体外受精治療周期からみたビタミンD欠乏と不妊症

妊孕性に影響する因子

2014年08月16日

The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism

血中のビタミンD(25OH-D)欠乏は体外受精での低い着床率や妊娠率に関連することがイタリアで実施された試験で明らかになりました。

イタリアの研究チームはビタミンD欠乏が妊娠する力にどのように影響するのかを調べるために血中のビタミンD(25OH-D)レベルと体外受精の治療成績との関連を調べました。

体外受精を受ける335名の女性を対象に、治療周期に入る前にビタミンDレベルの目安となる血中の25OH-Dを測定し、その後の治療成績との関係を調べました。

その結果、25OH-D濃度が20ng/ml未満の女性は154名、20ng/ml以上の女性は181名で、良好胚が3個以上得られたのはビタミンD低レベルグループでは9名だったのに対してビタミンD高レベルグループでは29名、胚盤胞が得られたのは低グループでは14名だったのに対して高グループでは29名、着床率は、それぞれ、13%、21%、妊娠率は、それぞれ、20%、31%でした。

また、妊娠率を左右する因子の影響を除外した結果、ビタミンD濃度が20ng/ml以上の妊娠率は20未満の2.15倍となりました。

これらの結果からビタミンDは女性の妊娠する力や体外受精の治療成績に影響を及ぼすことが明かになり、ビタミンDの充足は重要で、ビタミンD欠乏女性に対して、ビタミンDを補充することが体外受精の治療成績を改善させるかどうか確かめる必要があると結論づけました。

コメント

ビタミンDは、脂溶性ビタミンの一つで、キノコ類など植物由来のビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と魚介類や卵など動物由来のビタミンD3(コレカルシフェロール)があります。主にカルシウムとリンの吸収や代謝、骨の形成や成長の促進への関与が知られていますが、近年、細胞の増殖や分化の調節作用をもつことがわかりその働きは多岐に渡ります。

ビタミンDの供給源は2通りあって、食品からの摂取と皮膚で紫外線を浴びるこよにより合成されるというもので、食品からの摂取は20%未満とされています。そのため、特に、女性の場合、紫外線を避けることからビタミンDの不足が問題視されています。

血中や卵胞液中のビタミン濃度とART治療成績との関連について、これまでいくもの報告がなされていますが、ビタミンD濃度は体外受精の成績に関連するというものもあれば、そうでないとするものもあり、互いに相反する結果でした。

ただ、最近、ビタミンDは子宮内膜の着床環境を整えることによって体外受精の治療成績に関連するという研究報告が相次いだり、今回の試験は対象者の数が最も多く、ビタミンD濃度が充足している女性は欠乏や不足している女性に比べて治療成績が良好であったとするものです。

ビタミンDの欠乏を避けるために積極的に(1日に30分程度)紫外線を浴びることが大切ですが、ビタミンDのサプリメントで補充するのも価値があるかもしれません。