敵(ストレス)を知り、己を知れば、百戦危うからず

メンタルケア

ストレスに負けない生活
―心・身体・脳のセルフケア

著者:熊野宏昭(早稲田大学人間科学学術院教授)
出版社:ちくま新書
価格:799円
発売日:2007年8月

不妊治療にはストレスがつきものと盛んに言われていますが、不妊治療を受けているカップルへのメンタルケアの環境が整っているとは言い難い状況です。であれば、患者自身が正しい知識を得て、自分にふさわしいストレス対処法を身につけるのが現実的です。そして、ストレスへの適切な対処ができれば妊娠率の低下を避けられるかもしれません。そのためのガイドになるのがこの本です。

ストレスを正しく理解し、自分にふさわしいストレス対処法を身につけるために

ストレスと生殖機能とは密接に関係していることから、不妊治療中のカップルにとって、ストレスとうまくつきあうことは適切な治療を受けることと同じくらい大切なことだと思います。

ただ、ストレスという、「捉えどころのない」敵にどう対処すればいいのか、簡単ではありません。

そんな事情もあってか、世間では、ストレス対処法について、いろいろな情報がありますが、たいていは、気分転換的なものであったり、個人の体験だったり、一時的な気休めや精神論だったりすることが多いように思えてなりません。

だからと言って、ストレスとうまく付き合うのに、カウンセリングを受けたり、ましてや、メンタルクリニックにかかったりするほどのこともないでしょう(もちろん、「治療」が必要な場合もあるとは思いますが)。

そんな中、この本では、行動医学、脳科学の知見をもとに「自分でできるストレス・マネジメントの方法」を教えてくれます。

著者は熊野宏昭先生。プロフィールをみると、生活習慣病、心身症、パニック障害などの行動医学的研究、ストレスとリラクセーションの脳科学的研究がご専門とのこと。早稲田大学人間科学学術院教授、応用脳科学研究所所長、そして、日本認知・行動療法学会理事長でいらっしゃいます。

そうです、ストレス対処法のプロフェッショナルなのです。

まずは、「ストレス」とはなにかということを、身体的、心理的メカニズムから説明してくれます。また、ストレスはたまりやすい人とたまりにくい人がいますが、それはなぜなのかについてもわかりやすく解説されています。そして、ストレス対処法を、「力まず編」「避けず編」「妄想せず編」というキーワード別に紹介されています。

読み始めてすぐに、ストレスという言葉を普通に使ってはいるけれど、実際のところ、ストレスとはなにか?ということは、ほとんど理解できていなかったことに気付きました。また、ストレスとはいったいなんなのか、どのように受け止め、付き合っていくのがいいのか、読み進める中で、一々、納得でき、腑に落ちること、目から鱗の連続でした。

さて、ストレスで体のさまざまな機能や免疫力が低下するのも「生活習慣病」であり、生活習慣を変えれば、当然、ストレスの影響を軽減できるようになるはずだというのが私の理解です。

要するに、普段の考え方や行動のクセや習慣は、ストレスの受けやすさ、ストレスに対する強い弱いに大きな影響を及ぼすので、考え方や習慣を変えることによって、ある程度、ストレスに強くなれるということ。

また、自分にあった「リラクゼーション法」を、少しの時間でも、毎日、実践することで「リラックス貯金」がたまっていく、そして、継続することで「貯金」が増えていくと、ストレスに強い体質をつくることができるというものです。

考え方や習慣を変えるには、意識を変えることから始めなければなりません。意識を変えるためには、「動機」と「正しい知識」が必要です。不妊治療に伴うストレスとうまく付き合い、治療環境をよくしたい、これが動機ですね。そして、この本で正しい知識を得ることが出来ます。

大袈裟に聞こえるかもしれませんが「世界が変わる」と思います。

(推薦者: 細川忠宏)