妊娠中のビタミンD不足は妊娠合併症や子の成長に影響する

妊孕性に影響する因子

2013年04月12日

British Medical Journal

妊娠中の血中ビタミンD濃度が低いと妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、小さい子どもが生まれるリスクが高くなることがシステマティックレビューやメタアナリシス研究で明らかになりました。

妊娠中の母親のビタミンDの血中濃度と妊娠合併症や子どもの成長との関係を調べるために、これまで実施された複数の観察研究の結果を統計学的に統合、分析しました。

その結果、ビタミンD不足の女性は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、小さい子どもが生まれるリスクが高くなり、妊婦のビタミンD不足は細菌性膣症や低出生体重児のリスクが高くなるが帝王切開による出産には関係しなかったとのこと。

コメント

ビタミンDは脂溶性のビタミンで、カルシウムの吸収を促進し、骨の形成と成長を促す働きがよく知られていました。アンコウ肝や紅ザケ、さんま、にしん、うなぎなどに多く含まれますが、ビタミンには珍しく体内で合成され、日光を浴びることでコレステロールを材料にしてつくられ、受容体を介して働くために、ビタミンというよりステロイドホルモンだとする専門家の意見もあります。

ここ数年、ビタミンDの多彩な働きが注目されるようになり、その中で生殖機能に密接に関わっていることもわかってきました。

これまでもビタミンDの不足は妊娠や出産のリスクと関係することが多くの研究で報告されていました。

また、インスリンの効き目を高める働きがあることからビタミンD不足が糖の代謝障害やインスリン抵抗性を招き、糖尿病やPCOSにも関連しているとの報告もあり、PCOSによる排卵障害の女性に排卵誘発とともにビタミンDを補充することで排卵率が高まったとの報告があります。

さらに、血中ビタミンDと卵胞液中のビタミンD濃度は相関することもわかっていますが、卵胞液中のビタミンD濃度が高いほど体外受精の妊娠率がよいという研究もあれば、反対によくないという研究もあり、相反する結果が報告されています。

一方で、日本人女性の半数以上はビタミンDが不足している(20ng/ml未満)という調査結果があります。30~40代女性の1日の摂取目安量は5.5μgで、上限量は50μgです。紫外線防止のために日光を避けるのはビタミンDの合成という観点からは得策ではありません。妊娠前からサプリメントで補充すべき優先順位の高い栄養素の一つです。