精子の質を維持する「脂肪」の摂り方

2014年01月23日

トランス脂肪酸の摂取が多い男性ほど総精子数が少ないという研究結果が発表されました。

妊カラ編集長の細川が翻訳した「妊娠しやすい食生活」の原著者であるハーバード公衆衛生大学院准教授ジョージ・チャバロ先生の研究チームによるもので、昨秋、チャバロ先生をボストンに訪ねた際に、食生活と精子の質の関係をテーマとした研究を進めているとおしゃっていましたが、その一環です。

試験は、スペインの18~23歳の健康な男性、209名に、食物摂取頻度調査で脂肪酸の摂取状況と精子濃度や総精子数、運動率、形態率との関係を調査したもので、トランス脂肪酸の摂取量が増えるほど総精子数が少なくなるとのこと。

トランス脂肪酸とは?

植物性の油は、普通、常温では液体で、空気に触れると酸化されやすく、加熱すると劣化しやすくなりますが、工業的に水素を添加し、一部の化学構造を変化させると、液体から半固形になり、酸化や加熱にも強く、さらには、風味もよくなり、食品産業にとっては格段に扱いやすくなります。

このような加工を施し、マーガリンやショートニングがつくられているのですが、その際に出来てしまう副産物がトランス脂肪酸なのです。

食品産業にとってはとても都合のよい油なのですが、これまでの研究では摂り過ぎるといろいろな病気や障害のリスクを高めることがわかっていて、食べる側にとってはよいことは何もありません。

実際、どんな食品に含まれているかというと、マーガリンや菓子パン、ドーナツ、クッキー、フライドポテト、冷凍食品など、加工食品やファストフード、あらゆるスナック菓子などです。

アメリカのFDA(食品医薬品局)は昨年11月に、トランス脂肪酸は公式に「安全とは言えない」との見解を示し、今後、食品への使用を禁止する方針を決定しています。

トランス脂肪酸と妊娠力

女性の妊娠、出産に際して、トランス脂肪酸がどのように影響を及ぼすのかについては、これまでにいくつもの研究報告があります。

トランス脂肪酸を多く摂るとインスリン抵抗性を招きやすくなり、高血糖や高インスリンを引き起こし、それによって卵巣の働きが低下し、卵の成熟や排卵の障害になるリスクが高くなること、また、炎症体質をも招くことから子宮内膜症の症状を悪化や死産のリスクが高くなるとの報告がなされています。

このようにトランス脂肪酸の過剰な摂取は、女性の卵の成育や排卵の障害や子宮内膜症の悪化を通して、妊娠する力を低下させてしまうことがわかっているのです。

脂肪酸の摂取が精子の質に及ぼす影響

チャバロ先生ら、ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは2011年に、関連病院であるマサチューセッツ総合病院で精液検査を受けた男性を対象にした試験で精子の細胞膜のトランス脂肪酸濃度が高いほど精子濃度が少ないことを確かめています。

そもそも、精子の役割は卵子まで父親のDNAを運ぶことですから、卵子のところまで泳ぎ切らなければなりません。そのためには精子には相当な運動能力が必要で、運動エネルギーと尾っぽのしなやかさが求められます。

そして、尾っぽがしなやかに推進力を生み出せるように、精子の細胞膜には流動性が高いDHAなどのオメガ3脂肪酸が一定の割合で多く存在します。

ところが、トランス脂肪酸を過剰に摂取すると、オメガ3系脂肪酸がDHAなどに変換するのに必要な酵素の働きを阻害し、ひいては、精子をつくる働きを低下させてしまうのではないかと考えられています。

実際に、これまで多くの動物実験でトランス脂肪酸の多いエサを食べさせると、精巣の働きが低下し、精子の質が悪くなることが確かめられていました。

また、脂肪の摂取と精子の質についても試験を実施しており、肉類の脂肪に多い飽和脂肪酸の過剰な摂取は精子濃度を低下させるおそれがあり、反対に、魚油に多いオメガ3系脂肪酸の摂取は正常形態精子を増やすことが期待できるかもしれないと結論づけています。

このようにトランス脂肪酸は女性の妊娠する力だけでなく、精子の数が少なくなることで、男性の妊娠させる力にまで悪い影響を及ぼすと考えられています。

日本人のトランス脂肪酸の摂取レベル

前述した通り、アメリカではこのトランス脂肪酸の健康への影響は深刻なようで食品や外食業界に使用を禁止する方針を打ち出さざるを得ないほどです。

マーガリンやマヨネーズ、ケーキ、アイスクリーム、スナック菓子、クラッカー、ポテトチップス、ドーナツ、フライドポテト、フライドチキンなど、オイル系のぬりものやお菓子、インスタント、ファミレス、ファーストフード、そして、冷凍食品系と、まさに、アメリカンフードなわけです。

一方、日本では、日本人はアメリカほどではない、というのが当局の見解で、規制等はなされていません。

実際に、食品安全委員会の2007年の調査では、日本人が1日に摂取するトランス脂肪酸は全カロリー中0.3~0.6%で、米国の2.6%を大きく下回っており、WHOの勧告である1%未満におさまっています。

ところが、今回の研究ではトランス脂肪酸の摂取量で4つのグループに分けて精液所見との関連を解析しているのですが、全カロリー中のトランス脂肪酸の中央値は、少ないグループから順に、0.37%、0.54%、そして、0.74%、最後に最も多いグループが1.03%です。

なんと、今回の調査対象になった男性のほとんどは1%以下にもかかわらず、そのレベルに関わらず、トランス脂肪酸の摂取量が多くなるほど精子数が少なくなることが確かめられたわけです。

つまり、たとえ、日本人はアメリカほどにはトランス脂肪酸の害についてはそれほど心配する状況にはないかもしれませんが、こと、精子の質への影響に関しては、個々の食生活次第では、決して、他人事ではないことがわかります。

食べ方を見直す

そこで、これまでの脂肪と精子の質との関連の報告から、お子さんを望まれるカップルにとっての対策を考えてみます。

それは、トランス脂肪酸は出来るだけ摂らないに越したことはありませんので、トランス脂肪酸を含まない食品に替えるという作戦です。

●マーガリンはバターかオリーブオイルに替える

もしも、朝食でパンにマーガリンを使っているのであればバターに替えるのが無難です。ただし、バターは飽和脂肪酸が主成分なので、オリーブオイルを使うのがベターです。

●マヨネーズやドレッシングはオリーブオイルや亜麻仁油、しそ油に替える

もしも、サラダに市販のマヨネーズやドレッシングを使っているのであれば、オリーブオイルやバルサミコ、亜麻仁油、しそ油で自家製ドレッシングをつくります。塩やこしょうなどの調味料やレモンなどの柑橘類で味を整えればヘルシードレッシングが出来上がります。

●菓子パンは全粒粉パンに替える

もしも、朝食に菓子パンを食べているのであれば全粒粉パンに替えます。そして、オリーブオイルやジャムを使えば美味しくいただけます。

●スナック菓子はフルーツやナッツに替える

もしも、おやつにスナック菓子やドーナツ、クッキー、フライドポテトを食べる習慣があれば、フルーツやナッツなどに替えます。原材料や製法が信頼できる和菓子もいいです。

●ファーストフードを食べる頻度を少なくする

おやつ関係は替わりになるものがありますが、もしも、ファーストフードに目がないという場合、トランス脂肪酸フリーのメニューにしたり、ファーストフードを食する頻度を少なくすれば、御の字かもしれません。

いずれもトランス脂肪酸が含まれているもの、すなわち、加工食品から自然に近い食品や食材に替えるというものです。加工食品では味わえない、自然な美味しさに目覚めると、自動的にカロリーに占めるトランス脂肪酸率も低くなっていくようになると思います。

そうすれば、トランス脂肪酸が含まれる食品を多く食べているという自覚のある方でも相当減らすことが出来るとい思います。

その結果、精子や卵子が守られるようになるだけでなく、トータルの健康度も高まっていくことでしょう。