高度生殖補助医療と子どもの出生体重の関係

2012年10月18日

Fertility & Sterility

凍結胚移植によって生まれた子どもの平均出生体重は、新鮮胚移植で生まれた子どもや新生児全体の平均出生体重に比べて重いことが日本産科婦人科学会の登録データから明らかになりました。

高度生殖補助医療と子どもの出生体重との関連性を調べるために、日本産科婦人科学会の登録データを分析しました。対象は、2007年から2008年に高度生殖補助医療で生まれた、満期分娩による単胎児、25,777名(新鮮胚移植による出生児が11,374名、凍結胚移植による出生児が14,403名)。

その結果、凍結胚移植で生まれた子どもの平均出生体重(3,100.7±387.2g)は、新鮮胚移植で生まれた子どもの平均出生体重(3,009.8±376.8g)や新生児全体の平均出生体重(3,059.6±369.6g)よりも重いことがわかりました。

また、凍結胚移植で生まれた子どもの低出生体重児のリスクは新鮮胚移植で生まれた子どもに比べて有意に低いこともわかりました。

一方、新鮮胚を移植した場合、卵巣刺激法でみてみると、採卵前に卵巣を刺激して生まれた子どもは、自然周期で生まれた子どもに比べて、低出生体重児のリスクが2倍に高くなりました。培養期間では、培養期間が短いほうが長く培養した場合に比べて、低出生体重児のリスクが高くなりました。

胎児の成長という観点で言えば、胚盤胞まで培養して凍結融解胚移植を行うのがベストな方法であることがわかりました。

ただし、高度生殖補助医療の安全性については今後のさらなる調査研究が必要であるとしています。

コメント

これまでも、凍結胚移植によって妊娠した子どもは大きかったり、卵巣刺激を伴う人工授精で妊娠した子どもは小さかったりすることがわかっていましたが、今回、2007年、2008年に体外受精や顕微授精で生まれた子どもと日本全体の出生児の出生体重を調べ、それらの傾向が間違いないことが確かめられたというわけです。

凍結胚移植児は新鮮胚移植児や自然妊娠児よりも大きいこと、排卵誘発剤で卵巣を刺激しないで生まれた子どものほうが大きいこと、初期胚移植よりも胚盤胞移植で生まれた子どものほうが大きいこと、胚移植後のホルモン補充では、エストロゲンやプロゲステロンの補充をした子どもが最も大きいことが確かめられています。

このことが意味するところは、胎児の成長は着床時の子宮内膜の環境に左右されるということです。

通常、高度生殖補助医療では採卵前に排卵誘発剤で卵巣刺激を行うために、子宮内膜がその影響を受けた状態で着床するのが卵巣刺激後の妊娠であり、新鮮胚移植であるわけです。

そういう意味では自然妊娠よりも、凍結胚移植の子どものほうが大きいということは、凍結胚移植の際は子宮内膜の着床環境がベストな状態で実施されているはずですから、自然妊娠時よりもよくなっていると考えられないこともありません。

ただし、これらはあくまで推測であり、高度生殖補助医療を施すことによって、エピジェネティックな変化、すなわち、遺伝子の発現が影響されることによるものとの考えもあって、本当のところはわかっていません。

ただし、そのメカニズムは不明でも、着床前後の子宮内膜の環境が胎児の成長に影響を及ぼすことは間違いのない事実です。

血流をよくして、子宮内に酸素や栄養素を十分に送り込み、排泄物をスムースに運び出すような生活習慣を心がけることは、私たちでも取り組めることだと思います。

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