして、かのイギリスの研究チームのリーダーは、20年前の状況と比べることで考えられることとして、、最近は、不必要な不妊治療が増えているようだと指摘しています。

必要か、不必要かは、もちろん、当事者である、それぞれの夫婦が判断することです。

ですから、授かることが出来ないから、生殖医療の力を借りるのではなくて、いつかは、授かることが出来るのにもかかわらず、待ちきれずに、そして、1日も早く授かりたいがために、不妊治療を受けるケースが増えているということでしょうか。

もしも、もしも、そうであれば、リスクとコストが、あまりにも、高くつき過ぎはしないでしょうか?

妊娠の可能性を出来るだけ正確に推測しようとする努力は、本当に大切なことだと、つくづく、思います。