妊娠の可能性を最大にするためのサプリメントとは?

2009年02月15日

サプリメントの賢い使い方を考えてみます。 テーマ2つ。「妊娠の可能性を最大にするために補充すべき栄養成分に優先順位」と「妊娠の可能性のある時期に選ぶべき品質」についてです。

★サプリメントで"お金と時間の無駄遣い"をしていませんか?

サプリメントについて最もよくある質問は、"どんなものを摂ればいいのか"です。なぜなら、"何となくよさそう"という、いい加減な理由でサプリメントを選んでしまいがちだし、また、選んでしまわざるをえないということがあるからでしょう。

因みに、過去に実施したアンケートでは、全体の半数以上の方々がサプリメントを利用されていましたが、その種類は、なんと!50種類以上、そして、一つの種類のサプリメントの平均利用期間は、約3ヶ月でした。

その実態を簡単にまとめてみると、たくさんの種類があってよく分からないので、
"口こみ"や"体験談"で、心が騒ぎ、なんとなくよさそうというイメージで飲みだしたものの、そのうち、別の"なんとなくよさそう"なものに変えてみた。

概ね、こんな傾向が"なきにしもあらず"といった感じでしょうか。

なぜ、このような"お金と時間の無駄づかい"をしてしまうのでしょう?

それは、妊娠を望む女性や男性にとって、「摂取すべき栄養成分の優先順位」に照らしてなかったからでしょう。

★後々、後悔したくないからこそ正しく知っておきたいこと

妊娠を切望し、後々、後悔したくない、だから、努力を惜しみたくないというのは、当然の人情です。
だからといって、何でも試してみるというのは、効率が悪過ぎるということなのですが、私たちには、どうも、"秘薬"を求めてしまう性向があるようです。

特に、困っていることがあると、その傾向が強くなりますね。例えば、秦の始皇帝が不老長寿の秘薬を求めたように。もしかしたら、"奇跡"を期待する心情は、人間の遺伝子にプログラムされているのかもしれません。

ところが、現代の抗加齢医学の発展は、私たちが健康に長生きするための"秘薬"などは存在しないことを、明らかにしてくれています。

健康長寿の秘訣は、バランスよく、かつ、食べすぎないこと、適度に身体を動かすこと、そして、心豊かに人生を楽しむことと、既に、科学的に、証明され、わかっています。

つまりは、特定の成分を摂取することで、健康に長生きできるほど、人間の身体は、単純にはできていないということのようです。

さて、私たちの最大の関心事である、"妊娠の可能性を最大にする"ことについても、同様のことが言えるわけです。

食べれば、妊娠できるような"奇跡の食品"などありませんし、飲めば、妊娠できるような、"魔法のサプリ、健康食品"なども存在しないのです。

妊娠のメカニズムを考えれば、誰にでもわかることです。

女性でいいますと、卵巣と子宮だけが、また、男性では、精巣だけが、独立して働いているわけではないということですね。それぞれの生殖器官へのスムースな血液循環があってこそ、それぞれの機能を維持するのに不可欠な栄養素やホルモンが供給され、不要な老廃物を運び出してくれるわけで、そうして初めて、卵子がピチピチに成熟し、精子が元気に育まれるのです。

もはや、釈迦に説法ですね。

妊娠できる力を備えた生殖細胞が育まれるのも、その後、胚が、着床し、正常に分割成長を繰り返すのも、外から摂り入れるべき物質という観点から言えば、人間が、身体を健全に維持するために必要とされる、おおよそすべての成分が関わっているわけです。

どこかに過不足があったり、不必要な有害な物質が過剰になると、身体のどこかにきしみが生じて、生殖活動を阻むことになってしまうのです。決して、特定の成分だけが、鍵になるということはあり得ないわけです。

★妊娠の可能性を最大にするために補充すべき栄養成分に優先順位があります

生殖器官が健全に機能するために必要とする成分の優先順位は、すなわち、人間が生きていくうえで、"絶対に"必要とする成分の優先順位と完璧に合致しています。

大切なもの、すなわち、それがないと生きていけない時間が短い順です。

空気 → 水 → 3大栄養素 → 2大栄養素 → その他の栄養成分

3大栄養素は、もちろん、たんぱく質、糖質、脂質で、2大栄養素は、ビタミンミネラルです。

ここで、忘れてはならないのは、すべて、一つ前の成分が存在しないと、その成分は、満足に、働くことができないということです。

つまり、エネルギーの材料になる3大栄養素をたくさん摂っても、酸素や水が不十分であれば、エネルギーを効率的に産生できなくて、いくら、2大栄養素であるビタミンやミネラルをたくさん摂ったとしても、3大栄養素のバランスが悪ければ、仕事にならないんですね。

すべての栄養成分も、体内で、ひとりぼっちで孤独に仕事をしているわけではなく、他の栄養成分と連携、協力することで、はじめて、力を発揮できるのです。

もちろん、一人で、目に見えるような働きをする成分もありますが、それは、お薬の範疇にあるもので、時に、1人で、暴走したりするの(副作用)で、やっかいな存在ですから、きとんと管理する必要があります。

妊娠の可能性を最大にする、すなわち、生殖器官が、本来の役割をまっとうするためには、きれいな空気や水、そして、バランスのよい食事を通じて、まずは、3大栄養素、そして、2大栄養素を過不足なく取り入れること、そして、補充すべき栄養素という観点で言えば、まずは、基本的な栄養素である「ビタミンとミネラル」を選択すべきです。

その上で、それぞれの状況に応じて、必要であれば、プラスするというのが、正しいやり方です。

基本となる3大栄養素やビタミンミネラルをおろそかにして、それ以外のサプリメントや健康食品を摂取しても、順番が逆で、摂取する意味がさほどないのもこのためです。

いくら魅力的なキャッチコピーや体験談で宣伝していても、です。

また、いわゆる、エビデンスという観点からは、妊娠の可能性を最大にするということで、
きちんとした検証をされているのは、マルチビタミンミネラルだけです(※1)。

★サプリメントはバランスのよい食生活の延長にあるべきものです

ここまで読んでいただいた賢明な読者の方々は、既にお気づきですね?ちゃんと食べていれば、サプリメントは不要なのです。

反対に、たばこ("空気"の範疇ですね)を吸ったり、添加物まみれの加工食品を、普通に食する日常生活をおくりながら、サプリメントを摂取するというやり方は、まさに、愚の骨頂です。

サプリメントは、あくまで、「主」ではなく、「主」を「補充」するものです。まずは、"バランスのよい食事"ありき、です。

問題は、現代の食のあり方です。

そもそも、第一次産業(農業、漁業)が主たる産業であった時代に比べて、食品に含まれる栄養素の量が減っていることは、日本食品標準成分表を見比べれば、一目瞭然です。スーパーにいけば、もはや、"旬"という言葉が、死語になってしまったかのようです。

利益や効率を優先する食品産業に、食材の調達から調理の大部分をゆだねざるを得ない、現代の食文化を考えると、バランスのとれた食生活を心がけていても、過不足なく微量栄養素を摂取できるとは言い難い状況であることも、衆目の一致するところです。

厚生労働省が、妊娠前の女性に、葉酸をサプリメントで摂取することを推奨する意味を、私たちは、深く考えなければならないのでしょう。

もちろん、無農薬や有機に徹底してこだわり、自分で、こだわって、調理するというやり方もあります。

そして、その解決策の1つとして、サプリメントで、妊娠の成立の重要な役割を担う栄養素を補充する、というやり方もあるということです。

★サプリメントの優劣は分かりづらい

ここまでのテーマは、「妊娠の可能性を最大にするために補充すべき栄養成分に優先順位」でした。
妊娠の可能性を最大にするために、そして、それと同時に、健全な妊娠と出産のために、摂取すべき栄養成分には"順番"があるというお話しでした。

不妊という問題を克服する際には、"時間"と"お金"の使い方がカギになります。なぜなら、「どちらも有限なもの」だからです。ですから、失敗しないためには、優先順位を明確にすることが大切ですね。治療においても、仕事においても、また、生活面でも、そして、サプリメント(補充する栄養成分)においても、です。

さて、正しい優先順位を確認したところで、今度は、"個々の製品の品質"についてです。

サプリメントについて、"どんなものを摂ればいいのか"の次によくある質問は、"どれを選べばいいのか"です。つまりは、"製品の優劣が分かりにくい"、ということだと思います。

そこで、分かりやすくするために、サプリメントの品質というものを分解しながら考えてみます。

その前に、妊娠の可能性を最大にするためにサプリメントを選ぶ際に、なぜ、品質にこだわる必要があるのかについて確認しておきたいと思います。

★なぜ、品質にこだわるのか、2つの理由

まずは、妊娠の可能性があるからです。妊娠前の女性の栄養状態は、妊娠する力を左右するだけでなく、お子さんの心身の状態にも大きな影響を及ぼします。そのため、妊娠前は、サプリメントによる栄養補給の必然性が高い時期であると同時に、絶対の安全性が求められる時期でもあるということです。

サリドマイド事件の例を出すまでもなく、「妊娠できさえすればいいということではない」、そして、「サプリメントであればどんなものでもいいというわけではない」、そういうことだと思います。

もう1つの理由、それは、サプリメントは、その外見とは裏腹に、法的には、リンゴやほうれん草などと同じ、食品の範疇だということ。

お薬は、法律によって、規格や作り方まで、厳格な規制があって、いい加減なことをすると、厳しく罰せられます。ところが、サプリメントには、そんな規制などなく、いい加減なことをしても、ペナルティーも、全く緩いものです。

行政の考え方としては、お薬は、専門家がしっかり取り締まりますから、それを信じてください、でも、野菜や果物、サプリメントは、買う人が、自分の責任で、選んでください、つまりは、そういうことです。

以上が、品質にこだわる2つの理由です。

サプリメントに限らず、妊娠前は身体に取り入れるものについては慎重を期すべきです。新生児の出生時の平均体重が、年々、減っていること、また、アトピー性皮膚炎のようなアレルギーが増えていることを考えても、このことについては、いくら強調しても、強調し過ぎるということはないと思います。

★そもそも、品質とは、具体的には何のことなのか

品質の高さについては、盛んにアピールされていますが、それは、どこが、どう違うのかについては、
それほど、具体的に、語られることがありません。

製品の優劣が分かりづらいゆえんでしょう。

そこで、サプリメントの品質を左右する項目を整理してみます。

1)何からつくられているのか

何からつくられているのか、すなわち、"原料"のことです。

2)栄養成分はどんな構成になっているのか

配合内容とそれぞれの量やバランス、すなわち、"規格(レシピ)"のことです。

3)栄養成分以外に何がどれくらい入っているのか

摂ろうとしていないのに、一緒に摂ってしまわざるを得ないもの(強制的に摂らされるもの)、すなわち、"添加物"のことです。

4)どんなふうにつくられているのか

誰が、どんなところで、どのようにつくられているのか、すなわち、"製造基準"です。

おおよそ、この4つの項目で、品質が決まります。

★妊娠の可能性のある時期に選ぶべき品質

さて、どんな品質を求めるのかを考える際には、目的を明らかにしないことには、空理空論になってしまいます。

一概には、言えないわけです。例えば、車を例にとると、近所に買い物にいくためには、フェラーリという車に備わっている品質は過剰というか、不要なわけで、それは、違うでしょう、ということになりますね。

サプリメントも同様です。

私たちにとっての目的は明らかです。

それは、妊娠の可能性を最大にするために、そして、それと同時に、健全な妊娠と出産のためです。
その目的にそって、あるべき品質を、項目ごとにまとめてみます。

1)原料は食べ物に近い形態であること

人間の身体が利用し、活用しやすく、そして、長期間、体内に取り入れて問題ないかどうかという観点からです。

同じビタミンでも、石油などの分子構造を変化させて製造された合成品よりも、野菜や果物、穀物、酵母など、食べ物、あるいは、それに近い形態のほうが、身体との親和性が高いため、よりスムースに活用され、なによりも、安全で、安心です。

妊娠を望み、妊娠の可能性のある時期には、食べ物の形態に近い原料を使った製品がふさわしいと言えます。

また、化学合成品の場合は、その製造過程で、不要な化学物質の混入リスクが拭えません。

2)目的にそった規格(レシピ)であること

マルチビタミンミネラルという基本の栄養成分が、優先順位から言うと、まずは、選択すべき成分なのですが、さて、同じマルチビタミン製品でも、ラベルの配合成分と配合量をチェックしてみると、全く別物と言えるくらいの違いがあります。

私たちが求めるべきは、妊娠の成立や維持に不可欠で重要な働きをする栄養成分が、その働きにみあった根拠のある量とバランスで配合されている製品です。

例えば、すべてのビタミン、ミネラルが、妊娠の成立や維持に深くかかわっていますが、葉酸をはじめとするビタミンB群やビタミンE複合体、また、鉄やカルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレンなどのミネラル、そして、それらと協働する役割をになう栄養成分は特に重要です。

3)添加物は少なければ、少ないほどよい

サプリメントは添加物なしでつくることはできません。そして、食品添加物は、不要なものではありますが、一応は、その安全性は検証されています。

ところが、安全かどうかの判断は時とともに変わります。つまり、安全かどうかは、案外、あやふやなところがあるわけです。

例えば、EU(ヨーロッパ)で禁止されているものが、アメリカや日本では許可されていたり、また、数年前まで許可されたいたものが、現在では、禁止されていたり、時と場所が変われば、安全かどうかの境界が変わるのです。また、組み合わせや摂取量によっても安全性はゆらぐものです。

ですから、添加物については、さわらぬ神にたたりなし、です。サプリメントをつくるために、内容物の流動性を高めたり、固めたりするのに、どうしても添加物が必要です。ただし、製造上、手間をかけたり、工夫することで、その量を減らすことは可能です。そして、増量したり、色や味、香り、風味をつけたり、長期の保存を可能にするための添加物はなくても製造できます。

つまり、見た目や味(飲みやすさ)をどう考えるかです。気休めや楽しみ?で飲むサプリメントならいざしらず、妊娠のためのサプリメントには、まったく、不要と考えます。

4)日本国内の信頼のおける製造基準でつくられていること

中国などの海外で製造することでコストを低くすることは、もはや、製造業では常識でしょう。サプリメントもコストのことだけを考えれば同じなのですが、アパレルや機械などと違い、デリケートな問題が存在します。

たとえば、安全性の担保されていない原料が使用されたり、不要な物質が混入したり、また、法律が異なることから、日本では禁止されている成分や滅菌方法で製造されるといったことが、"日常的に起こりえる"というリスクのことです。

国内の医薬品製造基準でつくられているものがベストです。

実際に、これだけの条件を備えたサプリメントは、相当、限られてきます。

★製造者にこだわりがあるかどうか

それぞれの項目で整理してみましたが、現実的には、製造メーカーが、品質を判断するのに必要な全情報を開示しているかどうかという問題が、立ちはだかります。

実際のところ、悲観的にならざるを得ないのですが、利用目的を考えると、開示していない情報については、直接、メーカーに確認するくらいは、当たり前に必要と思います。

ただ、開示する義務がなかったりする項目があったり、、驚くことに、メーカーでさえ、自社製品の原料の出処については、委託工場に"おまかせ"で、つかんでいなかったり、また、中身は海外で製造しているにもかかわらず、国内でボトル詰めだけをして日本製と表記する製品もあったりして、
なかなか手ごわいというのが現実です。

現状では、サプリメントの品質は、製造メーカーの自主基準です。

ですから、最後の項目として、利用者のこだわりと同様にこだわりが、製造者や販売者にあるかどうかが大切な目安になります。

つまり、妊娠前という、とても大切で、とりかえしのつかない時期の利用ということを想定し、製品の開発や製造に携わっているかどうか、ということです。

[文献]

「Use of multivitamins, intake of B vitamine and risk of ovulatoryinfertility」
Fertility and Sterlity Vol89,3,668
http://www.fertstert.org/article/S0015-0282(07)00828-X/abstract