成人後の体重増が妊娠しやすさに及ぼす影響

妊孕性に影響する因子

2015年09月16日

Obstetrics&Gynecology

成人後の体重増、現在の過体重や肥満、18歳時点の低体重(やせ)は、いずれもわずかながら妊娠力の低下に関連することがアメリカの研究で明らかになりました。

ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、「看護師健康調査3(2010-2014)」に参加し、妊娠を希望する女性看護師1950名を対象に、18歳時点と現在のBMI、その変化の度合いと妊娠しやすさ(妊娠までの期間)の関係を調べました。

18歳時点と現在のBMIを、18.5未満を低体重(やせ型)、18.5-24.9を標準体重、25-29.9を過体重、そして、30以上を肥満の4つのグループに分けました。また、18歳から現在の体重の変化を、4kg以上の減少、体重維持(±4kg)、4-9.9kgの増加、10-19.9kgの増加、そして、20kg以上の増加の5つのグループに分けました。

12ヶ月後に妊娠していなかったのは16%、24ヶ月でも妊娠していなかったのは5%でした。

18歳から現在までの体重の変化と妊娠までの期間と関連し、18歳からの体重増加が5kg増えるごとに妊娠までの期間が5%長くなりました。そして、体重を維持していたグループと比べると、4kg以上減少したグループは妊娠までの期間が15%(0.5ヶ月)短くなり、同様に、4-9.9kg増加グループは8%(0.3ヶ月)長くなり、10-19.9kg増加グループは9%(0.3ヶ月)長くなり、20kg以上の増加グループは40%(1.4ヶ月)長くなりました。

また、現在のBMIも妊娠までの期間に関連し、過体重や肥満のグループは標準体重グループに比べて、妊娠までの期間が13%(0.5ヶ月)、28%(1ヶ月)、それぞれ、長くなりました。

さらに、18歳時点のBMIと妊娠までの期間はU字型の傾向がみられ、18歳時点で標準体重であったグループに比べて、18歳時点のBMIが18.5未満のやせ型であったグループは妊娠までの期間が17%長く、過体重グループ、肥満グループは、7%、22%、それぞれ長いことがわかりました。ただし、現在のBMIの影響を補正した結果、やせ型グループのみが妊娠するまでの期間が25%長いことがわかりました。

これらのことから、成人後の体重増加や現在の過体重、肥満、18歳時点のやせ型は妊娠までの期間がわずかながら長くなることがわかりました。

コメント

ハーバード大学による女性看護師を対象にした大規模疫学調査「Nurses' Health Study 3(看護師健康調査3)」のデータから18歳時点と現在のBMI、そして、その差と妊娠までの期間の関係を調べています。

やせ過ぎ、太り過ぎは妊娠しにくくなることは、広く知られていますが、単に、現在の体重やBMIだけでなく、18歳以降の体重の変化も妊娠する力に影響するようです。

もう1つ、18歳時点でやせ過ぎていた女性も注意が必要なようです。

また、今回の研究で特筆すべきは、それらの影響が具体的な期間で表されてることです。

たとえば、体重を維持していた女性に比べ、4kg以上減少した女性は妊娠までの期間が半月短く、4-9.9kg増加した女性は0.3ヶ月、10-19.9kg増加した女性は0.3ヶ月、20kg以上の増加した女性は1.4ヶ月長かった、また、現在のBMIが過体重や肥満の女性は標準体重の女性に比べて、妊娠までの期間が半月、1ヶ月、それぞれ、長かったというものです。

意外なことに、妊娠までの期間が長くなるのは、半月とか、1ヶ月というふうに、わずかです。

もちろん、平均的なもので、必ずしも、この程度であるとは限りませんが、体重そのもの、そして、成人後の体重の変化だけの影響を統計学的に算出してみると想像以上にそれほど大きなものではないようです。

要するに、妊娠しやすくなったり、妊娠しづらくなったりするのは、無排卵や卵管閉塞、無精子症などのような絶対的な不妊原因がない限り、複数が複合的に影響するということのようです。

そのため、妊娠のためには「これさえやっておけば」というようなものはなく、トータルの健康が大切だということになると思います。

また、やせ過ぎや太り過ぎは、単に妊娠しやすさ云々だけでなく、妊娠、出産のリスクや出生児の健康に及ぼす影響にも目を向けるべきです。

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