男性のカフェインやアルコール摂取と精液所見やART治療成績との関係

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2017年02月24日

Andrology

体外受精や顕微授精に臨むカップルの男性パートナーのカフェインやアルコールの摂取量は、精液所見とは関連しないけれども、治療成績とは関連することが、アメリカのハーバード大学とその関連病院のマサチューセッツ総合病院の共同チームによる研究(EARTH Study)結果が発表されました。

ART治療に臨むカップルの男性パートナー171名に治療開始前に、過去1年間の食習慣について質問票に回答してもらい、1日あたりのカフェインやアルコールの摂取量を調べ、摂取量で4つのグループに分け、被験者の338回の精液検査結果とその後のカップルの205周期の治療成績との関連を調べました。

その結果、カフェインやアルコールの摂取量と精液所見は関連しませんでした。

ところが、男性パートナーのカフェインやアルコール摂取量は治療成績と関連し、男性がカフェインを多く摂っているカップルほど着床率や妊娠率、出産率が有意に低く、男性パートナーのカフェイン摂取量が最も多かったグループ(≧272mg/day)のカップルと最も少なかったグループ(<99mg/day)のカップルの調整後の出産率は、それぞれ、19%、55%でした。

その反対に、男性パートナーがアルコールを多く摂っているカップルほど着床率や妊娠率、出産率が有意に高く、男性パートナーのアルコール摂取量が最も多かったグループ(≧22g/day)のカップルと最も少なかったグループ(<3g/day)のカップルの調整後の出産率は、それぞれ、61%、28%だったとのこと。

これらの結果から、ART治療開始前の男性パートナーのカフェインやアルコールの摂取量が治療成績になんらかの影響を及ぼしている可能性があるということ、また、精子の数や運動率は、必ずしも、男性の妊娠させる力を正確に反映していない可能性があることを示しています。

コメント

これまで、男性のカフェインやアルコール摂取量と精液所見との関係については、多くの研究が行われています。が、それらの結果は関連するというものもあれば、関連しないというものもあり、一貫性がありません。

そこで、EARTH Studyでは、男性のカフェインやアルコールの摂取量と精液所見の関連だけでなく、その先の治療成績の関連まで調べようということになったとのこと。

今回の結果から男性もカフェインは摂りすぎないように気をつける必要がありそうで、1日にコーヒー2杯程度にしておくのが無難かもしれません。

コーヒー3杯以上(カフェイン300mg以上)飲むと精子DNA損傷率上昇のリスクが高くなる、また、男性パートナーのカフェイン摂取量と流産のリスクが相関したという報告もあります。

不妊原因の半分は男性側にあると言われていますが、男性の検査は、現在のところ、精液検査のみです。

ところが、たとえ、精液検査の結果に問題がなくても、パートナーの治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があるとなれば、不妊原因が女性だけにあるからと言って、また、精液検査に問題がなかったからと言って、男性は関係ないとは、全く、言えなくなってしまいます。

ART治療に臨むカップルの治療前からの食生活やライフスタイルが治療成績になんらかの影響を及ぼすというデータが、徐々に、蓄積されています。

まさに、不妊治療は「ふたりで取り組む」べきものだということになります。