3つの運動スタイルの妊娠させる力への影響:無作為比較対照試験

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2016年12月13日

Reproduction 2017; 153: 157-174

運動習慣のない男性は、週に3-5回の運動を始めると3ヶ月から半年で精液所見が改善され、また、運動は中程度の強度で継続する方法が高強度の強度の運動よりも効果的であることがイランで実施された無作為比較対照試験で明らかになりました。

イラン・オルーミーイェ大学の研究グループは、どのような強度と頻度の運動が精子の質の改善に有効なのかを調査するために無作為比較対照試験を実施しました。

健康な男性397名の中から運動習慣のない男性280名を選別し、無作為に以下の4つの運動スタイルのグループに分け、24週間、それぞれの運動を行ってもらいました。

1)MICT群(中程度の強さの継続的トレーニングを行う)
2)HICT群(高強度の強さの継続的トレーニングを行う)
3)HIIT群(高強度の強さのインターバルトレーニングを行う)
4)対照群(運動しないグループ)

運動開始前、運動開始12週間後、24週間後、そして、運動終了7日後、30日後に精液検査や炎症マーカー、酸化ストレスマーカー、抗酸化マーカー、精子DNA損傷度を測定し、対照群(運動をしないグループ)と比較しました。尚、開始前にはすべての項目において、4つのグループ間に違いはありませんでした。

その結果、運動を行った男性は、3つのグループとも対照群の男性に比べてす精液所見のすべての項目で有意な改善がみられました。

そして、24週間の運動終了後、中程度の強さの継続的トレーニングを行ったMICT群が対照群に比べて、精液量が8.3%増加、高速運動率が12.4%、精子形態率が17.1%、精子濃度が14.1%、そして、総精子数が21.8%と、改善率が最も高く、終了後の低下率が最も低いことがわかりました。

このことから、運動習慣のない男性は、運動、それも中程度の強度の継続的な運動を行うことで精子の質が改善される可能性があることがわかりました。

コメント

妊娠率や出産率は、卵子だけでなく、精子の質も関与することが、いくつもの研究で明らかになってきました。現実問題として、既に卵巣内に存在する卵子に比べて、毎日、つくられている精子の質を改善することを目指すのがよいのかもしれません。

そのために1つの方策として、運動習慣がありますが、これまでの研究では精子の質との関係が明確に示されてはいませんでしたが、今回、運動による精子の質の改善効果を運動スタイル別に確かめた初めての無作為比較対照試験が実施されました。

その結果、運動を習慣的に行うことは精子の質を改善し、特に、中程度の強さの継続的な運動、たとえば、ウォーキングや水泳のような有酸素運動が最も効果的であることが示されました。

そして、半年後に運動を止めた後でも、その効果がしばらくは持続することも確かめられました。

MICT群の具体的な運動内容は、最初の12週間は中程度の強さの有酸素運動(歩行、もしくは、ジョギング)を1日に25-30分を週に3-4日、その後、1日に40-45分、週に4-6日に増やしました。また、運動前と後には10-15分のウォーミングアップとクールダウンを行うというものです。

研究グループでは、今後、男性の運動習慣のパートナーの女性の妊娠しやすさにどのように影響を及ぼすのかを調査するとのことですので、注目してみたいと思います。

運動は心身の健康にも寄与しますので、積極的に取り組みたいものです。

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