ビタミンDとART治療成績:メタ解析

生活習慣・食事・サプリメント

2017年11月24日

Human Reproduction

ビタミンDが充足している女性は不足、或いは欠乏している女性に比べて高度生殖補助医療(ART)の出産率が高いことがイギリスで実施されたメタ解析で明らかになりました。

バーミンガム大学の研究者らは、血中ビタミンD濃度がART女性患者の出産率に関連するのか否かを評価すべくメタ解析を実施しました。

・ビタミンDの過不足
11件の観察研究(参加者総数:2700名)を解析した結果、ビタミンDが充足していた女性患者は25.7%、不足は45.3%、欠乏は34.6%でした。

・出産率
7件の観察研究(参加者総数:2026名)を解析した結果、ビタミンDが充足していた女性患者は、不足、もしくは欠乏していた女性患者に比べて出産率が高かった(OR 1.33[1.08-1.65])。

・陽性反応
5件の観察研究(参加者総数:1700名)を解析した結果、ビタミンDが充足していた女性患者は、不足、もしくは欠乏していた女性患者に比べて妊娠率(陽性反応による)が高かった(OR 1.34[1.04-1.73]。

・臨床妊娠率
11件の観察研究(参加者総数:2700名)を解析した結果、ビタミンDが充足していた女性患者に比べて、不足、もしくは欠乏していた女性患者に比べて妊娠率(心拍確認による)が高かった(OR 1.46[1.05-2.02]。

・流産率
6件の観察研究(参加者総数:1635名)を解析した結果、ビタミンD濃度は流産率に関連しなかった(OR 1.12[0.81-1.54]。

以上のデータから、ART女性患者にとって、血中のビタミンD濃度の充足は良好な治療成績に有意に関連することがわかりました。

コメント

ビタミンDはビタミンと言われていますが、紫外線を浴びることで体内で合成されること、細胞の核内受容体に結合して作用することからステロイドホルモンとする専門家もいます。最近、ビタミンDが妊娠、出産に際して重要な役割を担っていることが多くの研究でわかってきました。

ビタミンDとART治療成績との関係については、ビタミンDの血中や卵胞液中の濃度がART治療成績と関連するという研究報告もあれば、関連しないという報告もあり、明確な結論が出ていませんでした。

今回のメタ解析では出産率も妊娠率もビタミンD充足女性のほうが不足、もしくは欠乏女性よりも良好だったというものでした。

いずれも観察研究であることから、最終的な結論は、今後、ランダム化比較対照試験により、ビタミンDの有効性が検証されるまで待たなければなりません。

ただし、ビタミンDは妊娠後の母子の健康リスクや出生後の子どもの健康にも関連し、また、今回の研究でも明らかになりましたが生殖年齢にある女性のビタミンD不足の蔓延は日本人女性でも例外ではありません。

そのため、ビタミンDの血中濃度のマーカーである25(OH)Dを測定し、不足、もしくは、欠乏していればビタミンDのサプリメントを補充し、充足レベルに高めておいたほうがよいかもしれません。

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