納得のいく治療を選択するための治療成績予測ツール

2011年01月17日

皆さんからさまざまなご相談が寄せられます。不妊治療に関するご相談の中で多いテーマの一つは、"いつ、ステップアップすべきか"というものです。

つまりは、"どんな治療を、どれくらい繰り返すべきか"ということなのですが、特に、原因不明の場合にはとても悩ましい問題です。

もしも、不妊の原因があれば、それを治療することで妊娠を目指せばいいわけですから、選択に迷うことはありません。

ところが、原因不明の場合は治療するところがないわけですから、妊娠の確率を高める治療になります。

この場合、高い妊娠率を求めれば、肉体的、精神的、経済的負担は大きくなります。

早く、確実に妊娠したい、けれども、自然に近い方法で妊娠したい、不必要な治療は避けたいわけですから、悩むことになります。

★何を拠り所に治療法を選択すればいいのか?

そんな時、いったい何を拠り所に治療法を選択すればいいのでしょうか?

もちろん、一般的なガイドラインとして「ステップアップ法」があります。タイミング指導からスタートして、徐々に治療の強度を上げていくというものです。

ところが、最近は、「どんな治療で始めるのか」や「ステップアップのタイミング」について、クリニックによるバラツキが大きくなっているように思えてなりません。

最も頼りになる拠り所は"妊娠率"です。

ところが、妊娠率は女性の年齢をはじめ、さまざまな影響を受けて変動するものです。

ですから、妊娠率についてはとても漠然としているのが現実ではないでしょうか?

★妊娠率予測ツール

そこで、自分たちで納得の行く選択をするために、後々、後悔しない治療を受けるために、妊娠率を予測することができる信頼できるツールをご紹介します。

2つあります。

1つは、今後1年間に自然妊娠して、出産に至る確率、もう1つは体外受精や顕微授精の妊娠率を予測します。

いずれもサイト上で、必要な項目を入力するだけで妊娠率を自動計算してくれるものです。誰でも簡単に使えます。


1年以内に自然妊娠して、出産に至る確率を予測する

オランダの研究グループが開発した1年以内に自然妊娠する確率を自動計算してくれるツールです。

1年以内の自然妊娠予測ツール

英語のサイトですので、以下に使い方を解説します。

1)注意事項

このツールは以下の3つのケースには使えません。

・排卵障害がある場合。
※月経周期が25~38日でばらつきが7日以下を正常とする。

・重度の男性不妊(精子濃度×運動率が300万以下)の場合。

・両側の卵管が閉塞している場合。

2)使い方

◎最初の画面

・フーナーテストは受けましたか?

受けた場合「Yes」、受けていない場合「No」を選択し、「Go」をクリック
してください。

◎次の画面

以下の項目を選択すてください。

・Female age
「女性の年齢」

・Duration of subfertility in years
「不妊期間(年)」
※流産に終った場合はその後に妊娠を目指してから現在までの期間

・Previous pregnancies (in current or other partnerships)?
「妊娠経験の有無」有の場合「Yes」、無の場合「No」を選択。

・Referred by
「主治医は専門医かどうか」かかりつけ医の場合「General Practitonaer」、
  産婦人科、もしくは、不妊治療専門医の場合「Gynecology or -」を選択。

・Percentage progressive motile sperm?
「精子運動率(%)」

・Diagnosis of of one sided tubal pathology on HSG?
「子宮卵管造影検査で片側の卵管が閉塞していると診断」検査を受けていな い場合「No」を選択。

・Diagnosis of one sided tubal pathology on laparoscopy
「腹腔鏡検査で片側の卵管が閉塞していると診断」検査を受けていない場合「No」を選択。

「Calculate」をクリックすると今後1年間の自然妊娠率が表示されます。

3)考え方

妊娠率が40%以上と算出された場合はあと半年のタイミング法が推奨される。6ヶ月のタイミング法で妊娠に至らなければ不妊治療の開始を検討するのがよい。

妊娠率が40%未満と算出された場合で、不妊治療を受ける意志がふたりにあれば、不妊治療を開始すべき。


体外受精・顕微授精出産率予測ツール

イギリスの研究グループが過去の約14万周期の体外受精や顕微授精の治療成績を統計的に解析して構築した予測ツールです。

必要事項を入力するだけで、周期あたりの体外受精や顕微授精でお子さんを出産する確率が自動計算され、表示されます。

体外受精・顕微授精出産率予測ツール

1)使い方

ページ中央付近の「Calculate now」をクリックします。

2)必要事項の入力

・Woman's age
「女性の年齢」

・Trying for
「不妊期間」

・Own or donor eggs?
「自分の卵子(own eggs)か提供卵子(Donor egga)か」

・Cause
「不妊原因 Unknown(原因不明)、Damaged tubes(卵管障害)、Irregular Ovulation(排卵障害)、Endometriosis(子宮内膜症)、Cervical(子宮頸管粘液不全)、Low sperm count(乏精子症)、More tgan one cause(複数原因有)」

・IVF attempts
「過去の体外受精 First(初めて)、Second(2回目)、Third or more(3回目以上)」

・Unsuccessful IVF attempts
「妊娠に至らなかった体外受精の回数」

・Pregnancy history
「過去の妊娠経験 No IVF,no pregnancy(無)、No IVF,pregnancy only(自然妊娠か人工授精で妊娠するも流産)、No IVF,live birth(自然妊娠か人工授精で妊娠、出産)、IVF,no pregnancy(体外受精で妊娠経験無)、IVF,pregnancy only(体外受精で妊娠するも流産)、No IVF,live birth((体外受精で妊娠、出産)」

・Medication
「使用する薬 Antiestrogen(クロミフェン)、Gonadotrophin(ゴナドトロピン)、Hormone replacement(ホルモン補充療法※提供卵子の場合)」

・顕微授精は?
「No(やらない)、Yes(やる)」

3)考え方

体外受精や顕微授精に臨む場合、予め、自分たちが治療によって出産まで至ることができる確率を知ることで、どこまで(何回まで)治療を続けるのかについての計画を立てる際の目安になります。

また、過剰な期待を抱くことを避けることができれば、精神的にも安定して治療に臨むことは出来るかもしれません。

[文献]

Pregnancy is predictable: a large-scale prospective external validation of the prediction of spontaneous pregnancy in subfertile couples
Human Reproduction 22(2)536-542

Predicting Live Birth, Preterm Delivery, and Low Birth Weight in infants Born from In Vitro Fertilisation: A Prospective Study of 144,018 Treatment Cycles
PLoS Med 8(1): e1000386.