腸内環境を整えて妊娠しやすいカラダをつくる

2011年04月08日

妊娠しやすいカラダをつくる食べ方を考える、もう一つのアプローチ

妊娠しやすいカラダをつくるための食事を考える場合、"何を食べるべきか"ということよりも、"どのように食べるべきか"に注目するほうが効果的だということで、地中海式ダイエット(食事法)を取り上げてみました。

妊娠しやすいカラダをつくる食事について、これまでとは違った観点で考えてみたいと思います。

それは、腸内環境を整えるということです。

腸は消化官の末端の臓器です。

腸内環境が悪ければ、せっせと栄養を摂取しても、スムースに体内に吸収されなかったり、反対に、身体に有害な物質を発生させることになってしまいます。

妊娠の成立や継続には、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が必要不可欠です。いくら食事やサプリメントでそれらの栄養素を摂取しても、腸内環境が悪ければ、支障をきたしてしまう可能性が大きくなります。

また、意外かもしれませんが、腸内環境は免疫系に作用しています。

腸内環境が悪ければ、免疫力が低下や混乱を招きます。免疫とは、身体にダメージを与える物質を攻撃し、身体を守る仕組みのことです。そのための攻撃部隊の多くが腸管でつくられているからです。

免疫力が低下すれば、病気にかかりやすくなりますし、混乱すれば、攻撃の相手を間違えて、アレルギー症状をおこしやすくなってしまいます。

精子や受精卵は、異物ですが、女性の身体を攻撃するものではありません。ところが、免疫作用が混乱すれば、精子や受精卵を排除しようとしてしまい、妊娠の成立や継続が妨げられてしまうおそれがあります。

つまり、腸内環境は、妊娠や出産にふさわしい体内環境にとって、間接的にも、直接的にも、大きな影響を及ぼしているというわけです。

お腹の中で、「発酵」がおこっているのか、「腐敗」がおこっているのか

それでは、腸内の環境がいいとか、悪いとか、いったい、どういうことなのでしょうか?

簡単に言ってしまうと、腸内で、「発酵」がおこっているのか、「腐敗」がおこっているのかということです。

もちろん、発酵とは健康的な現象であり、腐敗は病的なものですから、腸内環境がよいと発酵がおこり、反対に、腸内環境が悪いと、腐敗がおこるというわけです。

私たちには知るよしもありませんが、私たちのお腹の中では、日夜、発酵と腐敗が繰り返されているのです。

腸内環境が悪化し、発酵よりも、腐敗が優勢になると、妊娠しづらくなるだけでなく、いろいろな病気の温床になってしまいかねないのです。

腸内環境を左右するのは、腸内の常在細菌

それでは、腸内で発酵がおこるのか、腐敗がおこるのか、つまり、腸内環境を左右するのは、なんなのでしょうか?

それは、腸内細菌の勢力関係で決まります。

発酵をおこすのは、善玉菌とよばれているビフィズス菌で、腐敗の黒幕は、悪玉菌とよばれている、ウエルシュ菌です。

善玉菌が優勢な状態が腸内環境が良好で、反対に、悪玉菌が優勢になると腸内環境が悪化します。

普段、意識することはありませんが、私たちの体内には至るところに細菌が棲みついています。

外から侵入して、感染症を引き起こす細菌とは、別のもので、常在細菌とよばれているものです。

常在細菌が棲んでいるのは、皮膚や鼻や口の中、のどの粘膜、そして、腸内で、女性であれば、膣内にもいて、そのことで、外部から細菌が体内に侵入しにくくなり、私たちとは持ちつ持たれつで、共生関係にあります。

細菌というと、普通は悪いイメージしかありませんが、実際には、細菌との共生関係は、私たちが健康を維持するうえで、とても大切な役割を担ってくれているのです。

ですから、滅菌、抗菌が行き過ぎると、共生関係が崩れしまいます。

善玉菌と悪玉菌の力関係は食事内容で決まる

さて、腸内(大腸内)は、常在菌が最もたくさん棲むところです。

そして、腸内細菌の主なものは、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌、ウエルシュ菌などの悪玉菌、そして、善玉にも、悪玉にも属さない日和見菌の3つに分けられます。

日和見菌とは、その名の通り、状況に応じて善玉菌的にふるまったり、悪玉菌のように働いたりします。

これら3種類の菌の割合は、一般には、善玉菌20%、悪玉菌10%、そして、日和見菌が70%で、バランスがとれた状態とされています。

このバランスが崩れて、悪玉菌が優勢になると、腸内環境が悪化してしまうことは、既に、お話しした通りですが、それでは、これらの常在菌の勢力関係を決定するのはなんなのでしょうか?

それは、食事内容です。

善玉菌がエサとするような食べ物を豊富に食べれば、善玉菌が優勢になり、反対に、悪玉菌がエサとするような食べ物を豊富に食べれば、悪玉菌が優勢いなるだけでなく、日和見菌も悪玉菌的に働くようになります。

つまり、腸内環境は、このようなメカニズムによって、私たちの普段の食事内容が決定するというわけです。

腸内環境を良好にする食べ方

善玉菌を増やすためには、高炭水化物、高繊維食を心掛けること、たとえば、ごはん中心の和食に、納豆をプラスして、野菜を豊富に食べること。また、ヨーグルトやオリゴ糖の豊富な食べ物を食べることです。

反対に、肉中心で、動物性タンパクは悪玉菌が喜びます。

もう少し詳しく、腸内環境を整えるための食べ方についてまとめてみます。

◎食物繊維

食物繊維は便のかさを増したり、便をやわらかくするなど、便秘予防にいいことはよく知られています。そして、1日25グラム以上の食物繊維を摂取することが推奨されています。

ただし、無闇に摂ればいいというわけではありません。不溶性、つまり、水に溶けない食物繊維を摂り過ぎると、かえって、便秘を招いてしまったりします。

不溶性の食物繊維は、レタスやキャベツ、ゴボウなどに豊富で、水溶性の食物繊維は、昆布やわかめなどの海藻類、リンゴなどの果物に豊富です。

穀物や野菜、果物、海藻、根菜、イモ、豆類などを満遍なく食べ、不容性、水容性の食物繊維をバランスよく摂ることが大切です。

◎オリーブオイル

脂肪の摂取パターンも腸内環境に影響します。ずばり、動物性脂肪を少なくする、そして、植物性脂肪の中でも、オリーブオイル、そして、亜麻仁油やシソ油やエゴマ油などのオメガ3系の脂肪酸を中心とするのがポイントです。

人工の脂肪酸であるトランス脂肪酸や大量生産された精製油は避けるのが無難です。

イタリアでは、便秘予防のために、スプーン1杯の良質のエキストラバージンオリーブオイルを、子どもにとらせるそうです。

◎オリゴ糖

オリゴ糖は消化されずに大腸まで達し、ビフィズス菌などの善玉菌のエサになるために、オリゴ糖をとることで、直接的に、善玉菌を増やし、腸内環境をよくします。

オリゴ糖が豊富に含まれるのは、バナナやきな粉、タマネギ、ゴボウなどで、これらは、食物繊維も豊富なので、腸内環境を整えるために大活躍してくれる食材です。

食べ方としては、朝食には、リンゴとバナナを食べ、ヨーグルトにきな粉を入れて、全粒粉のパンにおオリーブオイルを浸して、そして、玉ねぎやごぼうのスープやみそ汁なんて、理想的です。

◎植物性乳酸菌

乳酸菌というと、ヨーグルトが有名です。ただし、ヨーグルトのような動物性の乳酸菌は、胃液や腸液で死滅してしまい、腸までは到達しにくいことが知られています。そのために、ヨーグルトメーカーの宣伝文句は、"腸まで届く"乳酸菌となるわけです。

ところが、植物性乳酸菌は、過酷な条件でも生き続けらるため生きたまま腸の奥まで届きます。

ですから、動物性乳酸菌だけでなく、植物性乳酸菌も、いや、植物性乳酸菌を中心に摂るべきなのです。

具体的には漬物です。毎日、少しでも食べることです。そして、味噌汁。1日に1回が食したいものです。さらに、納豆が1日1パックあれば、理想的です。

また、醤油や味噌などの調味料は天然醸造のものを選ぶべきです。1~2年かけて、ゆっくりと発酵、醸成されたものは、有用な乳酸菌がしっかりと働いています。値段は高くなりますが、当然です。

◎肉より魚

肉は、悪玉菌のエサになりますので、出来るだけ少なく、反対に、魚、特に、オメガ3脂肪酸であるDHAEPAが豊富な青魚を週に3回以上は食べたいものです。

健康によいとされている伝統食は腸内環境を良好にする

お気づきかもしれませんが、ほとんど地中海式食事法であり、質素な日本食、そのものなわけです。

つまり、腸内環境をよくする食べ方もが残ったから、伝統食になったと理解すべきなのかもしれません。

反対に、現代社会に幅を利かせている、"コンビニエントな食材や食べ方"は、確実に腸内環境を悪化させます。

日本で、2003年に女性のガン死の中で大腸ガンが1位になったことがなによりの証拠ではないでしょうか。

大腸ガンが発症する前に、さまざまな身体の不調や機能の低下、アレルギーに悩まされるはずです。

最後に、ストレスは悪玉菌を増やすこと、1日に30分のウォーキングは、腸の動きをよくすることも付け加えておきます。

もっと知りたい方のために

腸内環境の悪化は、たとえば、便秘や下痢、下腹部の膨満感、下腹ポッコリ、お肌が荒れる、おならが臭いなどの自覚症状となる場合もありますが、無自覚なこともあるそうです。

もっと知りたいという方のために参考にした本を紹介します。

・アレルギーソリューション(バベル・プレス)
・人体常在菌のはなし‐美人は菌でつくられる(集英社新書)
・40歳からの腸内改造(ちくま新書)

特に、「40歳からの腸内改造」では、第五章の「腸」を癒す「腸プラス」生活で、腸内環境を最高のものにするための「腸内リセット・プログラム」が紹介されています。1週間分の3食のメニューも詳しく書かれています。

私(細川)も実践してみましたが、超おススメです。便通がよくなり、心身ともに状態がよくなることを保証します。

また、Iさんは8年間もお子さんがやってこなかったのですが、腸内リセットの後、長年の便秘が解消され、妊娠されました。

もちろん、たまたま、そのタイミングで授かったということなのですが、便秘が解消され、健康な身体を得たことは、何よりの自信になったと話されています。

現代社会では、腸内環境を悪化させる要因に満ちているように思えてなりません。

自分で自分を守るためにも腸内環境を整えることを意識して、取り組むことが大切だと思います。

特に、アラフォー(40歳前後)になると、痛感するはずです。