妊娠中のオメガ3脂肪酸摂取と子のぜんそく発症リスク

生活習慣・食事・サプリメント

2017年01月04日

N Engl J Med 2016; 375: 2530-9

妊娠中のオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)のサプリメントは出生児のぜんそくの発症率を低下させることがデンマークの研究で明らかになりました。

コペンハーゲン大学の研究グループは妊娠中のオメガ3脂肪酸のサプリメント摂取が出生児のぜんそくを抑える効果があるかどうかを調べるべく、コペンハーゲン小児喘息前向きコホート研究2010(Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010 :COPSAC2010)に参加する妊娠中の女性とその出生児を対象に無作為比較対照試験を実施しました。

妊娠24週の736名の女性をランダムに2つのグループに分け、一方のグループには1日に2.4グラムのオメガ3脂肪酸(魚油/EPA55%、DHA37%)を、もう一方のグループにはプラセボ(オリーブオイル)を、出産1週間後まで摂取してもらい、出生児を5年間追跡調査し、ぜんそくの発症率を調べました。最初の3年間は被験者も担当医も、その後の2年間は担当医のみ、どちらのグループかは知らせれませんでした。

その結果、695名の出生児の3歳時点でのぜんそくの発症率はオメガ3脂肪酸グループで16.9%、プラセボグループで23.7%で、オメガ3脂肪酸摂取は発症率を30%低下させました。

また、オメガ3脂肪酸サプリメントのぜんそく発症率低減効果は、試験開始時のEPAやDHAの血中濃度が低い(下位3分の1)女性の出生児で最も大きく(摂取グループ 17.5% 対 対照グループ 34.1%)、発症率は半分に低下しました。

この研究によって、妊娠後期のオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)のサプリメント摂取は出生児のぜんそくの発症率を30%低下させることが示されました。

コメント

今回の研究は、妊娠後期のオメガ3脂肪酸のサプリメント摂取が出生児のぜんそくの発症リスクを低下させる効果があるのか、無作為比較対照試験で確かめられています。

結果は、発症リスクが低下したというものでしたが、特筆すべきは、DHAやEPAの血中濃度が低い女性ではサプリメントの効果が高く、反対に、元々、DHAやEPAの血中濃度が高い女性ではサプリメントの効果はそれほどはなかったということです。

つまり、普段、あまり魚を食べない女性にとってオメガ3脂肪酸のサプリメント摂取はとても意味のあることですが、日頃から魚をよく食べている女性はサプリメントは不要ということになります。

要するに、妊娠前、妊娠中は魚を食べて、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸をしっかり摂取することが大切だということです。

妊娠中のオメガ3脂肪酸は子の出生後のアレルギー予防だけでなく、脳の発育にもよい影響を及ぼしたり、母親の産後うつの予防にもなったりするという研究報告も多数あります。

さらには、妊娠を望む女性には卵巣機能の向上や子宮内膜症の症状の緩和も期待され、母乳にオメガ3脂肪酸が多い母親の子どもはアレルギーを発症しにくいと言われていることから、妊娠前から妊娠中、産後の授乳期までオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取する意味がありそうです。