____________________________________________________________________
妊娠しやすいカラダづくり No.1170 2025/11/30
____________________________________________________________________
今週の内容__________________________________________________________
・トピックス:冬はビタミンD欠乏に注意したい
・編集後記
トピックス Nov. 2025_______________________________________________
冬はビタミンD欠乏に注意したい
-----------------------------------------------------------------------
ビタミンDが妊娠や出産に際してとても重要であることは広く知られるようになりました。
ビタミンDが充足している女性は、ビタミンDが不足、欠乏してしている女性に比べて、体外受精の治療成績が良好であるという研究結果が発表されています(1)。
ビタミンDの作用に細胞の分化があり、卵胞の発育に必須ですし、免疫調節作用は着床や妊娠の継続にも重要な役割を担います(2)。
さらに、カルシウムと骨の代謝調節作用は胎児に成長に重要で、最近の妊婦のビタミンD不足が新生児のくる病増加を招いています(3)。
このように、妊娠後の母子の健康、さらには、子どもの出生後の健康にも影響することもわかっているため、妊娠前からビタミンDを充足させておくことが大切です。
ところが、これからビタミンDが不足しやすい季節になります。
ビタミンDはビタミンとされているにもかかわらず、必要量のほとんどは紫外線にあたることで皮膚でコレステロールから合成されています。
なぜ、「ビタミンとされているにもかかわらず」なのかは、そもそも、ビタミンとは体内で合成できないため、食品から摂取する必要性のある有機化合物と定義されているからです。
そして、ビタミンDが摂取できる食品は、ほとんど、魚だけで、それも「サケ」くらいです。
これが、ビタミンDが、女性の間で、特に、冬に不足する理由です。
日焼け止めを使い、ビタミンDがつくられる紫外線をカットする上、冬は日照時間が短くなるからです。
北九州のオフィスワーカー男性312名、女性217名を対象に7月と11月の血中のビタミンDのマーカーを測定した研究(4)があります。
それによると、平均値は7月が27.4ng/mlだったのに対して、11月は21.4ng/ml と低く、ビタミンD欠乏(20ng/ml未満)の割合が7月では9.3%だったのに対して、11月では46.7%と半分近くになっています。
妊娠や出産時にも影響を受けます。
妊娠後期(妊娠34週)の母親の血中ビタミンD濃度を調べた研究(5)では、夏に妊娠後期を迎えた母親は、冬に妊娠後期を迎えた母親よりも、明らかにビタミンD濃度が高いことが示されています。
さらに、別の研究では、冬に生まれた子どもは、夏に生まれた子どもに比べて、骨密度が低い傾向があることも報告されています(6)。
ただし希望が持てる点として、妊娠中にビタミンDを補充していた母親では、季節による骨密度の差が軽減されたことも示されています。
つまり、妊娠中のビタミンDは、季節に左右されるしかし、意識的な補充でカバーできるということがわかってきています。
それでは、これからの季節、ビタミンDの不足や欠乏回避になにができるのでしょうか。
北九州で行われた研究では魚介類や運動、タバコを吸わないことが、血中のビタミンDマーカーの高値と関連したと報告しています。
前述の通り、ビタミンDが豊富に含まれる食品は、魚、それもサケです。
そうなのですが、毎日、サケを食べるわけにもいきませんので、基本は日にあたることです。
意識して日光浴をするのも難しいと思うので、やはり、ウォーキング等の運動が現実的かもしれません。
ただし、女性の場合、季節を問わず日焼け止めクリームなどの紫外線対策を欠かさないという方も少なくないでしょうから、確実なのはサプリメントになると思います。
サプリメントを利用する場合は、ビタミンDは脂溶性のため摂取するタイミングが大切です。1日のうちで食事が最も多い食後が吸収効率がよいとされています(7)。
最後に福島県立医科大学の特任教授で、日本DOHaD学会の代表幹事でいらっしゃる福岡秀興先生からのメッセージです。
ビタミンD(Vit D)は、骨代謝に加え、生殖機能、糖代謝・血圧調節・腎臓機能・肝臓機能・中枢機能、免疫系等を調節する重要なビタミンとして関心が高まっています。
ところが屋外活動の低下や日焼け止めクリームが多用(濫用)され、魚類の摂取も少なくなっている日本では不足・欠乏した人々が随分と多くなっています。
母子健康手帳から児の日光浴の勧めが無くなり、貧しい時代に多発したクル病が多く発症しています。
男性女性の生殖機能にも強く影響しており、北欧では血中Vit D濃度が高くなる夏から秋に妊娠がピークになる事はそれを明確に示しています。
実際、女性Vit D濃度と不妊症治療の成績や流産率には強い相関があり、男性では精子の数・運動性や男性ホルモン産生量にも影響しています。
他に、卵巣予備能のマーカー(抗ミューラー管ホルモン;AMH)や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症状の重症度や子宮内膜症の発症にも関連しています。
男女共にもっと関心を持つべき重要なビタミンと言えます。
文献)
1)Hum Reprod. 2018; 33: 65
2)Nutrients 2018, 10, 902
3)J Clin Endocrinol Metab 2008; 93: 1784
4)J Epidemiol. 2011; 21: 346.
5)Am J Clin Nutr. 2012; 96: 57.
6)Am J Clin Nutr. 2015; 101: 368
7)J Bone Mineral Research 2010; 25: 928-930
--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info
編集後記____________________________________________________________
冬はビタミンDサプリメントの利用価値が高まる季節です。ビタミンDは「妊娠力」と「赤ちゃんの骨」を支えています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1170
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,724部
・まぐまぐ: 1,984部
・合計部数: 3,708部(11月30日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。












