曇り時々雨、のち晴れますように

小倉 智子

生殖物語の書き換え

2016年09月19日

みなさま、
こんにちは。

お天気が不安定ですね。
自然のことなので、
仕方ないのですが、
人間の生活が自然に影響しているようで、
それは考えないといけないですよね・・・

お天気ではありませんが、
人間の生殖もまさに自然。
顕微授精は多少、人間の操作が入りますが、
体外受精は受精に関しては
自然の領域です。

ARTと呼ばれるこの高度生殖医療も
Assisted Reproductive Technologyの略で、
生殖補助技術
で、あって、治療ではないんです。
日本では治療=治す、というイメージもあり、
体外受精をすれば不妊が「治る」と考えがちですが、
違います。
あくまで自然にはできないことを
少し補助する技術があるのでそれを提供します、
あとはやはり自然の力を待つだけ、
ということになります。

だから30歳の女性が体外受精をしても出産にいたるのは20%程度。
医療として、20%の「成功」は高くない、というか、低い。
40歳だと8.8%。

それでも勿論みなさん、期待するわけです。
自分はその20%、8.8%に入れる、と感じるのです。

でも現実はそうではない、ことも
うすうす感じます。
だから辛いのですが、
どうしてつらいかというと、
その一つが生殖物語の書き換えをしないといけないからです。

自分が描いていた家族の在り方が
否定され、不妊であることを受け入れ、
さらに不妊治療を行うことの苦しみが
自分の物語に書き込まれていくのは
辛いことです。

でも、この書き換えの先に新しい人生はあります。
その人生をより自分らしく、より魅力的にするには
この書き換えが重要になります。

たとえば、
子供が授からなければ夫婦で毎年必ず海外旅行に行く、
子供に関わる仕事、ボランティアをする、
子供が少ない地域に引っ越す、
今の仕事に専念する、
好きだった絵画を始めてみる、
など。

本当は家族4人を思い描いていたけど、
不妊になって、治療をしたけど、授からなくって、
とても悲しかったけど、
夫と二人家族として生きていくことを
考えたとき、
自分が自分らしいのはこんな生き方、

という感じです。
勿論、こんなに簡単にはいきません。
治療中の場合はその毎日が書き換え作業となります。

治療を終結された方でも1~3年くらいかかって
書き換えをします。

治療でお子さんを授かった方、二人目不妊の方も
書き換えが必要です。
自然ではなく、治療によってお子さんが授かる、
二人目を不妊で授かることができなかった、
というのももともと描いていた生殖物語にはないストーリーです。
追加や書き換えをする必要があり、
お子さんがいたとしても
やはりそこは辛かったり悲しい作業になります。


まず不妊を経験したことを受け入れること、
そして、それでも私は(私たち夫婦は)想定していた人生とは違うけど、
幸せを感じることができる人生を
自分(達)で見つけていきます、

という気持ちになれればいいなあ、
とカウンセラーとしては思うのです。