職場での肉体的負担や夜勤と卵巣の予備能や反応性の関係

生活習慣・食事・サプリメント

2017年02月23日

Occup Environ Med

夜勤や肉体的負荷のかかる仕事は卵巣年齢や排卵誘発剤への反応の低下を招くおそれがあることがアメリカのハーバード大学とその関連病院のマサチューセッツ総合病院の共同チームによる研究(EARTH Study)で明らかになりました。

EARTH Studyに参加した473名の女性に、質問票で職場での肉体的な負荷や勤務時間帯を調べ、卵巣予備能(年齢)や排卵誘発剤への卵巣の反応性との関連を調べました。

職場での肉体的負荷については、重いものを持ち上げたり、移動させたりする頻度を「全くない、時々、よくある」の中から、また、そのレベルを「低い(ほとんど座っている事務)、中程度(軽い荷物を持ち上げたり、移動させる、長時間歩く)、高度(重い荷物を持ち上げたり、移動させる、激しい肉体労働)」から、それぞれ、選択してもらいました。

卵巣予備能の目安として胞状卵胞数や月経周期3日目のFSHを、また、排卵誘発剤への卵巣の反応性の目安として、採卵総数や成熟卵数を、それぞれ、測定しました。

その結果、影響を及ぼす要因を調整した後、職場で重い物を持ち上げたり、移動させたりすると回答した女性は、そうでないと回答した女性に比べて、採卵数は1個、成熟卵数は1.4個、胞状卵胞数は0.7個、それぞれ、少なかったことがわかりました。

そして、職場での肉体的負荷が高くなると卵巣予備能や反応性が低下するという関係は、年齢が37歳以上、BMIが25以上の女性でより強くなることがわかりました。

また、夜勤のある女性は夜勤がない女性に比べて、成熟卵数が平均で2.3個少ないことがわかりました。

いずれの職場環境も3日目FSHやピークエストロゲンレベルには関連しなかった。

夜勤があったり、肉体的な負荷のかかる職場で働いたりする女性は、調節卵巣刺激後の成熟卵の採卵数が少なかったことから、それらの職場環境は、妊孕能にマイナスの影響を及ぼす可能性があることはわかりました。

コメント

仕事と不妊治療の「両立」は関心の高いテーマですが、その内容は、主に、時間的なやりくりのようです。仕事の内容や勤務形態が女性の妊娠する力にどのように影響を及ぼすのか、ハーバード大学の研究チームは、これまで2つの研究を実施し、その結果を報告しています。

一つは、夜勤や長時間勤務、肉体的負荷と月経不順の関係、もう一つは、長時間(週40時間以上)勤務と妊娠するまで要する期間の関係についての報告でした。

いずれも夜勤や長時間勤務、肉体的負荷は、月経不順や妊娠するまでの期間が長くなることと関連し、夜勤や職場での肉体的な負荷は、女性の生殖機能にマイナスの影響を及ぼすというものでした。

ただし、いずれも、看護師を対象にした大規模の疫学調査「Nurese's Health Study3(看護師健康調査3)」のデータを解析したもので、研究デザインから、直接、妊娠する力との関係を調べることはできませんでした。

そこで、今回は、関連病院で体外受精や顕微授精に臨むカップルを対象にし、直接、妊娠率に反映される卵巣予備能や排卵誘発剤への反応性のマーカーとの関係を調べたというわけです。

結果は、夜勤や肉体的負荷は胞状卵胞数や採卵数、成熟卵数の減少に関連するというものでしたが、注目すべくは、そのことは年齢が37歳未満やBMIが適正範囲であれば、それほどの影響はないが、37歳以上や肥満の女性には、その影響がより明確にみられたということです。

つまり、加齢や肥満は、女性の妊娠する力を低下させますが、そこに夜勤や重労働が加わると、低下傾向に拍車がかかるということになります。