編集長コラム

細川 忠宏

"思考"よりも"情動"を大切にしたい

2006年07月09日

通院を始めて、タイミング指導を受けるようになったら、医師から指示された日にしかセックスをしなくなった、それだけでなく、義務感からのセックスに苦痛を感じるようになった、さらには、お互いの関係までぎこちなくなってしまった、数日前、ある男性から打ち明けられた悩みです(※)。

心当たりのある方は少なくないかも知れません。

かの男性は、妻が頑張って通院しているのに、そして、もちろん、自分も妻に負けず劣らず、子どもを欲しているのに、それなのに、協力するのが苦痛になっている自分が情けないと、そして、このままだと、 協力したくても身体が出来なくなってしまう(ED)かもとも。

皮肉なことに、頑張れば頑張るほど、頑張れなくなってしまうという、なんとも悲しい状態です。

ただ、これって、悩むことでも、悲しむことでも、ましてや、自分を責めることでもなんでもないことなのです。

なぜなら、誰のせいでもなく、こうなって当然だからです。

ラマチャンドラン博士という脳神経学者は、著書「脳のなかの幽霊」で、"ほほえみ"について、以下のように説明しています。

仲のよい友だちに会うと、にっこりと自然な表情でほほえむのに、その友だちがカメラを向けて笑ってくれと言われれば、無気味な作り笑いになってしまいます。

この二種類の笑いがちがうのは、本人が恥ずかしいからそうなるのでも、努力が足りないからでもなく、それを扱う脳の領域がそれぞれ異なるからだというのです。

詳しくは説明しませんが、自然なほほえみは、脳の情動をつかさどるところが、そして、作り笑いは、脳の思考をつかさどるところが、それぞれ、おこすというのです。

要するに、"情動"がつくる笑いは自然で、"思考"がつくる笑いは、ぎこちなく、不自然になるというわけですね。

なんとなく、理解出来ますよね?

不妊という、それまで、二人が予想だにしなかった事態は、二人から"情動"を奪い取ってしまい、その代わりに、頭の中を"思考"だらけにしてしまうようです。

もしも、そうなってしまった、或いは、そうなってしまいそうなのであれば、二人の"情動"を、なんとかして、奪い返さなければなりません!

二人の原点に帰ってみましょう!

お互いがお互いを選んだのは、お互いの子どもを作る能力が目的ではなかったはず。
出会った頃の写真を二人でみながら、 その頃のことを思い出してみましょう。

二人でデートを楽しみましょう!

気取って食事に出掛けて、いつもと違った雰囲気でいろいろ語りあうもよし、手をつないでピクニックに出掛けるのもよさそうです。
そして、週末は、リラックスして、一緒にお風呂に入ってのもいいかも知れません。

結果として、タイミングが合えばよし、と考えましょう!

タイミングを合わせることは、あくまで、手段であって、目的ではありません。
目的は、仲良くすることです。
そして、妊娠は、あくまで、その結果、おこることです。

怒りや不信からは"情動"は起こらない!

自分の身体が、ちゃんと機能しないことに、怒りを感じていませんか?

また、妊娠出来ないのでは・・・、
なんて、自分の身体に不信感をもっていませんか?

自分たちのカラダを、もっと、信じましょうよ!
そんな生き方の方がいいとは思いませんか?

(※)ご相談頂いた男性に許可を得て、このコラムを書いています。

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