編集長コラム

細川 忠宏

自分のカラダに備わった自然のメカニズムを信じたい!

2006年02月26日

母親になる女性が高齢になるほど、双子やみつごなどの多胎児の出産率が高まることは、昔からよく知られた事実でした。
ただ、なぜ、そうなるのか、よく分かっていませんでした。

不妊治療で排卵誘発剤を使ったとか、体外受精で複数の卵を戻したわけでもない、全くの自然妊娠で、です。

普通は、女性が年をとると、妊娠する確率さえ、低下していくものです。

にもかかわらず、多胎が増える。

"Paradox(逆説)"と言われていたゆえんです。

ところがです!

この"Paradox(逆説)"のメカニズムを、
ヨーロッパ生殖医学会の学術誌「Human Reproduction」に発表された、
オランダの大学の研究報告が、明らかにしたというのです。
http://humrep.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/del009v1

要するに、高齢化、具体的には、30代後半から40代後半にかけて、次第に、卵巣の機能が低下してきて、 かつ、数少なくなってきた良質の卵を育てるべく、どんどんFSH(卵胞刺激ホルモン)を分泌するようになりますが、それが、1つの卵を育てるのに必要な量を超えて分泌されると、周期によっては、良質な卵が複数成熟、排卵するので、 多胎が増えるというわけです。

言われてみれば、別に不思議なことでも、なんでもありませんね。

ただ、この研究結果は、 私たちのカラダに備わった"メカニズムの凄さ"を、改めて、証明してくれています。

ちょっと、考えてみて下さい。

血液検査を受けて、FSH(卵胞刺激ホルモン)の数値が高いと、「既に、あなたの卵巣の力は低下していますよ」という、"宣告"を受けたようにとらえていませんか?

要するに、このホルモンが高いと"高齢による不妊"の烙印を押された、そんなふうに、思い込んではいませんか?

とんでもないことです!!

確かに、このホルモンの数値が高くなるのは、若い頃に比べて、頑張って、たくさん、刺激しないと、卵胞が大きくならないからなわけで、この数値を、生殖能力低下の指標とせざるを得ないのですが、今回の研究報告が物語っているのは、年をとっていくと、大きな傾向としてみれば、 卵巣の力が低下し、そのために、FSHの分泌が増えていくのですが、それぞれの周期でみてみると、必ずしも、そうではないことが分かります。

どういうことかと言いますと、周期によっては、この卵胞刺激ホルモンが、どんと、分泌され、いつもに比べて、よい卵を、それも、複数育てることもあるわけです。
或いは、周期によっては、卵巣が、いつもより、頑張って、よい卵を、それも、複数育てることがあるということです。

要するに、FSHが高くなるのは、 カラダが、頑張ってくれている"証し"なわけです。

ただ、悲しいかな、頑張ってくれても、毎周期、若い頃のように、よい卵が、すくすく、育つわけではありません。

けれども!、ですね、頑張ってくれているお陰で、毎周期ではないにしても、ちゃーんと、よい卵が育ってくれて、排卵されているのです。

ですから、妊娠の確率は、多少、下がることは、下がりますが、"もう無理"なことでは、決して、ないのです。

FSHが高いのは、"もうダメ"になっているのではなく、あなたのカラダが、けなげに"頑張って"くれているということなのです。

排卵しない周期もあります。

また、体外受精で、卵がとれないことが、悲しいかなあります。

でも、それは、"たまたま、卵巣が休憩している"だけなわけです。

であれば、高齢であることは、悲観すべきことでもなんでもなく、自分のカラダの偉大なメカニズムに気づくべき時であって、そんな力に、感謝し、もっと、自分に備わった力を信じるべきではないかと、本当に、つくづく、思った次第です。