少量から中程度の飲酒と不妊治療成績

妊孕性に影響する因子

2019年07月15日

Hum Reprod 2019; 34: 1334.

不妊治療を受けている女性の週に少量から中程度の飲酒や深酒は、人工授精や体外受精、顕微授精の妊娠率や出産率に影響しないことはが、デンマークの研究で明らかになりました。

オーフス大学病院で2010年1月から2015年8月に不妊治療受けた1708組のカップルに治療開始前に週あたり平均的な飲酒量を研究開始時と以後の治療開始時に質問票にて回答してもらい、その後の人工授精1511周期、体外受精/顕微授精2870周期、そして、凍結融解胚移植1355周期の妊娠率や出産率との関係が調べられました。

飲酒量はアルコール12g(デンマーク基準)を1単位として、週あたりのビールやワイン、蒸留酒の飲酒量を、飲まない、1-2単位、3-7単位、7単位以上の4段階にわけ、1-2単位を少量、3-7単位を中程度、7単位以上を多量としています。

解析の結果、週あたり少量から中量の飲酒は人工授精やARTの妊娠率や出産率と関連しませんでした。

人工授精を受けた女性においては、週あたりの飲酒量が1-2単位、3-7単位、7単位以上の女性の飲酒しない女性に比べた出産の相対リスク(95%CI)は、それぞれ、1.00 (0.66; 1.53)、1.20(0.76; 1.91)、1.48(0.56; 3.93)と、統計学的に有意な差ではありませんでしたが、週あたりの飲酒量が多くなるほど出産率は高くなりました。

同様に、体外受精や顕微授精を受けた女性においては、週あたりの飲酒量が1-2単位、3-7単位、7単位以上の女性の飲酒しない女性と比べた出産の相対リスク(95%CI)は、それぞれ、 1.00 (0.83; 1.21)、0.95 (0.75; 1.20)、0.89 (0.53; 1.51)と、週あたりの飲酒量と出産率は関連しませんでした。

また、初めての人工授精やART治療周期で出産に至る確率は、治療開始前の月の深酒の回数と関連しませんでした。

これらのデータから、週あたりの少量から中程度の飲酒は不妊治療の治療成績にはマイナスの影響を及ぼさないようです。

コメント

飲酒の不妊治療成績への影響については多くの研究報告がなされていますが、これまではマイナスの影響を及ぼすというものもあえば、及ぼさないというものもあり、結論は相反しています。

ただし、最近の規模の大きい研究では、影響しないと報告されており、今回の研究も同様の結果となっています。

そのため、たとえ、妊活中であったり、不妊治療を受けていたししても、飲酒についてはそれほど神経質に考えなくてよいようです。

ただし、妊娠後は控えるべきです。