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妊娠しやすいカラダづくり No.1157 2025/8/31
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:睡眠と不妊症の関係
・編集後記
最新ニュース解説 Aug, 2025_________________________________________
睡眠と不妊症の関係
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睡眠の質の低下やカップル間の睡眠リズムの不一致、睡眠時無呼吸症候群と原因不明不妊が関連することが、フランスで実施された研究で明らかになされました(1)。
最近、睡眠の質が妊娠しやすさに関連するという研究報告が相次いでなされています。
今回の研究は、不妊カップルと自然妊娠歴のあるカップルの睡眠の質や睡眠障害症状の有無や程度を比較し、睡眠の妊娠しやすさへの影響を調査しています。
厚労省の調査では日本人は他の国に比べて睡眠時間が短く、睡眠の質が低いと自覚している人が多いことがわかっています。
睡眠の質について意識を高めることが大切かもしれません。
◎どんな研究だったのか?
主観的な睡眠の質の指標と特発性不妊症との関連を調査すべく、2009年9月から2013年12月にかけて、多施設症例対照研究(ALIFERT study)が実施されました。
不妊男性94名と妊孕能のある男性85名、不妊女性95名と妊孕能のある女性86名、合計360名(平均年齢32.6歳)を対象としました。
睡眠に関する質問票(HD-43質問票&ピッツバーグ睡眠質問票に回答してもらい、睡眠日誌にも記入してもらい、就寝・起床時刻や入眠潜時(ベッドに入ってから実際に眠りにつくまでの時間)等の睡眠習慣、クロノタイプ(朝型/夜型)、不眠症や睡眠時無呼吸症候群、過眠症、周期性四肢運動症候群様症状(睡眠中に手足が周期的にピクピクと不随意に動く症状)等の睡眠障害症状が評価され、不妊の対象者と妊孕能のある対象者で比較されました。
◎どんな結果だったのか?
不妊男性は妊孕能のある男性参加者と比べて就寝時間が有意に遅く、主観的睡眠の質が低く、ベッドに入ってから実際に眠りにつくまでの時間が長いことがわかりました。
また、不妊女性は妊孕能のある女性と比べて起床時間が有意に遅く、ベッドに入ってから実際に眠りにつくまでの時間が長く、睡眠時無呼吸症候群の症状が有意に多い(22.5% vs 7.6%)ことがわかりました。
さらに、パートナー間の起床時間の差は不妊カップルにおいて有意に大きく(中央値60分 vs 30分)、妊孕能のあるカップルは、不妊カップルと比べて中程度の朝型傾向を示す頻度が高く、不妊カップルは妊孕能のあるカップルと比べてクロノタイプ(朝型/夜型)が異なる頻度が高く、不妊カップルでは、パートナーとの間で、睡眠リズムが異なるケースが多いことがわかりました。
最後に質問票による睡眠の質は、不妊カップルが妊孕能のあるカップルと比べて低かったことがわかりました。
このように、睡眠の質の低下や朝型か夜型のパートナー間での不一致、睡眠時無呼吸症候群症状と不妊症が関連していることが明らかになりましたた。
その一方、総睡眠時間と不妊の関連は認められませんでした。
不妊治療において睡眠評価を組み込むことが有用である可能性が示唆されました。
◎生体リズムを整える
今回の研究では、睡眠の長さではなく、睡眠の質やリズムが重要であることを教えてくれています。
睡眠の質やリズムを整えるポイントは早く寝て、早く起き、体内時計をリセットし、規則正しい生活リズムです。
私たち人間のさまざまな活動にはそれぞれのリズムがあり、お腹が空けば食べ、朝になると目が覚め、夜になると眠くなります。もっと詳しくみてみると、体温や血圧、ホルモンの分泌などにも、ぞれぞれに一定のリズムがあります。
たとえば、生殖に関連するところでは、女性には26日から34日の月経サイクルがあり、夜中の0時から2時にプロゲステロンが、10-14時に卵胞刺激ホルモンが、朝の4-8時に男性ホルモンの分泌量が多くなります。
要するに、人間の活動にはすべて適切な時(タイミング)があり、それらは、全て、私たちが意識するしないにかかわりません。
そして、それらの「時」は、生体リズムが奏でています。
いくつもの周期のリズムが備わっていますが、代表的なのは約24時間周期、すなわち、おおよそ1日周期なので、サーカディアン(慨日)リズムと呼ばれています。
そして、サーカディアンリズムをつくりだし、コントロールし、調整しているのが、前述の体内時計と呼ばれる、時計遺伝子です。
◎体内時計のリセット
体内時計のつくりだすサーカディアンリズムは、なぜか、24時間ではなく、24.5時間で、自然のサイクル(地球の自転リズム)よりも30分ずれているということになり、そのままにしておくと、24日で昼と夜が逆転してしまいます。
そのため、毎日、リセットして、体内時計をあわせてやる必要があります。
リセットの役割を担っているものはいくるかあるようですが、最も強力なのは、太陽の光を受けることです。
朝、起きて太陽の光を浴びることで、カチッと体内時計がリセットされます。
体内時計は光の影響を強く受けるので、深夜に明るい光を浴びたり、朝に太陽の光を浴びなければ、生体リズムは乱れてしまいます。
当然、睡眠の質や免疫力が低下したり、ホルモンのバランスが崩れてしまいます。生活のリズムが乱れると、体調を崩したり、病気を招いてしまう根本原因です。
積極的に体内時計を手入れし、ケアすることが妊娠、出産には大切です。
その具体的な方法です。
1)早く寝る:どんなに遅くとも23時迄には寝る。
2)早く起きる:起床後14-16時間後にメラトニンの分泌が始まります。
3)起床後太陽光を浴びる:出来れば45分以上散歩して。
4)朝食は必ず食べる。:起床後2時間以内に。
5)朝食にはバランスよく、タンパク質も必ず食べる:リセット効果が高まります。
6)以上のことを毎日同じ時間に行う:週末も同じリズムを維持します。
7)夜はスマホやタブレット、PCを見ない。
特に、早寝早起き、朝食、スマホが鍵になりそうです。
◎文献
1)Reprod Biomed Online 2025; 51: 105040
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編集後記____________________________________________________________
生活のリズムがポイントですね。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1157
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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