喫煙は精子発生の際の染色体の正常な形成を阻害する

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2010年09月09日

Human Reproduction

喫煙は精子がつくられる際の染色体形成に不可欠なたんぱく質(プロタミン1とプロタミン2)比率に影響を及ぼし、精子の受精能力を低下させたり、流産のリスクを高める可能性があることが、ドイツで実施された試験で確かめられました。

ドイツのサーランド大学医学部の産婦人科教授らのチームは、53名のタバコを吸う男性と63名のタバコを吸わない男性の精液中の精子のプロタミン1(P1)とプロタミン2(P2)のレベル、また、酸化ストレスレベルを調べました。

その結果、 タバコを吸う男性ではタバコを吸わない男性に比べてP2濃度が14%低いことが分かりました。また、酸化ストレスが高いことが分かりました。

これらのことから、男性の喫煙習慣は精子や精子の染色体にダメージを与え、受精能力が低下したり、流産のリスクが高くなるおそれがあると結論づけています。

コメント

プロタミンというたんぱく質は、精子のDNAと結合していて、精子がつくられる際にDNAが折りたたまれて染色体が形成され、核の中に格納されるのに不可欠な働きをしていると言われています。プロタミンには、プロタミン1(P1)とプロタミン2(P2)の2種類あって、その濃度の比率は1:1が正常とされていて、もしも、その比率がアンバランスになると、染色体形成に異常を招き、精子の受精能力が低下したり、妊娠しても流産する確率が高くなるなど、男性不妊を招くことが知られています。

今回、喫煙男性では、プロタミン2の濃度が低いことが試験で確かめられました。

また、喫煙男性では、精子の酸化ストレスが高いことも確かめられ、これらのことから、タバコを吸うことで、精子の遺伝情報が存在するDNAの構造に異常を引き起こし、パートナーの妊娠の確率を低くし、流産率を高めるメカニズムが明らかにされたと言えます。

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