卵巣機能低下女性の年齢と移植胚数別出産率

不妊改善・生殖医療関連

2015年09月26日

Fertility and Sterility

卵巣機能が低下した女性でも、高度生殖補助医療において卵巣刺激で3個以上の移植可能な胚が得られれば、40歳を超えてもある程度の治療成績が期待できることが、アメリカの研究で明らかになりました。

ニューヨークの生殖医療専門クリニック(Center for Human Reproduction)で、卵巣機能が低下し、排卵誘発剤で卵巣刺激を行っても少数の卵胞しか発育してこないプアーレスポンダー(低反応性例)の女性患者483名の768治療周期の治療成績を調べました。

尚、プアーレスポンダーの定義は、(1)排卵誘発しても卵が2、3個しか育たない、(2)年齢が40歳以上である、(3)AMHが1.1ng/mL未満であるうちの2つ以上があてまはる周期、としています。

治療は、テストステロンが標準値になるよう6週間DHEAを1日75mg服用し、それに加えてミトコンドリアの機能改善を目的にコエンザイムQ10を1日900mg服用、そして、FSHを300~450単位で排卵誘発を行いました。

さらに、高齢女性によくある早期黄体化を防ぐためにIVM(未熟卵体外受精)を実施しました。

その結果、768治療周期のうち、27%の205周期は排卵誘発しても卵が育たず採卵出来ませんでした。また、採卵できた563周期のうち、30%の166周期は受精しなかったり、卵割が途中でストップしたりして移植胚が得られずに胚移植が出来ませんでした。

着床前診断を実施して選択的単一胚移植を行った16周期を除いた381周期の胚移植後の年齢と移植胚数別の出産率は以下の通りです。移植は全て新鮮胚で凍結は行っていません。すなわち、非選択的単一胚移植、非選択的二個胚移植、そして、非選択的に三個以上の胚移植の3パターンで、得られた胚をすべて(非選択的に)新鮮胚で3日目の初期胚移植しています。

*数値は「出産数/移植数(%)」
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42歳までは胚移植数の違いはそれほど大きくありませんが、43歳以上になると1個や2個に比べて3個以上の出産率が高いことがわかりました。

このことから、42歳までは、成功のために複数の胚を移植する必要性はそれほど高くないが、43歳以上になると移植する胚の数が物を言うようになるということになり、40歳以上でも卵巣刺激で3個以上の胚移植可能な受精卵を得られれば、治療を続ける意義があるとしています。

コメント

今回の試験では、治療をはじめても、約4分の1は卵が育たなかったために採卵ができていません。その上、採卵できても、その後、約4分の1が受精しなかったり、受精しても卵割が途中で止まってしまったりして、移植胚が得られず、胚移植できていません。そのため、胚移植できたのは約半分です。

つまり、年齢が高くなり、卵巣機能が低下してくると、たとえ、治療をはじめても、必ずしも採卵、移植に進めるとは限らないことを念頭に置いておく必要があると言えます。

また、年齢別の妊娠率や出産率を見る時に注意しなければならないのは分母が治療周期あたりか、採卵あたりか、移植あたりかで数値がずいぶん変わってくることも知っておかなければ、治療成績を正しく理解することができなくなってしまいます。

結論として、40歳以上でも卵巣刺激で3個以上の胚移植可能な受精卵を得られれば、治療を続ける意義があるとしています。

体外受精は卵子の老化を治療するものではなく、体外受精を受ける意味は排卵誘発によって、複数の受精卵を得て、妊娠できる卵子との出会う可能性を大きくすることです。

そのため、卵管や男性側に問題がない場合、もしも、排卵誘発しても1個しか受精卵を得られなければ、体外受精でも、人工授精でも、自然妊娠でも、妊娠、出産に至る確率はそれほど変わらないということになります。であれば、体外受精を行う意味はそれほどなく、高齢だからという理由だけで体外受精が最適な治療法とは言えず、人工授精を繰り返したり、性交回数を最大に増やしたりするほうがコストパフォーマンスが高くなると言えるもかもしれません。

反対に高齢でAMHが低値でも、3個以上の受精卵が得られるのであれば、積極的に体外受精を継続する価値があると言えます。