子どもがほしい、をかなえる「もうひとつの方法」

その他

産まなくても、育てられます
不妊治療を超えて、特別養子縁組へ

著者:後藤絵里
出版社:講談社
価格:1,400円(税別)
発売日:2016年11月22日

この本は筆者からの次のような問いかけではじまります。『もし、あなたがいま、「子どもがほしい」と願い、不妊治療を続けているなら、いったん立ち止まり、考えてみてください。あなたは子どもを産みたいのでしょうか。それとも、子どもを育て、ともに過ごしたいのでしょうか。もしも、後者であるなら、不妊治療だけが願いをかなえる手段ではありません。この社会には、あたを親として必要とする子どもたちがいるのです。』その手段が「特別養子縁組」で、この本は、その特別養子縁組で子どもを迎える選択をした8組の夫婦の体験の紹介、そして、養子縁組についての実践的な情報がまとめられています。親になりたいすべてのカップルが読むべき本だと思います。

後々後悔しないためにも選択肢を知っておく

不妊治療を受ける女性の年齢は、年々、高くなっていて、2014年に日本で実施された体外受精周期の42.2%は40歳以上の女性に施されています。当然、1回あたりの成功率は低くなることから、治療が長期化し、最終的には子どもを授かることができないまま、治療を終えざるを得ない確率が高くなっています。

高齢、すなわち、卵子の老化に対する有効な治療法は存在しない中、取り得る選択肢としては、不妊治療でも、自然妊娠でも、授からなかったら子どもをもつことを諦めるか、卵子提供を受けるか、そして、特別養子縁組という方法で子どもを迎えるかの3つです。

言い換えると、「血のつながり」にこだわるか、「家族をもつこと」にこだわるかという選択肢になります。

もちろん、何にこだわり、どんな選択をするかは、それぞれの夫婦が決めることであって、決して、正解はありませんが、妊娠するという、ある意味で「目先」の目標達成に心がとらわれてしまい、後で、そんな選択肢もあったのかというような後悔をしないためにも、予め自分たちの取り得る選択肢を知っておくことはとても大切なことでしょう。

育ての親にも存在する年齢の壁

筆者が出会った特別養子縁組を希望する夫婦のほとんどは不妊治療経験者で、養子縁組への行動を起こすのは、治療の続行をあきらめてからというケースが多かったとのこと。

つまり、多くのカップルは「不妊治療」と「特別養子縁組」は同時に考える並列の選択肢ではなく、治療がうまくいかなかったら次を考えるという順列の選択肢だったというのです。

実際に治療のために通院をはじめると、治療によって子どもを授かることに、あらゆる、パワーを注ぐようになるわけですから、そうなるのも当然のことかもしれません。

ところが、不妊治療を諦めてから特別養子縁組を検討するようになってはじめて、そこにも「年齢の壁」があることに気づくケースが少なくないとのこと。

つまり、特別養子縁組で子どもを迎える場合に「年齢制限」が設けられていることが多くあるからです。

そのため、不妊治療と特別養子縁組は同時並行の選択肢として考えることが大切で、「心の切り替え」も早いに越したことはないというのが著者からのアドバイスです。

親になりたいと願うすべてのカップルへ

特別養子縁組で子どもを迎えた夫婦の体験を読んでみて、特別養子縁組というものがどういうものなのかということもさることながら、親になるということはどういうことなのかということについても、改めて、考えさせられ、気づかされることが多々ありました。

そういう意味でも、現在進行形で不妊治療を続けているカップルにとって、この本を読むことは、たとえ、特別養子縁組という方法を選択しても、しなくても、立ち止まって、自分たちは本当はどうしたいのかについて夫婦で考え直す機会になることは間違いありません。

そして、そのことは、後悔しない不妊治療にも繋がると信じます。

親になりたいと願う、すべてのカップルが読んでおくべき本だと思いました。

(推薦者: 細川忠宏)