体外受精の治療周期と累積出産率

不妊改善・生殖医療関連

2015年12月26日

JAMA(Journal of the American Medical Association)

体外受精の初回の治療周期あたりの出産率は29.5%で、その後、次第に低下するものの、4回目の治療周期まで20%台を維持し、6回の治療周期の累積出産率は65.3%で、9回まで上昇し続けることがイギリスの研究で明らかになりました。

ブリストル大学の研究チームは、2003年から2010年までイギリスで体外受精や顕微授精を受けた156,947名の女性の257,398治療周期の累計出産率を調べました。

ドロップアウト(出産に至らずに治療を中止)については、ドロップアウトした女性については、その後、治療を継続した女性と同じ累積出産率であると仮定する方法で算出した(最適評価)累積出産率とドロップアウトした女性はその後の出産に至らなかったと仮定する方法(控え目評価)で算出したそれとの間にあると考え、より実際的な評価として、ドロップアウト女性の30%が予後(治療見通し)が悪いため中止したと考え、控え目評価し、70%は精神的、肉体的、経済的な負担、夫婦関係等の理由で中止したと考え、最適評価するという予後因子調整評価を行いました。

その結果、治療開始時の年齢の中央値は35歳で、全ての治療周期の不妊期間の中央値は4年で、初回の治療周期の出産率は29.5%、その後低下しますが4回目まで20%台を維持しており、6回の累積出産率は65.3%、それ以降、9回まで上昇しました。


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年齢層別にみると、自己の胚を使った40歳未満の女性(黄色線)では初回の治療周期の出産率は32.2%、4回目まで20%を維持、6回の累積出産率は68.4%、それ以降、9回まで上昇しました。40〜42歳の女性(青線)では初回の治療周期の出産率は12.3%、6回の累積出産率は31.5%でした。42歳以上の女性では全ての治療周期あたりの出産率は4%未満でした。また、提供胚を用いた場合(緑線)は出産率の年齢層による違いは見られませんでした(グラフはFigure.2をそのまま転載しました。縦軸が累積出産率、横軸が治療周期です)。

また、不妊原因別では男性不妊の男性パートナーへの治療がなされていない女性は他の原因に比べて最も出産率が低かったものの、顕微授精、もしくは、精子提供によって、その差は解消されました。

さらに、初回の治療周期での採卵数別の初回から3回目の治療周期あたりの出産率(40歳未満女性)をみると、たとえ、初回の治療の採卵数がゼロでも、2回目と3回目の治療周期あたりの出産率は20%を超えていること、また、初回の採卵数が多いほど初回から3回目までの治療周期あたりの出産率が高くなりますが、15個を超えるとフラットになることがわかりました。

コメント

体外受精や顕微授精などの高度な不妊治療の治療成績をみる場合、それがどのような治療成績なのか知っておくことが大切です。たとえば、成功率といっても、妊娠率なのか、出産率なのか、また、何パーセントといってもなにを分母としているのか、また、患者の年齢や不妊原因などによっても、数字が大きく違ってくるからです。

今回の研究はある期間のイギリスで実施されたすべての高度生殖医療の治療周期を対象としていること、また、治療成績を治療周期あたりの出産率と累積出産率を調べたことで、とても参考になる結果となっています。

要するに、何回、治療(採卵)すれば、赤ちゃんを授かることができるのか?という最も知りたい治療成績を出してくれているということです。

もちろん、日本とは体外受精や顕微授精などの高度治療に移行する条件や治療方針や方法なども違うので全く同じように受け止められないところもあるかもしれませんが、大きな傾向をつかむことができるので、高度治療に臨むカップルにとっては治療方法や回数を考えるうえで参考になると思います。

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