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妊娠しやすいカラダづくり No.1148 2025/6/29
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:大豆食品摂取量と子宮内膜症の関係
・編集後記
最新ニュース解説 Jun, 2025__________________________________________
大豆食品摂取量と子宮内膜症の関係
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大豆食品の適度な摂取が子宮内膜症発症リスクの低下と関連していることがハーバード大学による研究で明らかになりました(1)。
大豆には女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをする植物性エストロゲンである大豆イソフラボンが含まれています。
一方、子宮内膜症は子宮内膜以外のところに、子宮内膜ができてしまう病気ですが、エストロゲン依存性、すなわち、過剰なエストロゲンの刺激によって病変が増殖したり、悪化したりします。
そのため、植物性エストロゲンを摂取することで、同じ受容体に結合することから過剰なエストロゲンの刺激を抑制し、子宮内膜症の病変の増殖や悪化を抑制することが出来るのではないかとの期待がなされています。
これまで動物試験ではその有用性が検証されていますが、ヒトでは結論が定まっていないことから、大規模な前向き研究でその関連性が確かめられました。
◎どんな研究だったのか?
1991年から2021年の30年間、ハーバード大学による大規模な前向きコホート研究「Nurses' Health Study II」に参加の被験者である女性看護師(開始時27~44歳だった82,084名)を追跡しました。
具体的には、4年ごとに食物摂取頻度票を用いて食事調査実施し、大豆食品とイソフラボンの摂取量を算出しました。
その一方、2年ごとの追跡調査質問票で腹腔鏡下で子宮内膜症と診断されたかどうかを自己申告してもらい、大豆やイソフラボン摂取量と子宮内膜症リスクの関連を調査しました。
◎どんな結果だったのか?
30年間で、追跡した被験者の人数と追跡期間を掛け合わせると、1,038,888人年になりました。
そして、追跡期間中に腹腔鏡によって診断された子宮内膜症は3,829例で、10万にあたり369件の割合でした。
その結果、大豆摂取量が多くなると子宮内膜症リスクが低くなることがわかりました。
大豆摂取量が週に1回増えるごとに、子宮内膜症のリスクが8%低下しました。ただし、この関連性は、不妊症でない被験者において認められましたが、不妊症であった被験者では認められませんでした。
イソフラボン摂取量と子宮内膜症のリスクとの間においても負の関係が認められ、この関係は、1日の摂取量が4mgまで逆相関し、その後 、フラットに達しました。
◎大豆食品と体外受精治療成績との関係
同じハーバード大学ですが、ART女性患者を対象としたEARTH研究では、大豆食品の摂取量と体外受精の治療成績との関係が調査されています(2)。
ハーバード大学の関連病院のマサチューセッツ総合病院で体外受精に臨む315名の女性に治療開始時直近の3ヶ月間の大豆食品の摂取量を回答してもらい、その後の治療成績との関係を調べました。
まず、大豆食品の摂取量とそこから算出したイソフラボンの摂取量別に、イソフラボン摂取量ゼロ、摂取量(低)、摂取量(中)、摂取量(高)の4つのグループにわけました。
各グループの1日あたりのイソフラボン摂取量
・イソフラボン摂取量(低)グループ:0.54-2.63mg/日
・イソフラボン摂取量(中)グループ:2.64-7.55mg/日
・イソフラボン摂取量(高)グループ:7.55-27.89mg/日
出産率をイソフラボン摂取量ゼロのグループと比べた結果
・イソフラボン摂取量(低)グループ:1.32倍
・イソフラボン摂取量(中)グループ:1.87倍
・イソフラボン摂取量(高)グループ:1.77倍
大豆食品は食べない女性よりも食べた女性のほうが体外受精や顕微授精の出産率が高くなっています。
ただし、摂取量の中グループと高グループの出産率はほぼ同じレベルですので、たくさん食べれば食べるほど治療成績が上がっていくわけでもないと言えます。
◎日本人の大豆食品やイソフラボン摂取量
厚労省の最新(令和5年版)の国民健康・栄養調査によりますと30代女性の大豆食品の平均摂取量は1日に39.1gです。
大豆食品40gに含まれるイソフラボンの量は、食品の種類によって異なりますが、例えば、納豆40gには約51mgのイソフラボンが含まれる一方、豆腐100gには約51mgのイソフラボンが含まれます。油揚げ30gには約21mgのイソフラボンが含まれます。
また、農林水産省のサイト内の「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」では、「平成14年国民栄養調査(厚生労働省)による大豆食品等の摂取量からの試算によると、平均的な日本人(15歳以上)の大豆イソフラボン摂取量は一日当たり18mgです。」との記載がなされています。
大豆食品の種類によって異なるものの、子宮内膜症のリスクという観点からも、体外受精治療成績という観点からも、日本人は研究で有効と考えられる摂取量よりは多く摂取していることは間違いありません。
そのため、日本人にとって、大豆食品は「普通に」普段の食事で食べていればそれで十分であり、大豆食品だけを増やす必要はないと言えます。
ただし、あくまで平均の摂取量であり、もしも、普段、大豆食品をほとんど摂取しない、もしくは、週に1回も食べないという場合、週に3回以上は食べることをお勧めします。
因みに大豆食品ごとのイソフラボン含有量の目安は以下の通りです(3)。
納豆(1パック45g) :約35mg
豆腐(1丁300g) :約80mg
豆乳(1パック200g):約40mg
きな粉(大さじ8) :約77mg
文献
1)Fertil Steril 2025 17 June 2025 17 June Article in press
2)Fertil Steril.2015; 103: 749.
3)食品・食品添加物研究誌 : FFIジャーナル (通号 172) 1997.04
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編集後記____________________________________________________________
大豆食品は、習慣的に摂取するのがよいようです。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1148
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