冬はビタミンD欠乏に注意

2017年12月21日

ビタミンDが充足している女性は、ビタミンDが不足、欠乏してしている女性に比べて、体外受精の治療成績が良好であるという研究結果が発表されています(1)。

研究はイギリスのバーミンガム大学の研究者らによってこれまでの複数の研究で得られたデータを統合して、解析するメタアナリシスという方法で実施されたものです。

ビタミンDが妊娠や出産に深く関わっていることが、最近の多くの研究で明らかになっており、イギリスでは、昨年の夏から妊娠を計画している女性は葉酸だけでなく、ビタミンDもサプリメントで補充するように公的な機関が推奨するようになりました。

ビタミンDと体外受精の治療成績の関係については、これまで体内のビタミンD濃度が高い女性ほど治療成績が良好であるという研究もあれば、関係しないという研究もありました。そのため、今回のメタアナリシスが行われたわけです。

結果はビタミンDが充足している女性は不足したり、欠乏している女性に比べて出産や妊娠に至る確率が高かったというものでした。

ただし、解析の対象となった研究は、いずれも観察研究であり、相関関係は確かめられたものの、不足している女性がビタミンDを充足させると治療成績が改善されることが確かめられたわけではありません。

そのため、今後、そのことを確かめる研究が必要なのですが、ビタミンDは妊娠後の母子の健康、さらには、子どもの出生後の健康にも影響することがわかっているため、妊娠前からビタミンDを充足させておくに越したことはないと思います。

■ビタミンDの体内濃度は季節で変動する

ビタミンDは、魚やキノコなどの食品から摂取しますが、体内で必要とされる量の多くは紫外線を浴びることで体内でつくられています。

そのため、紫外線を浴びる量、すなわち、日照時間によってビタミンDの体内濃度が変動し、夏に高く、冬に低くなることが知られています。

北九州のオフィスワーカー男性312名、女性217名を対象に7月と11月の血中のビタミンDのマーカーを測定した研究(2)があります。

それによると、平均値は7月が27.4ng/mlだったのに対して、11月は21.4ng/ml と低く、ビタミンD欠乏(20ng/ml未満)の割合が7月では9.3%だったのに対して、11月では46.7%と半分近くになっています。

また、日照時間は季節だけでなく、場所(緯度)によっても異なります。そのため、同じ日本に住んでいても南と北ではビタミンDの体内濃度が違うはずです。

1日に必要とされるビタミンDをつくるのに必要とされる日光浴の時間を札幌、つくば、那覇で7月と12月で比較した研究(3)があります。

それによると、両手と顔を露出した場合、7月の正午では那覇で2.9分、つくばで3.5分、札幌で4.6分だったのに対して、12月の正午では那覇で8分、つくばで22分、札幌で76分と北にいくほど夏と冬の差が大きくなっています。

このように、冬、特に北日本では、ビタミンD欠乏を意識的に回避する必要があると言えます。

■食事と運動、サプリメント

これからの季節、ビタミンDの不足や欠乏回避になにができるのでしょうか。

北九州で行われた研究では魚介類や運動、タバコを吸わないことが、血中のビタミンDマーカーの高値と関連したと報告しています。

ビタミンDが豊富に含まれる食品は、魚やキノコ類です。また、意識して日光浴をするのも難しいと思うので、やはり、ウォーキング等の運動が現実的かもしれません。

ただし、女性の場合、季節を問わず日焼け止めクリームなどの紫外線対策を欠かさないという方も少なくないでしょうから、確実なのはサプリメントになるのかもしれません。

サプリメントを利用する場合は、ビタミンDは脂溶性のため摂取するタイミングが大切です。1日のうちで食事が最も多い食後が吸収効率がよいとされています(4)。

また、ビタミンDは脂溶性のため体内にとどまるためサプリメントを利用する場合は過剰摂取になるおそれがあるという意見がありますが、そもそも、サプリメントはビタミンD3で、ビタミンD3は肝臓で25(OH)Dで変換され、その後、腎臓で活性型ビタミンDである1,25(OH)Dに変換されますが、体内のビタミンD濃度によってそれらの変換率が厳格に調節されています。

そのため、ビタミンD3を摂取しても過剰になる心配はないというのが専門家の見解です。

もちろん、過剰の心配がなくても、充足していればサプリメントで補充する必要はありませんので、クリニックでマーカーである25(OH)Dを測定してもらい、不足(30ng/ml未満)や欠乏(20ng/ml未満)かどうかを確かめるのが確実です。

[文献]

1)Hum Retrod. Advance article 15 November 2017
2)J Epidemiol. 2011; 21: 346-53.
3)J Nutr Sci Vitaminol. 2013; 59: 257-63.
4)J Bone Mineral Research 2010; 25: 928-930

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