編集長コラム

細川 忠宏

不妊治療をローリスクハイリターンにする秘訣を考える

2007年11月18日

投資の世界では、ハイリスクハイリターンか、さもないと、ローリスクローリターンが当たり前なのですが、不妊治療においては、ローリスクハイリターンを目指さなければなりません。

妊娠出来さえすれば母子の健康なんてどうでもよい!

そんな選択肢は有り得ないからです。

最近の体外受精では、生命力の強い受精卵を得て、子宮に戻す受精卵の数を少なくすることは、今や世界的なスタンダードになりつつありますが、これは、多胎妊娠を避けつつ(ローリスク)、高い妊娠率(ハイリターン)を目指してのことに他なりません。
そして、ローリスクハイリターンを心掛けねばならないのは、何も体外受精などの高度な治療だけに限ったことではありません。

最新ニュースでご紹介していますが、イギリス生殖協会(The British Fertility Society)は、不妊に悩む肥満女性が不妊治療を受ける際のガイドラインを発表しました。

ここに、肥満女性に限らず、妊娠を目指す誰もが知っておくべき、治療効果を最大限にするためヒントが示されています。

【その1】治療を始める前に身体のバランスを整えるべし

まずは「自分でバランスを整えることから始めよ」ということです。

ガイドラインでは、肥満は、自然妊娠の確率を低くするだけでなく、不妊治療の治療効果を減じ、治療成績を悪くすることから、ダイエットしてから不妊治療をスタートするべきだとしています。

太り過ぎ(痩せ過ぎも)とは、体格と脂肪量のアンバランスです。

そして、そのアンバランスが、ホルモンの正常な働きに支障をきたすことで、身体を妊娠しにくい状態にすると考えられているわけですが、この体格と脂肪量のアンバランスは、さまざまなことに置き換えられます。

例えば、食生活における栄養成分や摂取カロリーのアンバランス、また、日常生活での座っている時間と身体を動かす時間のアンバランス、そして、生活のリズムのアンバランスなどです。

さらには、精神的なバランスが及ぼす影響も決して小さくありません。

バランスを整えることは自分にしか出来ないことです。

【その2】出来る範囲の改善で妊娠する力は取り戻せる

2つ目は「無理は禁物、あくまで、自分のペースで」ということです。

ガイドラインでは、BMI(体格指数)が適正なレベルまでいかなくても、たとえ、今の体重の5~10%の減量でも、妊孕性は高まるとしています。

要するに、自分なりに多少なりとも改善出来れば、その効果は、決して、小さくはないとのこと。

いわゆる、正常値とは、あくまで、全体からみたボリュームゾーンであって、必ずしも、妊娠するための絶対条件ではないというわけですね。

目安とするべきは、絶対基準ではなく、相対基準です。

いかがでしょうか?

不妊治療は、決して、万能ではなく、年齢を始めとして、不妊治療でもクリアできない要因は少なくありません。

妊娠する力の源を一言で言えば、あらゆる意味での"バランス"と言えるかもしれません。まずは、自助努力で、バランスを整えないことには、医療の力を最大限に活用できないようです。

何とも、もったいないことです。

不妊治療で可能なこと、不可能なことを、そして、自分たちに出来ること、出来ないことを、冷静、かつ、正しく、認識したうえで、決して、無理のない範囲で、着実に、実行すること。

それが、不妊治療をローリスクハイリターンにする秘訣、すなわち、私たちが考える"妊娠しやすいカラダづくり"なのです。