タイミング妊娠法についてのよくある誤解

2007年09月21日

自然妊娠の可能性がある限り、女性の身体が妊娠しやすい時期に夫婦生活をもつことは、妊娠の確率を高めるための最も有効な方法です。
不妊治療は、たいていは、医師から夫婦生活のタイミングを教えてもらうことからスタートしますが、たとえ、ステップアップしてからも、排卵がないとか、両側の卵管が閉塞している、また、男性の精液中に精子が全くいないというような、悲しいかな、自然妊娠がほとんど期待できないケースは別として、タイミング妊娠法は有効な方法であることに違いはありません。

実際のところ、人工授精や体外受精の合間に、自然に授かることはよくあることです。

ところが、読者の皆さんからのご相談や質問に接していますと、このタイミング妊娠法に関して、意外にも誤解されていることが少なくありません。そこで、タイミング妊娠法についてのよくある誤解をまとめてみました

排卵日を特定することは意外に難しいもの

ご相談で最も多いのは、毎朝、ベッドで基礎体温をはかり、薬局で排卵検査薬も買って、排卵日を特定しようと頑張っているけれども、本当にあっているのかどうか分からないというものです。そんな心配をされていらっしゃる方は、あまり排卵日を特定することに神経質になることもないと思います。

なぜなら、セルフで排卵日を特定するのは、案外、難しいことが少なくないからです。

基礎体温にしても、検査薬にしても、はたまた、粘液をチェックするにしても、その精度には限界があります。人間の身体は機械ではありませんし、個人差も大きいものです。

たとえば、基礎体温を正確にグラフにしてみても、後から、この日が排卵日だったんだと分かるかもしれませんが、予め、排卵日を教えてくれるわけではありません。

また、基礎体温表のどこが排卵日なのかも、実は、個人差が大きいものです。たとえば、グラフが、がくんと下がったところ、要するに基礎体温が最も低い日が排卵日だと言われたりしていますが、以前、日本産科婦人科学会誌に報告された調査によりますと、体温最低日が排卵日の女性は全体の22%にしか過ぎず、体温最低日の前日が排卵日であるという女性が5%、順番に、体温最低日の翌日の低温相の最終日が40%、その翌日の高温相初日が24%もいるとされています。

もっと言うと、基礎体温に割とバラツキがあって、どこまでが低温相で、どこからが高温相なのか、今ひとつ、よく分からないという方も少なくありません。

そもそも、排卵日をセルフで特定することは難しいものなのです。

正確に特定するための方法は、病院で卵胞の大きさをこまめにチェックしてもらったり、血液中のホルモンの数値を調べるしかありません。

それでも、逃してしまうこともあるくらいです。ですから、自分で排卵日を特定することにこだわりすぎると、ストレスをためることになってしまいかねません。

排卵したときに、精子がそこに待機しているのが理想

排卵日をセルフで特定することが難しいということは、セルフのタイミング妊娠法はあきらめるしかないのでしょうか?

いえいえ、そんなことは、全くありません。

タイミング妊娠法は、妊娠の確率を高めることが目的であって、決して、排卵日を特定することが目的ではありません。そこで、気になるのは、排卵日ドンピシャ!にセックスをすることが絶対なのかどうか、ですね。そのためには、妊娠に至るプロセスをみてみる必要があります。

妊娠するためには、排卵された卵子が新鮮なうちに、セックスによって射出された精子が元気なうちに出会うことがポイントです。そもそも、タイミング妊娠法の"タイミング"は、セックスのタイミングであると思ってしまいがちなのですが、新鮮な卵子と元気な精子が出会うタイミングンのことなのです。

卵子が新鮮なのは、排卵後6時間、精子が元気なには、射精後48時間とされていますので、卵子の方が時間がないのです。ということは、卵子の約8倍も持ち時間のある精子が、卵子が排卵される前に卵管膨大部に辿り着いて、卵子が排卵されて、卵管采に取り込まれてくるのを待機するという出会い方が、最も確実で、現実的なわけです。

ということは、逆算して考えてみると、排卵の前にセックスして、精子を送り込むほうがよいわけで、排卵日当日のセックスでは、もしかしたら、タイミングを逃してしまいかねないのです。

排卵前のセックスが妊娠率が高く、排卵日当日のセックスは妊娠率が下がる

女性の月経サイクルのどの日に夫婦生活を持てば妊娠しやすいのかは、これまで多くの研究がなされています。だいたいは、排卵日の5日前から妊娠率が上がって、排卵日前日がピークになり、排卵日当日は逆に妊娠率が低下するという傾向が一般的なようです。

排卵日当日のセックスでは前日よりも妊娠率が低下してしまうのは、"タイミング"の問題というよりも、むしろ、子宮頸管粘液が減ってしまって、射精された精子がスムーズに、子宮に移動できなくなってしまうからかもしれません。

なぜなら、頸管粘液の量を増やすエストロゲンは、卵胞が大きくなるに従って分泌され、排卵後は分泌量が低下してしまうからです。

周期にかかわらず、週に2~3回の夫婦生活をもつことで、結果として、タイミングがあって、妊娠の可能性を大きくすることになる

現実的には、排卵日を、セルフで、正確に、特定することは困難なようですし、さらに、排卵日ドンピシャにセックスをすることは、決して妊娠を可能性を最大にするわけでないことが分かりました。、

ということは、排卵日を特定することは、私たちが思っているほどには、意味がないといえなくもありません。要するに、狙い打ちをするという感覚は捨てた方がよいのかもしれません。

排卵日を狙うあまりに、実は、妊娠の確率が低いタイミングで頑張っていたという、笑うに笑えないことになってしまいかねないからです。

実際に少なくありません。それよりも、周期に関係なく、週に2~3回の夫婦生活をもつことが、結果として、タイミングがあうということになるように思います。

セックスの回数を増やしても妊娠率は低下しない

ところで、セックスの回数を増やすと、精子が薄くなって、妊娠する力が低下しまうということをよく聞きます。ところが、何日か禁欲した後の方が、妊娠率が高くなるという証拠はどこにもありません。

やはり、セックスの回数と妊娠の可能性は正比例すると理解するべきです。

まあ、一部の人には、贅沢な悩みといえなくもありませんが。

お互いの気分が盛り上がった時が最高のタイミング

結局のところ、生殖を考えると、人間とは、そもそも、どのようなコンセプトのもので造られたのか、そのほんの一端にしか過ぎませんが、触れるように思えてなりません。

もしも、何らかの意味があるのであれば、やはり、自然に返ることが、遠回りなようにみえて、実は最も近道なのかもしれません。

それは"思考"よりも、"情動"を大切にすることです。