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VOL.639 治療継続を判断するための検討材料について考える

2015年09月13日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.639 2015/9/13
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・今月のトピックス:治療継続を判断するための検討材料について考える
・編集室からのお知らせ
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2015年9月12日 最新ニュース
葉酸濃度とED(勃起不全)との関係
http://www.akanbou.com/news/news.2015091201.html
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2015年9月11日 曇り時々雨、のち晴れますように
少数派の辛さ
http://qq2q.biz/nRBT
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2015年9月11日 授かるレシピ
【卵胞すくすくレシピ】かつおのなめろう
http://www.akanbou.com/column/recipe/20150911.html
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2015年9月10日 編集長コラム
食事パターン研究が私たちに教えてくれること
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20150910.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


今月のトピックス Sep.2015___________________________________________
 
 治療継続を判断するための検討材料について考える
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女性が、40代、それも、42、43、44歳という年齢で体外受精で妊娠を目指
す場合、いつまで治療を続けるのか?という「特有の」問題を意識せざるを
得なくなってきます。

誰にでもあてはまる正解はなく、それぞれのカップルが、それぞれのカップ
ルの考えで答えを出すわけですが、やはり、治療の成功確率は検討材料の1
つになると思います。

日本産科婦人科学会が集計し、発表している年齢別の治療成績をみてみると、
42歳では1回の治療周期で出産に至る確率は3.6%、43歳になると2.4%、
そして、44歳では1.2%となっています。

決して、高い確率とは言えないのですが、48歳まではゼロではなく、つまり
は、45、46、47、48歳と言えども出産例はありです(2012年度)。

そして、個人差があるので、統計的には低い確率でも自分事として考えると、
2つに1つです。

あっ、誤解のように言っておきますが、40代後半まで頑張ろう!、可能性が
ある限りは続けよう!ということを言いたいわけでは、決して、ありません。

日本全国の年齢別という治療成績だけでは、判断材料としては、少々、心も
とないということを言いたかったのです。

そんな中で、卵巣の反応が思わしくない、すなわち、卵巣が排卵誘発剤に反
応しにくい女性を対象にした治療成績についての最新の論文が発表されまし
たのでご紹介したいと思います。


■卵巣機能低下女性の年齢と移植胚数別出産率
アメリカのCHR(Center for Human Reproduction)というクリニック
から卵巣機能の低下した女性の年齢別、移植胚数別の出産率が発表されてい
ます。

排卵誘発剤を使っても卵が少ししか発育してこない、すなわち、卵巣の反応
が思わしくないケースを「プアーレスポンダー」と呼びます。

ヨーロッパ生殖医学会の「プアーレスポンダー」の定義は以下の3項目の2
つ以上があてはまる周期、としています。

・排卵誘発しても卵が2、3個しか育たない。
・年齢が40歳以上である。
・AMHが1.1ng/mL未満である。

今回の研究では、この定義を下回る女性483名の768治療周期の妊娠率を調
べています。

テストステロンが標準値になるよう6週間、DHEAを1日75mg、それに加え
てミトコンドリアの機能改善を目的にコエンザイムQ10を1日900mgを服用、
そして、FSHを300~450単位で排卵誘発を行いました。

また、高齢女性によくある早期黄体化を防ぐためにIVM(未熟卵体外受精)
を実施しました。

・治療周期:768周期
・治療キャンセル:205周期(26.7%)
・移植キャンセル:166周期(29.5%)

768治療周期のうち、27%の205周期は排卵誘発しても卵が育たず採卵出来
ませんでした。そして、採卵できた563周期のうち、30%の166周期は受精
しなかったり、卵割が途中でストップしたりして移植胚が得られずに胚移
植が出来ませんでした。

着床前診断を実施して選択的単一胚移植を行った16周期を除いた381周期の
胚移植後の年齢と移植胚数別の出産率は以下の通りです。

因みに移植は全て新鮮胚で凍結は行っていません。すなわち、非選択的単
一胚移植、非選択的二個胚移植、そして、非選択的に三個以上の胚移植の
3パターンです。つまり、得られた胚をすべて(非選択的に)新鮮胚で3
日目の初期胚移植しました。

◎非選択的単一胚移植の治療成績
*出産数/移植数(%)
・35歳未満  2/6(33.3%)
・35-37 2/13(15.4%)
・38-40 2/24(8.3%)
・41-42 2/31(6.4%)
・43以上  0/55(0.0%)

◎非選択的二個胚移植
・35歳未満  1/3(33.3%)
・35-37 0/6(0.0%)
・38-40 5/30(16.7%)
・41-42 1/18(5.6%)
・43以上  1/54(1.8%)

◎非選択的三個以上胚移植
・35歳未満  0/1(0.0%)
・35-37 0/1(0.0%)
・38-40 6/20(30.0%)
・41-42 3/51(5.9%)
・43以上  5/68(7.4%)


■胚移植までいけるのは半分
年齢別の妊娠率や出産率を見る時に注意しなければならないのは分母が治療
周期あたりか、採卵あたりか、移植あたりかで数値がずいぶん変わってくる
ということです。

今回のデータでは、治療をはじめても、約4分の1は卵が育たなかったため
に採卵ができていません。

そして、採卵できても、その後、約4分の1が受精しなかったり、受精して
も卵割が途中で止まってしまったりして、移植胚が得られず、胚移植できて
いません。

そのため、胚移植できたのは約半分です。

つまり、年齢が高くなり、卵巣機能が低下してくると、たとえ、治療をはじ
めても、必ずしも採卵、移植に進めるとは限らないことを念頭に置いておく
必要があるということです。


■43歳以上になると移植する胚の数が物を言う
胚移植の治療成績をみると、42歳までは胚移植数の違いはそれほど大きくあ
りませんが、43歳以上になると1個や2個に比べて3個以上の出産率が高く
なっています。

このことは、42歳までは、成功のために複数の胚を移植する必要性はそれほ
ど高くないが、43歳以上になると移植する胚の数が物を言うようになるとい
うことになります。


■3個以上の胚を得られるかどうか
今回の論文の内容から言えることは、女性の年齢が高くなるほど、複数の受
精卵を得ることができるかが成功のポイントになることがわかります。

そもそも、体外受精は卵子の老化を治療するものではありません。

体外受精を受ける意味は排卵誘発によって、複数の受精卵を得て、妊娠でき
る卵子との出会う可能性を大きくすることです。

卵管や男性側に問題がない場合、排卵誘発しても1個しか受精卵を得られな
ければ、体外受精でも、人工授精でも、自然妊娠でも、妊娠、出産に至る確
率はそれほど変わらなく、わざわざ、体外受精を行う意味はそれほどないと
いうことになります。

つまり、高齢だからという理由だけで体外受精が最適な治療法とは言えない
わけです。

人工授精を繰り返したり、性交回数を最大に増やしたりするほうがコストパ
フォーマンスが高くなります。

反対に高齢でAMHが低値でも、3個以上の受精卵が得られるのであれば、積
極的に体外受精を継続する価値があると言えます。

*文献
Live-birth rates in very poor prognosis patients, who are defined as
poor responders under the Bologna criteria, with nonelective single
embryo, two-embryo, and three or more embryo transfers.
(Fertil Steril Article in Press)
http://www.fertstert.org/article/S0015-0282(15)01869-5/abstract
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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


編集室からのお知らせ(1)_____________________________________________

 妊活を考える&応援する、すべての方へ
    「Fine祭り2015 全国おしゃべり会special」のご案内
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毎年恒例のNPO法人Fineの「Fine祭り」ですが今年も開催されます!今年は
不妊体験者による「体験談発表」や当事者同士の「おしゃべり会」、そして、
不妊スペシャリストによる相談です。

札幌、仙台、名古屋、大阪、東京の5ヶ所で、9月から12月にかけて開催さ
れます。

以下、Fineからのお知らせです。

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NPO法人Fineは、不妊当事者による、不妊当事者のための団体です。

毎年恒例の、NPO法人Fine主催「Fine祭り」
札幌、仙台、名古屋、大阪、東京の全国5カ所で開催します!

プログラムは...
【第一部】
◆不妊体験者による「体験談発表」
 当事者の気持ち、悩み・・・生の声を聞いてみよう!

【第ニ部】
◆当事者同士の「おしゃべり会」
 日ごろの悩みや治療の話など、他ではなかなか話しづらいことや
 あなたの抱えているいろんな思い、ここで話してスッキリしちゃいましょう!
 ぜひ、お友だち作りのきっかけにもしてくださいね♪ 

◆不妊スペシャリスト相談
 不妊症看護認定看護師の方やエンブリオロジスト(胚培養士)の方に、
 病院では質問しづらいこと、検査や治療について知りたいことを相談できる
 チャンスです!

※「Fine祭り2015」の詳細はこちら↓
http://j-fine.jp/matsuri/2015/matsuri.html

ぜひご参加ください♪

<日程>時間はいずれも13:00~16:00(予定)
◆ 「Fine祭り2015 全国おしゃべり会special in 札幌」
日 時:2015年9月27日(日)
会 場:札幌エルプラザ 4階 札幌市男女共同参画センター

◆ 「Fine祭り2015 全国おしゃべり会special in 仙台」
日 時:2015年10月17日(日)
会 場:ヒューモスファイヴ 8階 仙台駅前 貸会議室(大)

◆「Fine祭り2015 全国おしゃべり会special in 名古屋」
日 時:2014年11月3日(日)
会 場:ウインクあいち 11階 中会議室1101

◆「Fine祭り2015 全国おしゃべり会special in 大阪」
日 時:2015年11月29日(日)
会 場:つるやホール 本館8階 第一会議室

◆「Fine祭り2015 全国おしゃべり会special in 東京」
日 時:2015年12月6日(日)
会 場: アーバンネット神田 カンファレンス 2A 2B

◆「Fine祭り」に参加された皆さんからは、このような声をいただいています◆
・自分一人じゃないと本当に心から思えました。
・気持ちが楽になりました。また明日から頑張ります。
・悩んでいた事を親身になっていただき、不安がとれました。
・今日このおしゃべり会で久しぶりに笑うことができた。

「祭り」ネーミングの由来はこちら↓
http://j-fine.jp/matsuri/p-a.pdf 

「Fine祭り2015」お申込みはこちら↓
http://j-fine.jp/matsuri/2015/matsuri.html


編集室からのお知らせ(2)_____________________________________________

 授かりヨガのご紹介
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千葉の松戸市で開催されるバースセラピスト&授かりヨガインストラクター
が贈る新たな命に向けた「授かりヨガレッスン」をご紹介します。

2人の「授かりヨガ」ということで、3児の母でヨガインストラクター、村
田寿美礼さんとカウンセリングをすると人生の花が開くセラピスト、やまが
たてるさんがおおくりするクラスです。

以下、主催者から。

授かりを待つ方
授かりを待っているけれどなかなか授かれない方
女性としての生き方に迷う方
授かりもしたいけど、パートナーシップに迷う方
自分自身の女性性の部分に不安を感じる方
楽しそうだからいってみたーい!という方

和をもち、心地よい時間を提供いたします。

1時間はヨガタイム
1時間はオープンハートなお話しタイム

2時間の濃厚な時間で
命のつながりを感じながら
自分自身のなかの
耀きと授かりを待つワクワクに
心と体をほどきにいらしてくださいね。

日時:9/28 (月)10:00-12:00
場所:千葉県松戸市常盤平4-8-15 studio ichie+
参加費:4000円
参加人数:8名まで
参加申し込み方法:以下のサイトからお願いします。
http://www.hahanoki.com/

・ヨガインストラクター村田寿美礼さんのサイト
http://sumireyoga.jimdo.com/ 
・セラピストやまがたてるえさんのサイト
http://www.hahanoki.com/


当社製品&サービス________________________________________________

・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 http://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/


編集後記____________________________________________________________

日本は不妊治療患者の高齢化が世界一進んでいる国です。日本では2012年に
326426周期の高度生殖補助医療が実施されましたが、その内、40歳以上は
39%、41歳以上は31%、43歳以上は16%です。

アメリカは、2013年の統計ですが41歳以上は16.8%、43歳以上は6.6%、そ
して、ヨーロッパは2010年で、40歳以上が17.1%と報告されています。

ご承知の通り、欧米では30代後半、40代になると、卵子提供を勧められるよ
うになるからです。

今年の6月にスウェーデンに行き、ホームステイし、彼の地の不妊治療事情
を、ほんの少しですが、垣間見る機会はありました。

スウェーデンをはじめとする北欧では、医療費は無料で、不妊治療も例外で
はありません。

そのため、驚いたのは、自然妊娠へのこだわりがそれほどなく、はじめから
普通に体外受精を受ける感じでした。

また、40代になると治療成績が低いからという理由で医療費の補助はありま
せん。

それに比べ、できるだけ自然に(負担の軽い)近い方法で妊娠を目指したり、
40代でも自分の卵子で妊娠を目指さざるを得ない日本の環境は、生殖医療技
術をずいぶん高めているように思えてなりません。

実際に凍結技術は、ダントツで日本が世界をリードしていますし、排卵誘発
もしかりだと思います。

どちらはいいとか悪いとか、なにがいいとか悪いとか、ではなく、それぞれ
の事情や環境によって技術や取り組みが変わってくるのだなと思います。

いずれにしても、すべての不妊治療を経験するカップルは、その結果いかん
にかかわらず、不妊治療でしか得られない経験を、後々、活きることを願う
ばかりです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.639
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整
理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出
来る限り客観的な視点で、お届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com/
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◎発行部数
・自社配信: 1,451部
・まぐまぐ: 3,771部
・合計部数: 5,222部(9月13日現在)
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