PCOSへのレスベラトロール補充効果

生活習慣・食事・サプリメント

2016年10月24日

J Clin Endocrinol Metab

レスベラトロールの補充は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)女性のテストステロン(男性ホルモン)やDHEAs(DHEAサルフェート)などのアンドロゲンレベルを低下させることがポーランドで実施された試験で明らかになりました。

ポズナン医科大学の研究グループは、レスベラトロールのPCOS女性への効果を調べることを目的に二重盲検無作為比較対照試験を実施しました。

ロッテルダム基準でPCOSと診断された女性30名を、ランダムに1日1,500mgのレスベラトロール摂取グループとプラセボ(偽薬)摂取グループに分け、3ヶ月間の摂取後、その前後のホルモンレベルや糖代謝を比較しました。

その結果、レスベラトロール摂取グループでは総テストステロンが23.1%、DHEAsでは22.2%、それぞれ、有意に低下しました。また、インスリン感受性の評価指標(Matsuda-DeFronzo Index)は66.3%増加し、有意な改善がみられました。

それに対して、プラセボグループでは、総テストステロンが2.9%、DHEAsは10.5%、それぞれ、増加しました。

FSHやLHレベル、脂質、炎症マーカー、血管内皮機能には有意な変化は認められませんでした。

このことから、レスベラトロール補充による卵巣や副腎におけるアンドロゲン(男性ホルモンの総称)産生の抑制作用、そして、インスリン感受性の改善作用が示されました。

コメント

排卵障害の原因として最も多いのがPCOSで、生殖年齢の女性の100人に1人の割合でみられる症候群と言われています。日本産婦人科学会では、多嚢胞性卵巣であること、排卵しづらい、あるいは、排卵しないという月経異常を伴うこと、そして、血中男性ホルモン値が高い、または、LH(黄体化ホルモン)値が高いこと、この3つをすべて満たすことが、PCOSの診断基準とされています。

脳の視床下部からのホルモンの分泌異常によるものと考えられていましたが、アンドロゲン過剰やインスリン抵抗性もPCOSの特徴であることから、LH高値やアンドロゲン過剰、インスリン抵抗性が相互に作用し、いずれがPCOSの原因なのか、あるいは、PCOSの結果なのか、一筋縄ではいかないようです。

いずれにしても、そのような状態が卵胞発育障害や卵質低下、着床環境悪化を招き、排卵障害や無排卵、体外受精の治療成績の悪化、流産のリスクを上昇させることになります。それだけでなく、妊娠後の妊娠糖尿病、将来の糖尿病や心疾患などの生活習慣にかかるリスクもPCOSでない女性に比べて高いことがわかっています。

そのため、不妊治療では通常の排卵誘発剤を使った排卵誘発だけでなく、食生活も改善や運動療法、糖尿病薬など、それぞれの状態に応じて、妊娠、出産を目指すことになります。

今回の研究は、過去にマウスを使った実験でレスベラトロールには卵巣や副腎でのアンドロゲンの分泌抑制作用があることを確かめたことから、PCOS女性での効果を調べる目的で実施されました。

結果はアンドロゲン抑制作用やインスリン抵抗性改善作用があったというものです。その効果はメトフォルミン(糖尿病薬)に匹敵、もしくは、上回るレベルだったとのこと。

ただし、レスベラトロールを1日に1,500mgという高用量で、サプリメントで摂取した場合のコストを考えると現実的ではありません。

いずてにしても、PCOSでは「健康状態」のレベルを高めることが大切です。