尿中ビスフェノールA濃度と体外受精の治療成績との関係

妊孕性に影響する因子

2012年10月02日

Human Reproduction

尿中のビスフェノールA濃度が高いと体外受精時の卵巣刺激に対する反応が悪く、得られる受精卵の数が少なく、胚盤胞到達率も低いことがハーバード公衆衛生大学院の研究者らによる試験で明らかになりました。

2004年11月から2010年8月に、アメリカのマサチューセッツ総合病院生殖医療センターで体外受精を受けた174名の女性が妊娠、出産するまで、もしくは、治療を止めるまでの237治療周期における尿中ビスフェノールA濃度と治療成績との関連を調べました。

その結果、尿中のビスフェノールA濃度が高くなるほど、採卵できた卵子の数や正常な受精卵の数が少なく、エストロゲンレベルが低いことがわかりました。

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尿中のビスフェノールA濃度によって4つのグループ(Q1:最も低いグループ Q2:その次に低いグループ Q3:2番目に高いグループ Q4:最も高いグループ)に分けたところ、最も濃度の高いグループ(Q4)は最も濃度の低いグループ(Q1)に比べて、採卵数が24%、正常な受精卵数が27%、それぞれ低かったとのこと。左のグラフは、黒のグラフが採卵数、グレイが成熟卵、白が正常な受精卵の数を示しています。

コメント

ビスフェノールAは、主に、ポリカーボネートと呼ばれるプラスティックの原料として使用される化学物質です。ポリカーボネートは、主に、電気機器、OA機器、自動車・機械部品、食器、容器などに、使用されています。

ビスフェノールAが体内に取り込まれるのは、主に、食事を通してで、ポリカーボネート製の食器や容器などから、また、食品の缶詰や飲料缶から飲食物に溶けだし、それを飲食することによるものです。

これまでビスフェノールAが体内に取り込まれることによる健康への影響については、動物実験によって確かめらているものの、人間については定かではありません。

そして、日本国内で製造される食品用の容器については、代替品への切り替えが進み、飲食を通して摂取する可能性のある量は極めて微量であるとされています。

ただし、女性の尿中のビスフェノールA濃度と生殖力の関係については、これまでもいくつかの報告があり、缶詰や缶飲料を摂り過ぎないようにし、運動などで体内の有害物質の排泄機能を高めることは大切かもしれません。

また、尿中のビスフェノールA濃度の高い子どもは肥満が多いとの調査結果がアメリカで報道されています

もちろん、ビスフェノールAの影響が確定されたわけではありませんが、妊娠前の母親の体内の環境は新しい命の成育に大きな影響を及ぼします。体内環境を整えておくに越したことはないと思います。

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