編集長コラム

細川 忠宏

長寿遺伝子の歯車がかみ合うとき

2016年05月02日

老化のスピードには個人差があり、早く老化が進む人もいれば、年齢の割には若い人もいますが、その差を決めるのは「長寿遺伝子」の発現であるとされています。

そのため、「長寿遺伝子」の活性化がさまざまな病気の治療や予防につながることが期待され、大きな関心が寄せられています。

不妊治療の領域も例外ではなく、もしも、卵細胞の長寿遺伝子を活性化できれば年齢による妊娠率の低下を抑えられることになるかもしれません。

この「長寿遺伝子」、正式にはサーツー遺伝子と呼ばれていますが、そのメカニズムを発見したのが、アメリカのマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授です。

そのガレンテ教授は「長寿遺伝子」を活発にするための生活のキーワードは、ずばり、「バランス」であると言うのです。

『「長寿遺伝子」を解き明かす(NHK出版)』という本の中で、インタビューに答える形でこのようにおっしゃっています。

「バランスのとれた生活を送ることによって、初めて長寿遺伝子の歯車がかみ合うのです。そのとき、わたしたちは長寿遺伝子がもたらす恩恵を得られるのだと思います。」

これを読んだとき、結局、そういうことなのか!と、あまりの「当たり前さ」にいたく感動しました。

ただ、「バランスのとれた生活」と聞くと、あまりにも当たり前過ぎて、右から左へ、綺麗にスルーされてはいないでしょうか?

そう思えてなりません。

そこで、この、スルーされがちで、かつ、いろいろな解釈が可能な、「バランスのとれた生活」というものを、改めて、具体化することにチャレンジしました。

◎「バランスをとる」ということを「食生活」で考えてみると

朝と昼、夜に、5大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)を摂るということです。

具体的には、5つのもの、すなわち、主食(ごはん、パン、麺類、いも類)、おかず(肉、魚、卵、大豆製品)、野菜(緑黄色野菜)、果物、乳製品を食卓に揃えることです。

主食やおかず、野菜は朝食、昼食、夕食の毎食、果物と牛乳は1日1~2回程度摂ると、結果として、5大栄養素をバランスよく摂ることができます。

そして、朝と昼、夜の食事のタイミングも食間が長すぎず、短すぎず、適当な間隔をあけます。

まずは、ここから取り組むべきです。

もしも、ここを中途半端なまま、妊活食品や妊活サプリなどを利用するというのは順番(優先順位)が逆になります。なぜなら、パソコンに例えると、OSが不安定なままに、アプリケーションをインストールするようなものだからです。せっかく、機能の優れたアプリケーションソフトでも、OSが脆弱であれば、本来のパフォーマンスが発揮できません。

要するに、お金の無駄遣いになりかねないというわけです。

また、余計なものを摂ると「バランス」にマイナスの影響を及ぼしてしまいかねません。

◎「バランスをとる」ということを「活動」で考えてみると

1日単位からみれば、すわりっぱなし、じっとしっぱなしにならず、適度に動くことです。

週単位からみれば、週に5日程度は1日に30分以上の運動をすることです。

◎「バランスをとる」ということを「体格」で考えてみると

体格指数であるBMIが20から25の間にあるということです。

もしも、この間になければ、食事の「量」のバランスが崩れているということになります。

食べるもののバランスを維持し、「量」を調節します。

◎「バランスをとる」ということを「生活リズム」で考えてみると

夜は、暗くして、かつ、12時までに寝るということです。朝は、太陽の光を浴びます。

◎「バランスをとる」ということを「心」で考えてみると

フラットな心、すなわち、なにかに固執したり、こだわったりせず、ニュートラルな状態を維持します。

いかがでしょうか?

ご自身の生活を見渡してみて、ぞれぞれの項目でバランスチェックを行ってみると、取り組むべき「内容」と「順番」が明らかになるはずです。

食事については、さまざまにアドバイスされていますが、この原則を実行することで、ほとんどの問題はクリアできます。ありがたいことに、「バランス」に1点集中することでいろいろなことを気にする必要がなくなります。

もう1つ、いろいろと、事情があって、どうしてもバランスがとれないところがあれば、そこが重点項目になるはずです。

そこに知恵と労力をかけて、改善を図ることが大切だと思います。

いずれにしても、限られた時間と労力、費用の中では「優先順位」を間違えないことこそが最重要です。