妊娠前の脂質や脂溶性ビタミン濃度と体外受精治療成績の関係

妊孕性に影響する因子

2019年10月14日

Reprod Biomed Online 2019; 39: 665

脂質や脂溶性ビタミン、カロテノイドの成分の構成は、より規模の大きい検討が必要ではあるものの体外受精後の出産率に関連することがアメリカで実施された前向き研究で明らかになりました。

ニューヨーク州立大学アルバニー校の研究者らは、採卵時の血清中の脂質や脂溶性ビタミン、カロテノイドの濃度と治療成績の関係を検討すべく前向きコホート研究を実施しました。

160名のIVF女性患者の採卵時に脂質(リン脂質や総コレステロール、HDL、LDL、中性脂肪)や脂溶性栄養素(α-トコフェロール、δ-,トコフェロール、γ-トコフェロール、レチノール、βカロテン、αカロテン、βクリプロキサンチン、ルテイン、リコペン)の濃度を測定し、治療成績との関連を解析しました。

その結果、中性脂肪の1標準偏差の増加は中性脂肪濃度が平均であった女性に比べて生産率が46%低下(RR 0.54; 95% CI 0.33 to 0.90)する一方で、αトコフェリールの1標準偏差の増加はαトコフェロール濃度が平均であった女性に比べて生産率が61%増加する (RR 1.61; 95% CI 1.11 to 2.36).ことがわかりました。

また、βカロテンは非直線的に出産率と関連し、低いβカロテン濃度は低い出産率に高いβカロテン濃度は良好な出産率に関連しました。

これらのことから、さらなる検討が必要と考えられるけれども妊娠前の脂質や脂溶性栄養素の成分構成はその後の体外受精の治療成績に関連しました。

コメント

脂質や脂溶性栄養素は生殖機能においてさまざまな役割を担うことからART成績との関連が注目されています。

たとえば、HDLは排卵前の卵巣の卵胞にコレステロールを運び、ステロイドホルモン産生や抗炎症、抗酸化に関与し、LDLや中性脂肪は排卵後のホルモン合成や胚発育や胎児の成育に、それぞれ、関与していることが知られています。

これまで、脂肪酸や脂溶性栄養素単体とART成績との関連について調べられた研究はありましたが、脂質や脂溶性栄養素のとの関連は検討されていないことから今回の研究が実施されました。

脂質や脂溶性ビタミン、カロテノイドの成分構成において、出産率とビタミンEのαトコフェロールはポジティブに、中性脂肪はネガティブに関連するというデータが得られています。

さらなる検討が必要としながらも脂質や脂溶性栄養素の構成はART成績に関連すると結論づけています。