コエンザイムQ10は原因不明男性不妊の精液の質を改善する

男性不妊治療方法

2012年06月28日

The Journal of Urology

コエンザイムQ10の摂取によって、原因不明のOAT症候群(精子濃度や精子運動率、正常精子形態率が基準値を下回る)の男性不妊患者の精液の質を改善することがイランで実施された臨床試験によって確かめられました。

Clinical Center for Urological Disease Diagnosisの研究チームは、原因不明で精子濃度や精子運動率、正常精子形態率が基準を下回った男性不妊患者228名を対象に二重盲検試験を実施しました。

対象者をランダムに2つのグループにわけ、一方にはコエンザイムQ10を1日に200mgを、もう一方のグループにはプラセボ(偽薬)を、それぞれ、26週間服用してもらい、服用終了後と服用終了の12週間後に精液検査、ホルモン検査を受けてもらいました。

その結果、それぞれのグループの精子濃度、精子運動率、正常精子形態率の平均値と標準偏差は以下の通りで、いずれもコエンザイムQ10を服用したグループで検査結果の改善がみられた。

・精子濃度    CoQ10グループ:28.7百万±4.6/ml プラセボグループ:16.8百万±4.4/ml
・精子運動率   CoQ10グループ:35.8%±2.7 プラセボグループ:25.4%±2.1
・正常精子形態率 CoQ10グループ:17.6%±4.4 プラセボグループ:14.8%±4.1

CoQ10グループでは、精子濃度では、62%の男性が改善、27%は変化がみられず、11%は低下、精子運動率では、57%の男性が改善、27%は変化がみられず、16%は低下、正常精子形態率では、52%の男性が改善、25%は変化がみられず、23%は低下しました。

また、CoQ10の服用期間が長くなれば、なるほど、改善効果が大きくなることがわかりました。

これらの結果から、コエンザイムQ10は、原因不明で精子濃度や精子運動率、正常形態率が基準を下回る男性不妊患者の精液所見を改善するのに効果的であると結論づけています。

コメント

男性不妊で最もよくあるのは原因不明の造精機能障害で、精子をつくる働きが低下しているというケースです。原因不明というのは、原因がないというわけではなく、現在の男性不妊の検査方法の精度では、原因をみつけることが出来ないと理解すべきです。

そのようなケースでは、当然ながら、特効薬や治療法などもなく、とにかく、パートナーの女性への人工授精や体外受精、顕微授精が勧められるのが実情です。

ただし、多少なりとも、男性側で改善できれば、女性への治療が必要なくなったり、或いは、女性の身体への負担がより軽い治療で妊娠を目指すことが出来るようになるのは言うまでもありません。

これまで、漢方薬などが試されてきましたが、最近、抗酸化サプリメントの有効性についての報告が増えています。

ただし、抗酸化サプリメントと言っても、さまざまな成分があり、どのような抗酸化物質が最も有効なのかについて、コンセンサスが得られているわけではありません。

そんな中で、レベルの高い臨床試験(二重盲検試験)で有効性が確かめられている成分は限られていますが、コエンザイムQ10は、そんな成分の代表と言えます。これまでイタリアの研究グループが運動率の改善効果を報告しています。

今回のイランの研究チームの報告では、OAT症候群と言って、精子濃度、精子運度率、正常精子形態がいずれも基準を下回る男性不妊患者を対象に二重盲検試験を実施しています。

その結果、精子濃度、精子運動率、正常精子形態率ともに明らかな改善効果が確認され、注目すべきは、長く服用したほうが改善効果が高まること、そして、摂取を止めた後も、その効果が継続していることが確認されたことです。

精液所見が基準を下回った男性は試してみる価値が大きいのではないでしょうか。