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妊娠しやすいカラダづくり No.1146 2025/6/15
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:新生児のビタミンD濃度はその後の精神障害疾患の発症リスクに関連する
・お知らせ:不妊相談会
・編集後記
最新ニュース解説 Jun, 2025__________________________________________
新生児のビタミンD濃度はその後の精神障害疾患の発症リスクに関連する
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新生児期のビタミンD濃度が低い子どもは、その後のADHDや統合失調症、ASD(自閉スペクトラム症)といった精神障害疾患の発症リスクが高いことがデンマークの大規模ケースコホート研究で明らかになりました(1)。
ビタミンDは、脂溶性ビタミンの一種で、長らく骨の健康に関連することが知られていましたが、この20年の研究で、妊娠や出産に極めて重要な役割を担っていることがわかってきました。
すなわち、ビタミンDが不足すると、不妊治療でも、自然妊娠でも妊娠率が低下したり、妊娠後の母子の健康にマイナスの影響を及ぼしたり、それだけでなく、出生児の長期間に渡る心身の健康にまでよくない影響を及ぼすことがわかってきたということです。
その一方、必要とされるビタミンDのほとんどは、紫外線にあたることで体内でつくられています。そのため、生殖年齢にある、ほとんどの女性で不足していることが知られています。
妊娠を希望される女性は、適度に日光にあたり、魚やキノコを積極的に食べることはもちろん、ビタミンDのサプリメントで補充することが現実的です。
◎どんな研究だったのか?
1981年から2005年の間にデンマークで生まれた全個人を対象とした集団の健康登録から、大うつ病性障害(抑うつ気分、興味の減退、認知機能の障害、睡眠障害や食欲障害などの自律神経症状を特徴とする精神疾患)や双極性障害、統合失調症、ADHD、ASD、神経性食欲不振症と診断された症例を抽出しました。
上記の精神障害疾患でない集団と合わせて、新生児乾燥血液スポット(生後まもない赤ちゃんの足の裏などから採取した血液をろ紙に染み込ませて乾燥させたもの)を用いて、ビタミンDの過不足のマーカーである25(OH)DとDBPの濃度を測定し、6つの精神障害の発症リスクとの関係を統計的に解析しました。
精神障害疾患は、大うつ病性障害(n=24,240)、双極性障害(n=1,928)、統合失調症(n=3,540)、ADHD(n=18,726)、ASD(n=16,146)、神経性食欲不振症(n=3,643)の6つの精神障害を発症した症例が抽出されました。
◎どんな結果だったのか?
25(OH)D濃度が低い赤ちゃんは、統合失調症やASD、ADHDの発症リスクが高いことがわかりました。また、DBPが低い赤ちゃんも統合失調症の発症リスクが高いことがわかりました。
この結果から新生児期のビタミンD濃度が精神障害の発症リスクと関連していることが示され、妊娠中からビタミンDを補充することで、新生児のビタミンD濃度を最適化することによって様々な神経発達障害の発生率を低減させる可能性が示唆されました。
◎出生時のビタミンDの濃度の影響は長期間に渡る
今回の研究で、新生児期のビタミンD濃度が低い子どもは、その後のADHDや統合失調症、ASDといった精神障害疾患の発症リスクが高いことがデンマークの国家プロジェクトにより明らかになりましたが、注目すべきは、その影響が長期間に渡ることです。
具体的には、出生時にビタミンD濃度が低いと統合失調症やADHD、ASDの発症リスクが20歳を過ぎても高かったのです。
要するに、出生時のビタミンDの濃度が低いことのマイナスの影響は取り返しがつかないと言っても過言ではないわけです。
くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、出生時にビタミンD濃度が低いと、必ず、精神障害疾患にかかるというわけではありません。
発症リスクが多少高くなるということです。
また、精神障害疾患発症のリスク因子は、決して、ビタミンD濃度だけでなく、遺伝的要因をはじめ、ビタミンD濃度よりも強く影響する因子は多く存在します。
そのため、神経質になることはありませんが、ビタミン濃度は母親として「どうにかすることが出来る」ことです。
出生時のビタミンDの濃度は母親の妊娠中のビタミンD濃度にリンクしますので、妊娠前からビタミンDの不足を避けることで、対策することが出来ます。
◎妊娠中のビタミンD補充と出生児の骨密度の関係
妊娠中からビタミンDを補充する利点は他にもあります。
それは、赤ちゃんの骨が丈夫になり、その効果も長く続くということです。
そのことを示す研究があり、母親が妊娠中にビタミンDサプリメント(1000IU/日)を摂取することで、生まれた子供の6-7歳時点の骨密度や除脂肪体重(体重から体脂肪を除いた筋肉、骨、内臓などの重さ)を増加させることを確かめています(2)。
研究は英国の3つの病院において、妊娠14週未満の単胎妊娠でかつ血中のビタミンD濃度が10-40ng/mLの女性1134名を対象に行われました。
参加者をランダムに2つに分け、一方には妊娠14-17週から出産まで、1000IU/日のビタミンDサプリメントを、もう一方にはプラセボ(偽の粒)を飲んでもらい、その母親から生まれた子供を6-7歳まで追跡調査し、骨の状態をDXAスキャン(二重エネルギーX線吸収測定法)によって測定、その数値をサプリメント群とプラセボ群で比較しました。
その結果、妊娠中にビタミンDを補充(1日に1000IU)することで、プラセボと比較して、生まれた子供の骨密度や除脂肪体重を増加させることがわかりました。
◎ビタミンDサプリメントが現実的
日本人の不妊治療中の女性を対象に行われた研究では、参加者の93.5%でビタミンDが不足していたという報告がなされています(3)。
日本人は特に紫外線を避ける傾向にありますが、必要な量の多くは紫外線を浴びることで体内でつくられます。
ビタミンDの充足のためには、意識して日に当たり、また必要に応じてサプリメントでの補充も検討するとよいかもしれません。
文献
1)Lancet Psychiatry 2025; 12: 410
2)Am J Clin Nutr. 2024; 120: 1134.
3)nutrients 2023; 15: 5059
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お知らせ__________________________________________________________
東京都調布市のウイメンズクリニック神野主催の第33回不妊相談会が2025年6月21日の土曜日に開催されます。
院長の神野正雄先生は、情熱をもって不妊治療、特に、高度生殖医療に取り組まれ、高齢による卵巣機能低下が原因の不妊症に対して、独自の考え方と方法で、高い実績を挙げておられる先生です。
当サイトのドクターに訊くでも、「質のよい卵を育むための生活習慣~高齢不妊との正しい戦い方」というテーマでインタビューさせていただき、記事にしています。
神野先生は、現代における不妊の主な原因は、晩婚化によって、お子さん望むようになったときには、女性は、既に、妊娠しづらい年齢に差し掛かっていることが多くなったこと。
また、現代に特有の不健康な生活習慣、すなわち、夜更かし、ストレス、歩かない生活、質の悪い食生活などが、インスリン抵抗性を招き、卵子や精子の質を低下させていることを指摘されています。
さらに、抗糖化機能性食品「ヒシエキス」が、ART反復不成功の高齢不妊患者さんの妊娠率を改善することを臨床試験により見出され、国内や海外の学会で発表され、論文にもなっています。
これまでの不妊相談会では、なぜ不妊になるのか、カップルで取り組むべきことはどんなことなのか、高度不妊治療とはどんなものなのかを解説しています。
個別相談も可能だそうです。
※先着28名まで。
◎第33回不妊相談会
日程:2025年6月21日(土)
時間:13:00~15:00
場所:ウィメンズクリニック神野
定員:28名
費用:無料
参加希望の方は下記あてお電話でお申込みください。
042-480-3105
・詳細はこちら
https://xs132599.xsrv.jp/setumeikai.html
・ウイメンズクリニック神野サイト
https://xs132599.xsrv.jp/index.html
編集後記____________________________________________________________
ほとんど(90%以上)の生殖年齢にある日本人女性はビタミンDが不足しています。妊娠前から出産まで、1日1000IU(25μg)のビタミンDのサプリメントを補充することを強くお勧めします。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1146
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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