無精子症の男性はがんの発症リスクが高い

男性不妊の背景にある病気

2013年07月05日

Fertility and Sterility

射精された精液の中に精子がまったく見つからない「無精子症」の男性はその後のがん発症リスクが高い傾向にあることがアメリカのスタンフォード大学医学部の泌尿器科医らの研究で明らかになりました。

1989~2009年の間にテキサス州のBaylor andrology clinicで男性不妊と診断された2,238名の平均年齢35.7歳の男性を対象に平均6.7年の追跡調査が実施され、がんの発症率を同年代の男性のそれと比較しました。尚、2,238名の内、451名が無精子症で、1,787名は精液中に精子が存在しました。

その結果、2,238名の内、29名が精液検査後平均5.8年でがんを発症していました。同年代の男性の発症率をあてはめると16.7名になることから、男性不妊と診断された男性は一般の男性に比べて1.7倍の割合でがんにかかったことがわかりました。

また、無精子症の男性とそうでない男性不妊の男性にわけてみると大きな差があり、無精子症の男性は一般男性に比べてほぼ3倍、無精子症でない男性不妊では1.4倍でした。

さらに、30歳以下で無精子症と診断された男性は同年代の男性に比べてがんにかかる割合が8倍でした。

これらの結果から、無精子症の原因は、がんの発症の原因にもなり得る可能性があると考えられることから、無精子症と診断された男性は、妊娠のための治療のみならず、その後のがん検診も積極的に受けるべきであると結論づけています。

コメント

これまで男性不妊患者は精巣がんにかかるリスクが高いことはいくつかの報告がなされていましたが、精巣がんだけでなく、がん全体の発症率を無精子症と精液中に精子がある男性不妊の男性とわけて調べた研究は初めてとのことです。

そして、男性不妊と診断された男性は一般男性に比べてがんにかかりやすく、特に、無精子症の男性は発症率が高いということでした。

この結果は、精子をつくる働きが低下、もしくは、ストップすることは、男性のトータルの健康に関わっているということを物語っています。

要するに、単に精液中に精子があるかないか、パートナーの妊娠の可能性があるかないか、パートナーの妊娠の確率が高いか低いかという問題だけでなく、まずは、男性の健康の問題としてとらえる必要があるということでしょう。

現実には、パートナーの妊娠を目的とした対策や生殖医療が施され、お子さんが授かれば、問題が解決したとなるわけですが、男性の健康という観点では、問題は放置されたままということになります。

まずは、精子をつくる働きが低下していたり、そこなわれていたりすた場合は、男性の健康に問題ががあるとの認識にたって、生活習慣を見直したり、少なくとも泌尿器医に相談することが大切ではないでしょうか?

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