卵子が今持っている能力を最大限に引き出す努力は大切

セルフケア

ママになるための『みおごはん』

著者:グリーンフィールズ
出版社:グリーンフィールズ
価格:1,620円(税込)
発売日:2017年7月20日

「みおごはん」とは、この本の監修者である鳥取県米子市の「ミオ・ファティリティ・クリニック(MFC)」の院内食のことで、タイトルにある通り「ママになるため」のごはん、すなわち、お子さんを望まれる女性、そして、まだ見ぬ赤ちゃんの心と身体の健康によい食事のことです。MFCの院長の見尾先生は、今や最先端の生殖医療の臨床や研究になくてはならない「タイムラプスシネマトグラフィー」という受精卵の発育過程を連続的に観察できる装置の開発に多大な貢献をした世界的にも有名な先生です。「みおごはん」そのものは、「ごはんと一汁三菜」を基本とした和食なのですが、この本の最大の特長と価値は、見尾先生のこれまでの診療や研究の経験を基に、赤ちゃんを望む女性の食事やライフスタイルについて、本当に大切なことを教えてくれていることだと思います。

「ご飯」と「一汁三菜」を基本とした和食をベースにした食べ方

受精前後の子宮内の栄養環境は、その後の妊娠や出産だけでなく、子どもの出生後の体質にまで影響を及ぼすことが、多くの研究でわかってきました。そして、子宮内の栄養環境は、当然、女性の食事で決まるわけで、あらためて、お子さんを望まれる女性にとっての食事の大切さに思い知らされます。

では、どんな食事がいいのかについては、今や、「妊活食」というキャッチで、溢れんばかりの情報が流されていて、中には不妊治療に携わるドクターが監修しているという触れ込みのものもあります。

ところが、それらのほとんどは、栄養素の働きについての解説であったり、妊娠によい食材や食品の列挙であったり、妊活メニューの紹介であったり、また、その時々の流行を反映し、◯◯を制限したり、◯◯ばかり食べることを推奨するような、言ってみれば、コマーシャルな「パーツ」の情報が中心になっているように思えてなりません。

現実的に考えてみると、パーツの知識を増やしてみても、毎日の献立に反映されてはじめて価値になるわけで、妊娠によい食材や食品、そして、妊活メニューを、毎日、食べ続けるわけにもいきません。それどころか、なにかを制限したり、積極的に食べることで、かえって、偏った食べ方になってしまいかねません。

大切なことは「パーツ」ではなく、「全体」の食べ方であり、取り組み方です。

本書では、卵子の質の低下を促進させないアンチエイジングな食べ方として、「ご飯」と「一汁三菜」を基本とした和食をベースにした食べ方を提示しています。

そして、食べることは、生活、そのものであり、食を見直すことは、ライフスタイルを見直すことに他なりません。本書では、チェックリストで普段の食事と生活を振り返り、どのように改善するのがよいのか、見直すポイントがわかるようになっています。

まずは、食べ方やライフスタイル全体を見直すことなしに、各論を頑張って実践しても、得られる効果は限られてきます。そういう意味において、「みおごはん」は食べる人のことを真剣に考えてつくられているということにも頷けました。

旬を大事においしくいただく

具体的レシピは、季節ごとに紹介されているのが本書の特長の1つで、それぞれの季節の「旬」を大事にしようという考えがよくわかります。

よく昔に比べて、最近の野菜や果物に含まれる栄養素は減っているということが言われることがありますが、よくよく調べてみると、それほど単純なことではなく、一年中、食べられるようになったので、旬以外の季節の野菜や果物に含まれる栄養素が少ないことが大きいようです。

要するに、「旬」の食材には、その食材の本来の栄養素が含まれているということで、「旬」の食材を選んで食べることは、栄養的にも、滋養的にも、味的にも、ベストであるということです。

そういう意味で、季節ごとにレシピを紹介していることはとても理になかっていることだと思います。

そもそも、「みおごはん」は、「旬」の食材を当然にごとく選んでいるということなのでしょう。

つくること、食べることを楽しむことが身体を大切にすることになる

見尾先生は、「おわりに」で「食事をつくることを楽しんで、食べることを楽しむことが、体の内側から生命力を高めることにつながると、僕は思っています。」と述べられています。

代替医療者や料理家の言葉ではなく、最先端の生殖医療の臨床や研究に携わる、世界的にも有名なドクターの言葉であることに大きな意味があると感じます。

また、「食生活の改善に取り組まれ、こもりがちだった暗い雰囲気から素敵な笑顔が戻り、前向きにがんばった結果、赤ちゃんを授かった患者さんにもたくさん出会ってきました。」とも書かれています。

そして、こうも述べられています。「日々の食事に配慮することは、健康になるだけでなく、自信や行動力、気持ちの持ち方など、人生のすべてにつながります。老化してしまった卵子が若返ることはありませんが、卵子が今持っている能力を最大限に引き出す努力は大切です。」

「みおごはん」は、よくある、急ごしらえの企画なんかでは、決してなく、クリニックの開業以来、「赤ちゃんがほしいと願っている方に食べてもらいたい」、「食事を通して、ご家族皆さまが健やかに過ごされるように」、そんな願いを込めて取り組んでこられたというものです。

見尾先生が、患者さんのことを大切に思われ、「その時々を大切にして、一人ひとりが後悔のない生き方をしてもらいたい」という、先生の願いが伝わってきます。

ママになりたいと思うすべての女性に読んでもらいたいと思う本です。

(推薦者: 細川忠宏)