妊娠3か月以降も葉酸サプリメントを摂取した場合の影響について

生活習慣・食事・サプリメント

2013年06月08日

The American Journal of Clinical Nutrition

妊娠3か月以降も葉酸のサプリメントを継続して摂取した場合、母体やさい帯血の葉酸濃度が増加し、反対に妊娠後期に増加するホモシステイン濃度が低下することが、イギリスで実施されたランダム化比較試験でわかりました。

妊娠3か月以降も葉酸のサプリメントを継続して摂取した場合の影響を調べるために、イギリスのコルレインの産科病院に通院する妊婦119名(18~35歳)をランダムに2つのグループにわけて、一方のグループ(59名)には妊娠3か月以降も1日400μgの葉酸のサプリメントを飲んでもらい、もう一方のグループ(60名)には偽薬を飲んでもらい、妊娠14週と妊娠36週に血中の葉酸やホモシステイン濃度を、分娩時にさい帯血中の葉酸濃度を、それぞれ、測定しました。

その結果、偽薬を飲み、葉酸のサプリメントを継続しなかった女性は、血中の葉酸濃度は平均で45.7から19.5nmol/Lに低下し、反対に、血中のホモシステイン濃度は平均で6.6から7.6μmol/Lに増加しました。

その一方で、葉酸のサプリメントを継続して摂取した女性では、このような変化は見られず、赤血球中の葉酸の濃度は平均で1203から1746nmol/Lに増え、さい帯血の赤血球中の葉酸濃度は、サプリメント摂取女性では平均1,993、偽薬を摂取した女性では平均1,418nmol/Lとサプリメントを継続じた女性のほうが高かったことがわかりました。

コメント

葉酸はビタミンB群の一種で、細胞の分裂や成熟に欠かせない働きをするために、妊娠や出産に際しては最重要ビタミンと言っても過言ではありません。

そして、妊娠前から葉酸のサプリメントを1日に最低400μg摂取することで、出生児の神経管閉鎖障害などの先天異常のリスクが大きく低下することから、厚生労働省では妊娠の1か月前から妊娠3か月まで葉酸のサプリメントを摂取することを推奨しています。

葉酸のサプリメントの開始時期は妊娠の1か月以上前からとしていますが、妊娠する時期を予測することは難しいので、妊娠を意識した日から摂取を始めるのが現実的です。

一方、妊娠3か月まで続けることを推奨しています。

その理由は、先天異常の多くは妊娠直後から妊娠10週以前、特に中枢神経系は妊娠7週未満に発生するとされているからです。

ただし、その後も胎児の細胞分裂は続くわけで、そのため、葉酸の必要性が高いことには変わりありません。

つまり、葉酸は、出生児の先天異常の予防だけでなく、胎児の健全な成育に必須なわけですから妊娠3か月以降も継続することは意味があるはずです。

そのことを今回の試験では示してくれています。

注目すべきは、葉酸サプリメントを継続することで、妊娠中期から後期のホモシステイン濃度が低下することが確認されたことです。

2007年に国立保健医科学院の研究グループが実施した試験で妊娠後期に血中のホモシステイン濃度と出生児の体重が関連していて、ホモシステイン濃度が1.0mmol/L上昇するごとに出生児の体重が151g軽くなることを確かめています。

血中のホモシステインの濃度が高いほど胎児の発育にマイナスになるわけです。

そのため、妊娠全期間を通じて、葉酸サプリメントを摂取することが望ましいと言えます。