禁欲期間が短いほうが精子のDNA損傷率が低くなる

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2011年10月03日

Fertility and Sterility

男性の禁欲期間が短く、選別した精子のほうが、DNA損傷率が低いことが、スペインの研究グループの試験で明らかになりました。

試験は2つの方法で実施されました。 1つは、女性に原因があって不妊クリニックに通院するカップルの精液所見が正常な男性21名(25~35歳)を対象として、96時間(4日間)の禁欲の後、そして、その後、24時間毎に射精した96時間後のDNA損傷率を比較しました。

その結果、96時間の禁欲後の平均の精子DNA損傷率は22.2%であったのに対して、その後、24時間毎に射精した96時間後のそれは17.0%と、ほぼ25%低下したことがわかりました。

また、2つ目の試験は、精液所見の正常な男性12名(20~25歳)を対象に、96時間(4日間)の禁欲の後の精液と、その3時間後に射精した精液を、それぞれ、同量を2つずつに分け、そのままの状態と密度勾配遠心分離法で選別した精子のDNA損傷率を比較しました。

その結果、そのままの状態の精液のDNAの損傷率は96時間後の禁欲の後の3時間後に射精したほうが低下しているものの、それほど大きな差は見られませんでした。

ところが、選別した精子では、96時間の禁欲の後よりも、その3時間後に射精したほうが48%もDNA損傷率が低下していたことがわかりました。

これら2つの試験の結果から、男性の禁欲期間が短く、そして、密度勾配遠心分離法によって選別した精子のほうがDNA損傷率が低いことがわかりました。

コメント

男性の精子のDNA損傷率は低い、すなわち、DNAが傷ついている精子の割合が低いことが、健全な妊娠や出産のためにとても重要であると考えられています。

精子がつくられてから時間が経過すればするほど、酸化ストレスなどの影響でDNAへのダメージが大きくなるからではないかと考えられています。

そのため、顕微授精では健全なDNAの目安となる良好な形態の精子を選んだり、射出された精液中の精子よりも精巣内精子のほうがDNA損傷率が低いことから、精巣内精子の採取が実施されることもあります。

従来、自然妊娠でも、人工授精や体外受精に用いる場合でも、3~4日くらいの禁欲期間を設けるほうが妊娠に有利であると考えられていましたが、禁欲期間が短いほうがDNAの損傷率が低いことが明らかになっています。

今回の報告では、禁欲期間の長さに加えて、遠心分離法で精子を選別した場合でもDNA損傷率が大きく低くなることを確かめています。

タイミング法においても、不妊治療においても、禁欲期間を長くしないこと、また、適切な方法で精子を選別することが大切です。

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