レプチンで卵巣機能が復活し無月経が改善される

不妊改善・生殖医療関連

2004年09月02日

New England Journal of Medicine

肥満抑制ホルモンとして知られている「レプチン」を使ったホルモン療法によって、過酷なトレーニングや摂食障害のために体脂肪率が極端に低くなり、月経が止まってしまった女性の生殖能力を取り戻すことが出来ることが確かめられました。

始めにお断りしておきますが、これはアメリカで行なわれた実験段階の研究報告で、現時点で実際に取り入れることが可能な治療法ではありません。

この試験は、アメリカのべス・イスラエル・ディーコネス医療センターとマサチューセッツ総合病院の研究者によって実施され、医学専門誌「the New England Journal of Medicine」に発表されました。

試験は3つのグループを対象に行なわれました。

一つは、やせ過ぎで不妊に悩む女性のグループ、二番目は、スポーツ選手やダンサーのグループで、過度の運動のために体脂肪率が低く、骨密度の低下や骨折のリスクの増大している女性です。三番目は、拒食症などの摂食障害と闘う女性のグループです。

レプチンは、1994年に発見され、食欲を抑制するホルモンとして知られていて、エネルギーを蓄える白色脂肪細胞から蓄えられたエネルギーの量が増えるとともに分泌され、血液の流れに乗って脳の視床下部へ届き、視床下部からカラダへ食欲を抑え、もっと動くように指令が発せられます。

このため、レプチンは、適度なエネルギーを必要とする生理的な機能を調整します。

女性の体脂肪が極度に低くなると、異常なエネルギーバランスになり、月経が止まり、卵巣が働かなくなることがあります。視床下部性無月経と呼ばれ、甲状腺ホルモンの異常や骨密度の低下を伴います。

研究者グループはレプチンを摂取することで、エネルギーバランスを改善させることを狙い、14名の女性の運動選手を被験者としました。彼女達の体脂肪は女性の平均の40%も低く、平均5年半もの間、生理がなく、無月経症と診断されていました。そして、3ヶ月間、1日2回低用量のレプチンが投与されました。その結果、短期間でドラマティックな結果が出ました。

生殖ホルモンの分泌レベルが上昇し、月経が始まり、卵巣機能を取り戻すことが出来ました。さらに、骨密度を反映する血清マーカーを調べたところ、大きな改善が見られました。

研究者グループは引き続き、レプチンの安全性や適切な使い方を確認するため、さらなる研究を継続するとしています。

コメント

冒頭にも触れたように、レプチンを使って無月経を改善するという療法はアメリカで研究が始まったばかりで、直ぐに受けられる治療法ではありません。
レプチン自体を摂取する治療というのも今迄聞いたことがなく、副作用等も気になるところではあります。

いずれにしても、極端なやせ過ぎや太りすぎ、極端なダイエットによる減量は、著しく体内のエネルギー代謝のバランスを損ない、その結果、生殖機能が低下することで、不妊を招くことは明らかです。
取りあえずは、正しい生活習慣と食生活を実践し、適正な体脂肪率を維持することが重要なようです。

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