人工授精の回数と妊娠率との関係

不妊改善・生殖医療関連

2008年02月16日

Human Reproduction

人工授精をある程度の回数繰り返すことは適切な治療方針であり、少なくとも9回まで続けることを反対する理論的根拠はないことが、オランダの医師による研究チームが臨床試験で明らかにしました。

男性や頸管粘液要因、そして、原因不明の不妊患者、3714組の累計15303周期の人工授精の成績を分析しました。

人工授精は9回まで実施し、全周期の70%に排卵誘発剤による過排卵を実施しています。過排卵に使った排卵誘発剤は73%がクロミフェン(飲み薬)で、27%はゴナドトロピン製剤(注射)でした。

その結果、周期あたりの平均妊娠率は5.6%でした。

そして、人工授精を繰り返した場合では、7回目で5.1%、8回目で6.7%、そして、9回目で4.6%でした。

また、継続妊娠率では、途中で打ち切った患者をカウントした場合、3回の継続妊娠率は18%、7回の継続妊娠率は30%、9回の継続妊娠率は41%でした。

6回目以降の妊娠率について、年齢や不妊原因、過排卵を実施したかどうかの影響は、それほど大きな影響を及ぼしていないことも判明しました。

コメント

体外受精や顕微授精等の高度な生殖補助医療の普及に伴い、ともすれば人工授精という治療方法の有用性が見過ごされがちな傾向があるようです。

その理由として治療成績が影響しているのかもしれません。
人工授精の周期あたりの妊娠率はせいぜい数パーセントとされているからです。

ただ、妊娠に至らない最大の原因は単なる巡りあわせなわけですから、治療の有用性を検討する場合、周期あたりの妊娠率よりも継続妊娠率をみることが大切です。

今回の報告では、人工授精の9回目の周期あたりの妊娠率は4.6%と、9回目でもそれほど低下していません。

また、9回続けた場合の継続妊娠率は41%と高いレベルです。

これまで、人工授精は続けても、せいぜい、5、6回までとされていますが、今回の報告でも指摘されていたのですが、そもそも、人工授精をどくくらい継続するべきかを判断するデータが存在しないのです。

現実には、体外受精にステップアップしてしまうからですね。

ところが、今回の試験は9回まで実施しているのです。

そして、9回まで繰り返してもさほど妊娠率が低下しないこと、累計妊娠率は40%を超えることが分かりました。

このことから、人工授精という治療法を見直すべきであると言えると思います。

また、原因不明不妊の場合、フーナーテストが良好であれば、人工授精は無駄な治療法であるという誤った認識も影響しているのかもしれません。

実際のところ、原因不明不妊で人工授精で妊娠に至ったご夫婦で、過去のフーナーテストが良好であったというケースは少なくありません。

ですから、原因不明でフーナーテストが良好であれば、もはや、体外受精でしか妊娠出来ないと判断するのは早計で、人工授精を受ける価値は十分にあるわけです。

人工授精の有用性を正確に認識しないことは、結局、無駄な体外受精を受けてしまうことになりかねません。

女性への身体の負担、そして、経済的な負担を考えても、もっと、人工授精を見直すべきです。