体外受精における年齢や基礎FSH値と染色体異常の発生率との関係

不妊改善・生殖医療関連

2008年08月27日

Fertility and Sterility Vol.90 Issue2 315-321

母親になる女性の年齢が高くなるほど染色体異常の胚ができる割合が高くなりますが、基礎FSH値が高くなっても、染色体異常の胚の割合は変わらないことが、イギリスで実施された試験で明らかになりました。

ロンドンの生殖医療クリニックで、体外受精(新鮮胚移植)を受けている151名の女性を対象に、年齢や基礎FSH値(2~4日目)と着床前診断で染色体異常との関係を調べたところ、染色体異常は、年齢が高くなるにしたがって、発生率の高くなるのに対して、基礎FSH値との関連性はみられませんでした。

このことから、基礎FSH値が高くなることは、卵巣予備能が低下していることを示しますが、胚の遺伝的な質には影響しないことが分かりました。

コメント

卵巣予備能とは、卵巣にどれくらいの卵子が残っているかということで、卵巣予備能をはかる指標の1つに月経3日目頃のFSH(卵胞刺激ホルモン)の血中濃度があります。

FSHは、卵巣に働きかけて、卵胞を発育させますから、このホルモンの数値が高くなるということは、強く働きかけないと、卵巣が働かないということですから、それだけ、卵巣内に残っている卵子の数が少なくなっていることを意味します。

ですから、FSH値が高くなることで、妊娠する力が低下するのは、卵巣内の卵子の数が少なくなることによって、妊娠に至るだけの力をもっている卵子が得られる確率も、それだけ、低下することによるものです。

そして、今回の研究報告が教えてくれることは、FSH値が高くなることと胚の染色体異常は無関係だということです。

つまり、FSH値が高くなることは、卵巣内の卵子の"数"が少なくなっているということで、決して、その"質"が低下しているわけではないと言えるかと思います。

質(胚の染色体異常)に影響するのは年齢だけのようです。

また、高度な生殖医療の役割も、卵子の質を高くすることではなく、多くの卵子を得ることで、質のよい卵子に巡り合う確率を高めることになるかと思います。

つまり、質に影響するのは年齢だけであることから、不妊治療の成功率を高めるために最も有効なのは、早い段階から治療を受けることしかないということになります。